耐えることもときには必要 「これがやりたい」という気持ちを大切に

佐野 淳哉 さの じゅんや さん

 1982年、静岡県生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、ブリヂストンサイクリングチームなどに所属し、国内外で活躍。  2014年より栃木の那須ブラーゼンに所属、「第83回全日本自転車選手権大会 ロードレース(男子エリート)」において初優勝を飾った。

 プロサイクルロードレーサーとして国内外で活動している佐野淳哉さん。2014年6月には「全日本自転車選手権大会」で見事優勝を果たしました。今日までを振り返っていただき、決して「平坦ではなかった」道のりはもちろん、自転車競技の魅力などについて熱く語っていただきました。

100キロの距離を自転車で帰ってきた兄、その時の新鮮な驚きが自転車との出会い

 高校時代に自転車で通学していましたが、いわゆる“ママチャリ” でした。部活動も文化系のオーケストラ部に所属。自転車で走るおもしろさに気づいたのは、大学生だった兄が、静岡の実家まで100キロほどの道のりをマウンテンバイクで帰ってきた時でした。エンジンもなく、自分の力で動かす自転車、中でもマウンテンバイクやロードバイクといったスポーツ車の魅力を感じた瞬間です。
 やがて私も大学に進学し、そこで自転車同好会に所属しました。3~4年生の時にはレースで2回優勝。自転車にのめり込む生活が始まりました。

プロサイクルロードレースチームに所属し自転車漬けの毎日を送る

 大学卒業後も自転車競技を続けたいという思いは強く、ブリヂストンのサイクリングチームに籍を置かせてもらいました。フランスやイタリア、ベルギーなど、ロードレースの盛んなヨーロッパの国々の海外レースを中心に活動してきました。
 2014年からは栃木県の地域密着型プロサイクルロードレースチーム「那須ブラーゼン」に声をかけていただき、国内レースを中心に出場するようになりました。
 レース期間以外の毎日の練習では、コーチがプランニングする平地や山などのコースメニューに従って走ります。短くて30~50キロ、長ければ180キロほどの道のりを一日に走ります。また、冬などのオフシーズンには、チームメイトとの合宿などでの練習も行います。通常、レースは数人で構成するチームで連携を行うのですが、お互いに風よけとなって体力を温存したり、水や食べ物を取ってきてもらったりといったことが欠かせません。他のメンバーとうまく連携が取れるよう、日頃から円滑なコミュニケーションを心がけておくのも大事ですね。

風やスピードの体感が楽しい/支えてくれる家族に感謝したい

 自転車に乗っていて楽しいのは、純粋に風やスピードを感じる瞬間ですね。もちろん、勝負に勝つことができた時の嬉しさは格別です。
 反対に辛いのは、思い通りにいかず結果が出なかったり、ケガをして思うように体が動かせない場合などです。
 続けていれば辛く苦しいこともたくさん経験しますが、家族をはじめ、応援してくださる方々がいますので、そのことがとても心の支えになっています。

念願の自転車選手権大会で初優勝!! あらゆる条件への適応力が分かつ勝敗の行方

 今回、「第83回全日本自転車選手権大会ロードレース(男子エリート)」で優勝を収めることができました。
当日は雨天で道が悪く大変でしたが、ロードレースはあらゆる天候で行われるため、悪条件にもいつでも対応できることも必要な資質です。
 レースでは決まったコースを何周か走ることになるのですが、最終の周回では疲労から足がつったりといったアクシデントにも見舞われつつ、なんとか気合で走り抜きました。優勝できたことが自信となり、これから先もより高みを目指して頑張っていこうと思います。

自分の経験や受け取ってきたものを還元したい/若い時代の苦しみの克服が財産になる

 今後やりたいのは、自分が経験してきたことや自転車の楽しさを、周りのみなさんに伝えていくということ。いままで受け取ってきたものを、還元していくことが目標です。
 スポーツを続けていきたいと思っている高校生のみなさんにも、苦しくても続けることの大切さを伝えたいですね。地道な努力を重ね続けても、結果が思うように出ないといったことは必ずあると思います。
 けれども、若い頃に何かに真剣に打ち込んだ経験は、その先何をやるにしても必ず自分の財産になります。
「これがやりたい!」という気持ちを大切にして、頑張ってください。

INFORMATION

『那須ブラーゼン』
チーム名にあるBLASENとは、ドイツ語で“風が強く吹く”という意味。観光地における地域密着型プロサイクルロードレースチームとして、那須地域の活性化・健康増進・観光振興などを目指して活動中。
http://www.nasublasen.com/

(掲載日:2015-05-25)

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