井田 和行

若い人はもっと自己アピールしようよ!

アニメ・ゲーム制作会社経営井田 和行さん
・大阪府生まれ ・高校卒業 ・専門学校除籍 ・アニメーション制作会社に就職 ・アニメーション・ゲーム制作会社を経営
年齢
39歳
勤務時間
1日約12時間
賃金
1000万円以上

仕事内容について

 テレビ、劇場、ビデオ、ゲームなどのアニメーションを企画段階から制作しています。あわせてPC、家庭用ゲーム機のゲームの制作も行っています。またそれ以外に、アニメ・ゲーム制作に新規参入をしようとする他業種の会社などに頼まれて、会社間の繋ぎをしたり、制作ノウハウやスタッフ編成についてアドバイスをしたりする仕事もしています。

仕事に就いたきっかけ

 子供の頃にはまった趣味の延長線ですかね。アニメや特撮が好きだったこともあり、それに関連した仕事をしたいと、雑誌に載っているアニメ制作会社などの住所宛に見学の申し込みをしていたところ、とあるアニメ制作会社から「見学は受けつけていないが、面接なら受けつけている」と言われ、すぐに上京して面接を受け、制作進行としてその会社に入社しました。その後、アニメ・ゲーム業界内で働きながら、アニメ・ゲーム制作のノウハウを身につけたり、人脈を拡げたりしていき、紆余曲折の末、アニメ・ゲーム制作会社を興すことになりました。

良いところ、大変なところ

 良いところは趣味を仕事にできたこと、悪いところは趣味を仕事として割り切らなければならないことですね。また、締め切り当日に「今日は雨が降っていて気が乗らないから仕事をしない」なんて平然と言う気まぐれなクリエイターにうまく働いてもらうのにはなかなか骨が折れます。けれど、私はそういった良いこと悪いこと一切合財含めて楽しむようにしています。そうすれば楽しく仕事をすることができるようになりますよ。

印象に残っている出来事

 最初に入社したアニメ制作会社での話なのですが、入社してから半年間は名前を呼ばれることがありませんでした。私と同時に入社した制作進行の人間は7人いたのですが、机も与えられず、スタジオの隅で待機をし、先輩社員から「誰か1人来い」と言われたら出かけて行き、与えられた仕事を片付けるという感じでしたね。勿論、何故その仕事をする必要があるのか、といった理由を聞くことなどはできません。聞いても怒られるだけですから。仕事の方も厳しいものだったので、2ヶ月もすると、私と同時に入社した人間は全員いなくなっていました。もっとも、これはアニメ業界に応募者が多かった20年前の話で、今はそんなことはありませんよ。最近は制作進行への応募者が激減してしまっているため、大事にされているようです。

仕事でのこぼれ話

 仕事柄、中国のアニメ制作会社と共同で作業をすることも多いのですが、向こうの政府の規制の厳しさ、と言いますか、外国からの技術導入に対する拒否反応の強さには驚かされますね。以前、日本の大手アニメーション制作会社と提携していた中国のアニメ制作会社が、日本からの技術協力の甲斐もあり、徐々に技術力を身につけて、業界内での評判も良くなり、良い感じで発展してきていました。そんな折、その会社の技術力に目をつけた中国政府が国営放送用のアニメ制作を依頼してきたのです。多額の補助金が出るという非常に良い話だったのですが、問題となる条件がひとつついていました。それは海外の会社との提携を打ち切ること。その会社も、日本からの技術協力なしではまともな作品を作る事が出来ないのは分かっていましたが、ついその話を受けてしまいました。結果、技術力を失ったその会社は業績を悪化させて倒産してしまったそうです。
 付き合いのあるアニメ制作会社での話です。求人募集に送られてきた履歴書に証明写真が二枚貼ってあったので何かと思ったら、写真の横に「交差法(立体写真の見方の一種)で見てください」と書いてあったそうです。「うわ、立体に見える!」と社内でも話題になり、即採用となったそうですよ。その会社は常に新しいものを作ろうとしているということで有名な会社だったので、非常に効果的だったようです。相手を良く研究して対応策を考えた良い例ですね。

今後の夢・目標

 とりあえず会社を大きくしていきたいですね。仮に自分がいなくなったとしても代わりに経営を担当できる人間が複数いるような、安定した会社を作っていきたいです。

仕事人から読者へ

 業界としては不安定な業界ですが、想像もつかない10年後が楽しいと思う方にはお勧めできる業界です。
 アドバイスですが、まずは便利な道具に頼りすぎないことですね。例えばパソコンが壊れただけでもう仕事ができない、などという人がいますが、考えればいくらでも次善の策はあるはずです。そういったことを忘れずに臨機応変に動くことを心がけてください。
また、絵の仕事でこの業界に入ろうと考えている人は、作品を送付するときに必ず手描きの作品を添えるようにしてください。加工、複製が容易なデジタルデータだけですと、評価のしようがない場合もあります。特に自分の絵の実力に自信を持っている人の場合、手描きの作品には応募者の持つ絵の実力がはっきり出るため、作品選考の際に有利になりますよ。私が依頼を受けて、あるゲームメーカーの面接を担当したときには、デジタルデータしか送ってこなかった応募者はその段階で全員落としたものです。
 それと、1対1のコミュニケーションを前提とした携帯電話が普及したせいもあるのかもしれませんが、1対1の状況ではアピールができるのに、1対多数の状態になるとアピールできない人が増えたように思います。社会に出たら1対1の状況よりも1対多数の状況の方が多いのですから、そういった場でも積極的にアピールができるようにしなくては損です。1日に100の仕事を黙々とこなす人よりも、1日に70の仕事しかしていなくても「今日70こなしましたので、残りの30は明日片付けます」と上司に報告して「俺は70の仕事をしたぞ!」とアピールする人の方が上司からの評価は高くなるものです。プロジェクトにトラブルが発生したような場合でも、トラブルが起きそうだと察知した段階で、周囲に「トラブルが起きそうだ。対応策を考えておかないと!」とアピールしておくこと。一番いけないのはトラブルが起きたときに自分ひとりで抱え込んで処理をしようとすることです。処世術のひとつとして、積極的に周囲にアピールしていくことを覚えておいてください。
 あとこれは人の上に立ちたいという人向けのアドバイスですが、自分の下に社員がいて、その家族がいて、それらの人達全員に対して責任を持たなくてはならないのが社長という職業です。そのためにはこの厳しい世の中で、どんなことをしてでも会社と自分を生き延びさせなくてはならないのです。どんな業界でもこれは同じです。人の上に立ちたいと考える人は汚いことでも嫌がらずにする覚悟を決めてください。

掲載日:2006-10-01

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