工学的見地から農地や農業の機械化などについて研究する
●何を学ぶ?
農業生産に関する基盤となる農地、作業、機械化、環境改善などについての工学技術を研究する。
主に、農地の造成・整備やかんがい施設などについて研究する「農業土木学」と、農業機械や加工のための機械・施設などについて研究する「農業機械学」に分かれる。
農業工学は、理工学的なアプローチで、農と食、そして環境までを扱いながら研究を進めていく、先端的な学問と言える。
●主な学部・学科
農学部の農業環境工学科、環境管理学科、環境システム学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
「農業土木学」では、水利学、土壌物理学、地域開発学、農村計画学など、農業施設の活用を軸とした科目を学ぶ。
一方、「農業機械学」では、農産機械学、ロボット工学などの科目を履修。農業機械の分解・組み立てや農業用ロボットの製作といった実習も行う。実際にトラクターに乗って、農作業の実習を行う大学もある。
●目指せる職種・活躍フィールド例
農業、機械メーカー、建設会社 など
農業生産・バイオテクノロジーなどを学ぶ
●何を学ぶ?
農業生産に関する原理や技術、生物資源の利用や保全を総合的に研究する学問。具体的には、農作物や花・果樹・野菜などの品質向上や生産向上、品種改良、緑化や土壌・肥料などに関する研究などを行う。
近年は、バイオテクノロジーの研究に力を入れている大学が多い。そうした先端の農学技術は、自然環境や生命のコントロールにも及ぶため、生命や環境問題とも深い関わりがある。
●主な学部・学科
主に農学部で学ぶことができる。農学科、応用生物科学科、生物生産科学科、生物資源学科といった学科を有している大学が多い。
●学びの内容・特色
応用生物科学科などでは、生命現象や生物機能をさまざまなレベルで解明し、その新しい利用法を考えていく。
生命・食料・環境問題を解決することを目的として、食品に潜在している機能を活用した研究などを行う。
さまざまな生物の仕組みを分析する実験のほか、農場での実習を行ったりもする。
●目指せる職種・活躍フィールド例
農業、農薬・肥料メーカー、食品会社、バイオ技術者、農業試験場、研究・開発職 など
化学の視点から農業を考える
●何を学ぶ?
化学や生物学などの観点から農学について考えていく。動物・植物・微生物の生命現象、生物が生産する物質、食品と健康などについて、化学的な考え方に基づいて基礎から応用まで広く研究する。
具体的には、土壌や肥料の研究、微生物の応用、食品の栄養学的な解明などを行う。
●主な学部・学科
理学・医学・薬学・工学などとも関連するが、農学部で学ぶことが主となる。応用生物科学科、応用生命科学科、生命機能科学科などの学科で学ぶことができる。
●学びの内容・特色
実験や実習の割合が多く、各学科、各研究室では、それぞれ特色のある実験をしている。中でも、先端バイオ技術を活用した、食品科学や応用生物学に注目が集まっている。
なお、農芸化学の応用例としては、トウモロコシからのプラスチック作成、環境に優しい除草剤、花粉症の症状緩和対策米、ピロリ菌を抑える乳酸菌を含むヨーグルト、香料・化粧品への活用などがある。
●目指せる職種・活躍フィールド例
農業、農薬・肥料メーカー、食品会社、バイオ技術者、農業試験場、研究・開発職 など
農業を経済的な視点から分析
●何を学ぶ?
日本のみならずグローバルな視点から、現代の農業に関する問題・現象について、経済学を用いて研究する。
農作物の生産・流通・加工、輸出入、農業経営などの観点から分析していく。農業関連のほかの分野に比べると、社会科学的な要素が強い。
●主な学部・学科
農学部の農業経済学科、食料環境システム学科、食料環境政策学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
農業経済学は、農学原論、生物資源概論など、農学に関する基礎的な科目に加えて、社会科学的な学びも必要となる。経済学的な視点から農業を分析するということで、農業経営学、農業市場論、農業金融論、農村社会学などといった科目を学ぶ。
農業を経済学の観点からアプローチすると言っても、机上で済む学問ではない。農業に関する知識や技術を修得するための実習も行っていく。
学科によっては国際的な農業開発などに貢献する知識・技術を身に付ける。また、食料生産において重要な要素である環境について学ぶケースも多い。
●目指せる職種・活躍フィールド例
食品メーカー、商社、流通、国家公務員、地方公務員 など
森林の機能や役割、木材利用について学ぶ
●何を学ぶ?
森林の機能や役割の分析、資源としての利用や保護など、森林に関わるあらゆることについて研究していく。地球環境の保全とも深く関わっている学問である。
具体的には、森林や動植物の生態系、森林が地球環境に果している役割、治山治水、木材の生産技術、森林破壊の問題や森林造成、資源の利用と共生などに関する研究を行う。
●主な学部・学科
農学部の森林科学科、環境森林科学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
「森林科学」は学びの幅が広く、森林をキーワードに、さまざまな研究対象やアプローチがある。
例えば、山や森に生息する生物の研究を行う「森林生態学」、木を使った新しい材料の開発などを研究する「木材化学工学」、自然環境の持続利用などを研究する「環境保護学」などがある。
また、森林に関する政策や林業の経営などを考えていくためには、政治学や経済学などの視点から学ぶことが大切になってくる。さらに、実際の森林や林業の体験をするフィールドワークを行ったりもする。
●目指せる職種・活躍フィールド例
木材関連会社、国家公務員、地方公務員、研究・開発職 など
動物の病気を治療し、健康を守るための知識・技能を修得
●何を学ぶ?
ペット(コンパニオンアニマル・伴侶動物)や家畜など動物の診察・治療をする獣医師になるために必要な勉強をする。小型から大型まで、各種動物の体の仕組みや病気の治療法などについて学んでいく。
獣医師の国家試験を受験するためには、まず大学で獣医学を学ぶことが必須となる。
●主な学部・学科
獣医学部や農学部の獣医学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
修業年限は、医学部などと同様、6年となる。獣医師免許を取得するには、卒業後、獣医師国家試験に合格する必要がある。
学ぶ分野は大きく分けて3つ。動物の生態構造や病気の原因などを学ぶ「基礎獣医学」、病気の診断・治療・予防などを学ぶ「臨床獣医学」、家畜の伝染病発生の要因や予防法などを学ぶ「応用獣医学」がある。
病気の原因を確かめるために実際に動物を解剖したり、病気の診断や治療法を身につけたりするため、実験・実習が重視される。
●目指せる職種・活躍フィールド例
獣医師(動物病院勤務・開業、動物園勤務など)、研究・開発職、農林畜産・公衆衛生関係の公務員、公営競馬場や公営動物園・水族館等の自治体職員、農業共済団体等の職員、製薬・食品関係の民間企業 など
獣医師をサポートする動物看護の知識を学ぶ
●何を学ぶ?
動物看護に関する知識・技術を学ぶ。獣医療は人間の医療と同様に高度化しており、獣医師と動物看護師の密接な連携が必要不可欠。
飼い主に対する症状説明や術後の回復に向けたアドバイス、栄養指導、さらに老齢動物や障害動物へのリハビリテーションなども場合によっては担当するため、動物生理学はもちろん、病理学や動物行動学・栄養学・福祉関連など幅広く学んでいく。
●主な学部・学科
動物看護学部の動物看護学科、獣医学部・生命環境学部などに設置された動物看護系の学科やコースで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
まずは動物の保定方法や消毒・薬物投与、検査方法、また受付業務など、動物病院での診療業務の補佐に関する基本的な知識を学ぶ。
動物看護に関する学科やコースを設置する大学はまだ少ないが、学べるところでは特色あるカリキュラムが編成されている。動物臨床に焦点を当てて学び、高度動物医療への対応ができる人材を養成するコース、動物と人間の共生に関して学び、動物介在福祉などの領域で活躍できる人材を養成するコースなどもある。
いくつもの民間ライセンスが並存するなど、公的な資格がないものの、統一的な基準を持つ資格を認定する試験として「動物看護師統一認定試験」がある。
●目指せる職種・活躍フィールド例
動物看護師(動物病院勤務)、ペット保険会社、ペット用品メーカー など
家畜の飼育・繁殖から加工技術までを学ぶ
●何を学ぶ?
牛・豚・鶏などの家畜の飼育や繁殖、畜産食品などの加工技術を学ぶ。繁殖・成長・体内機能や生態の研究から、衛生管理、食肉・皮革・医薬品などへの開発・利用、畜産経営のあり方まで幅広く学ぶ。
近年は、遺伝子操作の技術を駆使した研究、動物飼育、野生動物の保護・管理、動物と共生するために動物の心を理解する心理学研究なども行われている。
●主な学部・学科
畜産学部、農学部の畜産学科、畜産科学科、獣医学部の動物資源科学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
動物生理学、動物遺伝学、動物繁殖学、動物飼育学、動物栄養学、動物衛生学といった生態・飼育・管理に関連する分野を主に学ぶ。また、動物資源利用学など、食品などへの加工に関する知識についても学ぶ。
畜産は、経済活動と密接に関わっていることもあり、畜産経営学といったアプローチからも研究が行われている。そして学びの性格上、動物を使っての実習・実験も数多く行われる。さらに、実際に加工食品の製造をする食品実習などを行うコースもある。
●目指せる職種・活躍フィールド例
農業試験場、食品会社、医薬品メーカー、酪農 など
水産資源に関する知識を修得
●何を学ぶ?
地球の約70%を占める海。その中にある水産生物や海洋環境について、さまざまな角度から学び、水産生物の生態・養殖や食品・資源利用などに関する知識を修得し、水産資源の捕獲・養殖・加工や環境保全に関する研究を行う。
●主な学部・学科
水産学部や農学部の水産学科や生物生産学科、海洋系の学部・学科などで学ぶことができる。
●学びの内容・特色
環境と水産資源について研究する水産環境学、水産資源とその漁獲方法について研究する漁業・水産資源学、水産資源とその増殖について研究する水産増殖学、水産資源の加工について研究する水産化学などを学んでいく。
また、実習や演習も多く行われる。講義で学んだ内容を実験を通して確認したり、漁業施設や漁場の見学を行ったりする。さらには実習船を所有している大学の場合には、乗船して生物の生態調査を行ったり、海底の地形を探査したりする実習を行うこともある。
ほかにも、海洋生物の細胞や組織構造・遺伝子の研究、海を保全するための生態系の研究、海流や海水温などに関わる研究など、多様な領域を網羅する学問がある。
●目指せる職種・活躍フィールド例
食品メーカー、水産試験場、研究・開発職 など
(資料:ライセンスアカデミー『学べることから見つける大学探しBOOK 2019』/平成30年6月15日発行)