国家資格以外の医療ビジネススタッフ

医療ビジネス・医療事務・医療秘書

医療ビジネス系の職種は、

①事務系
②秘書系
③情報系

の3つに大別されます。

現代医療が複雑化・高度化するのに伴って誕生した仕事であり、増大する事務系作業から医師や看護師を解放し、診療・看護に専念できるように補佐します。

また、医師と患者をつなぐ潤滑油的な役割と共に病院の運営が健全になされるよう重要な役目も果たしています。

各職業の解説

医療秘書
基礎的な医学の知識を持ち、病院長、医師などの医療専門職を補佐し、スケジュール管理などの一般企業でいう秘書的な仕事から医事、医療補助業務など幅広い仕事をこなします。

現在、医療系事務職には一般の認定試験として、「医療秘書技能検定試験」(1級・準1級・2級・3級)があります。

この試験は、医療秘書として基礎的な知識と技能を有しているかを問うものです。

そのほかに病院勤務を目指す「医療事務検定試験」や「医療事務管理士技能認定試験」など、多彩な民間検定試験があります。


医療情報技師
近年、病院情報システムの導入が進んでいるにもかかわらず、多くの医療情報システム(電子カルテなど)とそのデータベースの運用管理が適切でない、医療機関内でそれに対応する専門組織や情報管理体制が未整備であるなど、さまざまな理由で医療改革が進んでいないという問題があります。

こうした状況の中で、医療情報技師のニーズがますます高まっています。

医療情報技師とは、日々の診療業務に関わる保健医療福祉情報システムの企画・開発および運用管理・保守を仕事とし、保健医療福祉の現場を知り、そこで活躍することができる情報処理技術者のこと。

情報処理技術だけでなく、医療情報システムに関する知識と、保健医療福祉のあらゆる分野の業務と関連知識を修得する必要があります。

医療情報技師能力検定試験で、医学・医療系、情報処理技術系、医療情報システム系の3科目すべてに合格することで、医療情報技師として認定を受けることができます。


医療ソーシャルワーカー
主に病院や保健所などの医療施設で活躍するエキスパートです。

社会福祉分野における「ソーシャルワーカー」に相当する「医療ソーシャルワーカー」という意味でMSW(Medical Social Worker)と呼称されています。

医療と福祉制度の橋渡し役として、患者とその家族の相談に応じます。

例えば、医療費の支払いや、退院後に必要な介護の受け方などの相談があった場合は、患者の心身状態を把握しながら問題点を整理して、必要に応じて利用できる公的な福祉制度を紹介したり、アドバイスを行ったりします。

この仕事に就くために必須の国家資格などはありませんが、一般的に福祉系の学校で必要な知識を修得している人が多く、実態としては、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士などの有資格者が活躍しています。


診療情報管理士
患者一人ひとりの病歴や治療の情報が記入されているカルテなどの医療データを一定の方法で整理し、医師や看護師の要求に応じて迅速に情報を提供できるようにする仕事。

診療内容を把握するための医学知識が必要です。

似通ったものとして、新たな医療事務職として注目されている「病歴記録管理士」という仕事もあります。

診療情報管理士になるには、「診療情報管理士認定試験」に合格する必要があります。

受験資格は、一般社団法人日本病院会が設ける診療情報管理士通信教育を修了するか、同法人が認定する大学および専門学校(3年以上)で指定単位を修得し、卒業することで得られます。

現在、医療機関の機能分化と連携、情報の開示、安全の確保、医療費の包括化、医療IT化推進など、新しい医療提供体制の改革が進行しています。

医療の質を向上させるために、精度の高い医療データの管理は、これからますます重要であり、診療情報管理士の活躍の場は広がっていくと考えられます。


病院管理スタッフ
組織として病院をスムーズに運営するための管理をする仕事で、実務能力と共に病院各所の仕事内容を把握することが求められます。

医療知識のほか、事務管理能力も必要とされ、総合的な視点から病院の質的管理を行い、具体的には「人事」「経理」「薬品」「文書」「給食」「施設・設備」「安全」といった各管理などを担当します。


診療報酬請求事務スタッフ
医療機関を利用した際にかかる健康保険の費用を、国や健康保険組合に請求するための事務処理を行う仕事。

具体的には、診療内容による保険点数を計算して、レセプト(診療報酬明細書)を作成します。

この仕事をするために必須の資格はありませんが、「診療報酬請求事務能力認定試験」の資格を持っていると良いでしょう。

・活躍フィールド
事務関係の就職先としては、病院・医院関係が多く、秘書や病院・医院運営などのアシスタントスタッフとして採用されます。

ほかに薬品メーカーなどの医療産業界での秘書、データ管理のスタッフとして活躍しています。


病棟・外来クラーク
病棟における事務処理を担当します。

仕事の幅は広く、医師や看護師の申し送りの伝達や報告、外来患者の簡単な問診、入退院の事務手続、カルテ管理などをはじめ、医療スタッフと患者の架け橋的な存在としてさまざまな事務処理や雑務に携わります。

そのため求められる知識も幅広く、看護・医療分野はもちろん、医療事務および医療心理なども必要です。

病棟クラークの中でも、小児病棟や産科病棟を専門とした仕事を、「小児クラーク」と呼びます。

仕事に就くために必要な資格はありませんが、「医療秘書情報実務能力検定試験」や「診療報酬請求事務能力認定試験」、「医事コンピュータ技能検定試験」などに合格していると実践で役に立ちます。


調剤(薬局)事務管理士
病院の処方せんをもとに薬剤師が処方した薬を渡す病院外の薬局を「調剤薬局」といいます。

この調剤薬局で受付や会計、個人情報や薬歴等のコンピュータ入力、処方せんの管理、薬剤師のアシスタント業務を行うのが調剤事務管理士です。

政府が医薬分業を推進する中、調剤薬局は年々増加し、調剤事務の需要も高まっています。

この仕事に就くのに特に資格は必要ありませんが、レセプト(調剤報酬明細書)を作成する業務は、保険、薬剤などの専門知識が必要なため、「調剤事務管理士技能認定試験」による認定を受けると良いでしょう。

・活躍フィールド
病院の薬剤部、調剤薬局、ドラッグストア 等


医薬情報担当者(MR)
多くは医薬品メーカーに籍を置き、自社の医薬品に関する適正使用を含めた情報を、医師・歯科医師・薬剤師・看護師などの医療関係者に伝達するのが仕事です。

具体的には、

①情報の提供
②情報の収集
③情報の伝達
④クレーム処理
⑤治験

などに大別されます。

これらの社会的使命だけでなく、企業の営業パーソンとしての役割も担っており、バランスのとれた活動が求められます。

もちろん、最終的には自社医薬品が効果的に使用されて患者の治療に役立たせるのが目的であり、その意味では、扱う商品が人の生命の行方を左右しかねないものであるだけに、偏りのない正しい情報をしっかりと伝えるという厳しい倫理観が要求される側面も持っています。


登録販売者
「登録販売者」とは、ドラッグストアや薬店・薬局などにおいて医薬品や健康食品、漢方薬等の販売に必要とされる資格です。

ただし、「薬剤師」とは異なり、安全性において特に注意が必要とされる第一類医薬品を取り扱うことはできません。

登録販売者の資格取得については、これまで高校卒業後1年間の実務経験を経るなどした上で、都道府県知事の行う認定試験に合格することが必要とされていました。

しかし、平成27年度実施の試験から、学歴要件および実務経験などの「受験資格要件」が不要となり、誰でも試験が受けられるようになりました。

・活躍フィールド
薬局・薬店、ドラッグストア 等


歯科助手
歯科医師の診療行為をさまざまな形で手助けする仕事で、歯科医師の「アシスタント」と言えば分かりやすいでしょう。

そのため、専門職的な側面とサービス業的な側面の双方を併せ持っています。

主に治療以外の部分を担当し、具体的には、歯科医院での受付業務、患者の案内、カルテの管理、医療機器の点検・整備を行う歯科周辺業務など、内容が多岐にわたるのが特色の一つです。

歯科衛生士の業務と重なる部分もありますが、歯科助手は歯科衛生士に認められている口腔ケアなど、患者の身体にふれる業務に携わることはできません。

“治療”を行うわけではないため、特別な資格の取得や検定試験等の合格は必要ではありませんが、特化した民間資格や検定があるため、養成機関で確かな知識を身につけて取得・合格をしておくと良いでしょう。

・活躍フィールド
歯科医院、総合病院の歯科 等

(資料:ライセンスアカデミー『医療系学校入試データ 2018』/平成29年11月30日発行)

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