大学・短期大学が実施する「総合型選抜(旧・AO入試)」の入学試験では、従来の入試をベースに、新たに「学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)」が総合的・多面的に評価されます。これまでの入試データを確認しながら、新たな選抜方法の概要を見ていきましょう。
「学力の3 要素」のうち、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を評価する方法として、文部科学省は、以下のいずれか一つを活用することを各校に求めています。
それに加えて、志願者自らの意思によって応募するという「総合型選抜」の性格から、
を積極的に活用した選考を行うことも推奨されています。
また、各校の出願資格では、一定の評定平均値、英語の外部試験結果を条件とする場合もあるなど、従来のAO入試に比べて学力に対する条件や評価が明確になるのも特色の一つです。
「学力の3要素」を測る選考方法で多いのは?
ライセンスアカデミーが実施した「令和3年4月入学者対象 総合型選抜に関するアンケート」の結果によると、令和2年2月時点で、248校が令和3年4月入学者対象の「総合型選抜」について回答しています。それら回答校における「学力の3要素」を測るための選考方法を見ると、最も多いのは「面接・面談」で81.7%でした。
なお、令和2年4月入学者対象の入試で「AO入試」、または「総合型選抜」の趣旨を先取りした選考を行ったと回答した646校の結果では、多い順に「面接・面談」93.8%、「小論文・作文」45.1%、「プレゼンテーション」30.0%となっていました。
「総合型選抜」の選考方法は、以前にも増して多様になると考えられます。近年は、AO入試においても学力の把握は推奨されてきましたが、「総合型選抜」においては「学力の3要素」の把握が必須となるため、下記に示した選考パターンのほか、「論文・面接タイプ」「プレゼンテーションタイプ」「面接・プレゼンテーションタイプ」など、学校・学部・学科ごとに必要な資質・能力を問うために、多様かつ複数のパターンを組み合わせた選考の実施が予想されます。
令和2年4月入学者対象の入試において、すでに「総合型選抜」を実施している大学もありますが、多くは3年4月入学者対象からの実施となるため、募集要項をできるだけ早めに入手することはもちろん、常にウェブサイトなどで情報を確認するようにしましょう。
国・公立大学、難関私立大学に多く、論文により基礎学力と自己表現力をチェックするタイプ。第1次審査終了後、模擬講義を実施し、レポート提出やグループディスカッションを行うケースもある。
自己推薦入試や特別(ユニーク)推薦入試のカタチを変えたタイプ。実績や資格取得、面接を重視して総合的に評価をする。高校推薦は不要で、他校との併願が認められるケースも少なくない。
受験生と大学の相互理解に重点を置くタイプ。双方がアドミッションポリシーと将来の目標について面談(面接)で確認できる。受験生は自己アピールしやすく、大学はアドバイスにより受験生を導く機会が得られる。
「AO入試」実施校数は横ばい。今後の動向を要チェック
「AO入試」を実施する大学の数は毎年増加傾向にありましたが、平成22年頃から落ち着き、現在は横ばい傾向で推移しています。平成30年度は、569大学(私立482・国立57・公立30)・1,597学部、また短期大学においても、267短期大学(私立262・公立5)・484学科で実施されました。
私立大学では全体の82.5%、国立大学でも69.5%の大学がAO入試を導入しており、短期大学においても84.8%がAO入試を導入しています。
令和3年4月入学者対象の大学・短期大学入試においては「総合型選抜」と名称・内容を変えての実施となるため、近年の状況が継続していくのか、あるいは新たな展開になるのかが注目されています。
総合型選抜(旧 AO入試)を実施するかどうか、志望校の動きをチェック!年度によって実施しない場合もあるため、注意しよう。
「AO 入試」と「推薦入試」については、「推薦入試」に学校長の推薦が必要という点が異なるものの、以前から選抜方法が類似しているなど、違いが分かりにくい部分がありました。
令和3年4月入学者対象の入試からは、それぞれ「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」へ名称・内容が変更になりますが、大きな変化は見られない雰囲気です。いずれの入試においても「学力の3要素」の評価が求められるようになり、例えば、小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の実績、そして大学入学共通テストの活用など、何らかの方法の導入が必須となるなど、実際の選考も同じように変わっていきそうな気配です。
「学校推薦型選抜」では学校長の推薦書が必要です。そこには高校時代の学習歴や活動歴を踏まえた「学力の3要素」に関する内容が記載され、それが評価対象となります。その意味では、高校時代の実績が 合否に色濃く反映されそうです。
一方、「総合型選抜」においては、推薦書の必要はありませんが、志願者本人が記載する「活動報告書」「志望理由書」「学修計画書」等を提出することになります。それらの書類では、例えば「総合的な学習の時間」で取り組んだ内容、部活動、ボランティアなど、在校中の学習や経験がどのように志望する大学・学部等と結びつくのかなどに関する記載が求められます。
いずれの入試も、面接や調査書だけという選抜方式ではなくなります。入試への十分な備えと共に、充実した高校生活を送ることが大切になりそうです。
評価されるのは「未来の可能性」か「過去の実績」か。自分に合った入試を選ぼう!
総合型選抜の募集人員は拡大か。エントリー時期にも注意!
近年の大きな流れとしては、AO 入試の志願者や合格者は微増しています。平成30年度AO入試合格者は63,489名で、前年比約4,600名の増加となりました。
令和3年4月入学対象者から行われる「総合型選抜」は、募集人数に規定はありません。同選抜は、時間を要するという難点はありますが、多様な人材や可能性を秘めた人材を評価する手段になり得るため、各校は魅力を感じているとの指摘もあります。
そのため、前年とは異なる募集状況となることも考えられるので、注意が必要です。
なお、総合型選抜の出願開始は9月、合格発表は11月以降ですが、出願前のエントリー時期に関する規定はないため、学校ごとにその時期は異なると思われます。4月以降の情報を注視していきましょう。
出願のタイミングをしっかりと見極めよう!前年とは異なる募集状況となることも?!注意が必要。