医療不足に悩む人たちを支えたいと決心。ずっと憧れていた看護師への夢を形に
子どもの頃から、看護師の優しいイメージに憧れがあり、自分は将来この仕事に就くものだ、と漠然と考えていました。中学の頃にアメリカに行ったことがきっかけで、いつかは海外で英語を使った仕事がしたいと思い始めました。高校生になって、南アフリカを訪れる研修プログラムに参加する機会があったのですが、地雷を踏んで足を失くしてしまった子や、松葉杖をつきながらサッカーをしている子などを目の当たりにし、紛争が続く地区の看護師として、人々を援助したいと思うようになりました。
看護の専門学校を卒業して、5年間日本の病院で働いた後、英語の勉強と大学院進学のため、オーストラリアに留学しました。帰国後は、派遣の契約社員として病院を転々としていた私に、友人が国境なき医師団(MSF)のことを紹介してくれたんです。看護師の経験は10年ほどになりますが、MSFの看護師としての活動は3年目に入りました。
MSFの仕事は毎日がチャレンジ。現地の方のこれからの医療をサポート
現在は日本の病院に勤務しながら、要請を受けたら病院と調整の上、MSFに参加します。9ヵ月や1年といった長期間のケースも多いので、日本での仕事を辞める方もいますが、私は「手術室看護師」として参加するため、6週間などの比較的短いミッションが多く、日本の仕事を続けながらでも参加できています。MSFの役割は、最終的に現地の方が自分たちでやっていけるように教育することが多いので、自然と現地スタッフとコミュニケーションをとることが多くなります。手術室看護師は、滅菌の仕方や手術機器の使い方、掃除、手術後の血液の扱い方などを教えて、トレーニングしたり、サポートしたりするのも重要な仕事です。
MSFの活動では、日本では考えられない病気や状況があり、想像できないことが毎日起こります。それに対して私たちが、日本や医療技術の高い諸外国で行っている標準的な治療などをはめ込むことはできません。その国の文化や状況に応じて、できる限り良い治療法や看護の在り方を考えながら働かなくてはならないため、毎日がチャレンジであり、挑戦です。
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日本と世界の看護の違いを実感。責任の重さに大きなやりがいを感じる
初めて参加した南スーダンの派遣では、帝王切開による出産介助などに就きました。日本では比較的安全なお産とされていますが、ここでは、開腹したら赤ちゃんが亡くなっていたこともあります。覚悟はしていても実際に接するとショックが大きく、いまでも記憶に鮮明に残っています。
直近では、新しい治療や手術を導入しようとしているアルメニアに行きました。普段のサージカルミッション(外科手術)では、医師と麻酔科医でチームを組むのですが、今回は私一人。必要な備品のオーダーから手術後の片付けまで、全て任せてもらったので、責任が重い分とてもやりがいのある楽しい仕事でした。
看護は日常生活の延長で、生活に密着したものです。医療のシステムや看護の視点は、文化によって大事にしている部分が異なってきます。MSFにはさまざまな国の人が集まるので、そのような違いを聞けることが面白いですね。私は仕事をする上で、何でもまずはやってみて、駄目なら次のことを考えよう!というスタンスです。それは日本の病院勤務においても、海外のMSFの活動でも同じです。
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興味を持ったら、まずは飛び込んでみて。選択肢を限定せず自分の道を探してほしい
看護師といっても、内科や外科、救急などいろいろな分野があり、働き方もさまざま。看護師になってから起業したり、日本の最先端医療を伝えるためにメディカルツーリズムの分野で働く方もいたりと、初めは病院勤務で経験を積んで、そこから広がっていく道もあると思います。みなさんが思い描く日常接する病院の看護師も、MSFの看護師も、一番大事になってくるのは気持ちの部分です。MSFの仕事は常に挑戦で、さまざまなケースを考えながら動かなくてはなりません。いつでも、その時々の良いものを探しながら取り組むことは、難しいことですが自分の成長にもなります。
現時点でMSFという道が選択肢になくても、いろいろな経験をしていく中で、活動に参加してみようと思うこともあるかもしれません。いまはニュースで紛争や難民の問題などを目にする機会も多いと思います。そういうものから興味を持ち、参加してみたいと思ったら、あきらめずにぜひ挑戦してみてください。
INFORMATION
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国境なき医師団(MSF)
中立・独立・公平な立場で医療・人道援助活動を行う民間・非営利の国際団体。世界各地にある28事務局のうち、「国境なき医師団日本」では、87名のスタッフが世界のさまざまな医療を必要とする現場に派遣され、援助活動を行った(2014年実績)。
掲載日:2016-09-09