「コンパクト・シティにおける学校配置と学校の『地域拠点性』」筆者・葉養正明

我が国におけるコンパクト・シティの成功事例のひとつは富山市とされる。
では、同市のコンパクト・シティ構想で学校配置はどう考えられているのか。
まず、富山市の「コンパクトなまちづくり」の基本方針を見ると、
施設配置の考え方は次のように説明される。
「本市では、鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、
その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集積させることにより、
公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを進めており、
本計画においてもこれに即した考え方が必要です。」
つまり、諸施設等の配置イメージは、「地域の拠点を『団子』に、
一定以上のサービス水準の公共交通を団子の『串』に見立て、
『串』で結ばれた『団子』に都市の諸機能を集中させる(ことになります)。
・・・公共建築物の再編に当たっては、団子の地域への誘導を念頭に置き、
地域が必要とする施設のあり方を地域住民と一緒に考えながら、
再構築する必要があります」というものである。

1973年に刊行されたダンティック,G.B.とサアティ,T.L.による
『コンパクト・シティ』の第1部提案を見ると、
コンパクト・シティ導入の利点は以下のような点にある、とされる(一部抜粋)。
1,過大都市に関連したさまざまな不便さをなくする。
2,近代的で便利な大都市を、
 自然環境のそばに安い費用で建設することを可能にする。
3,費用の節約になる。(前章で行われた)予備的分析によれば、
 中程度の生活水準の家庭の住居費プラス交通費は、
 コンパクト・シティにおいては現在の都市に比べて25%ほど安くなる。
4,時間の節約となる。
5,土地の使用が節約される。最大の大きさのコンパクト・シティは、
 20平方キロメートルほどの土地に建設されるが、
 これと同規模の在来型都市は、400平方キロメートルの土地を必要とするであろう。
6,1970年から2000年の間に合衆国で増加すると予測される
 7000万~1億人の人口を、都市スプロールによる
 田園地帯、環境、生態系に対する破壊的な効果なしに収容することを可能にする。
7,経済的に恵まれない階層に機会を与えることができる。
 基本的に、コンパクト・シティは新しく、古い習慣に縛られていないので、
 新しい出発の機会を与えることができる。
 距離が短いので、教育・保健施設はすべての人にとってより近づきやすくなる。
8,特定の都市活動の統合や集中化が可能となる。
 都市のスプロールは、病院、学校、その他の多くの施設に重複をもたらしている。
 現在では時間や距離のために経済的に実現できない多くの特殊なサービスが、
 コンパクト・シティでは利用可能となることを後に論ずる。

8項目目を見ると、コンパクト・シティは、
公共施設の重複などを排した「コンパクト」なまち創造にねらいがある。
学校施設についても小規模校の統廃合や他の公共施設との複合によって
学校システムの効率的な運用を生み出すことを想定している。
富山市の公共施設等マネジメント戦略も同様で、
学校施設については学校小規模化による施設過剰に対応するために
学校統廃合計画が打ち出される。
では、人口減少下のコンパクト・シティ導入には、「施設の過剰」、
効率化論以外の観点導入の余地はないのか。

根本祐二氏(東洋大学)はこの問題に真正面から取り組む論考を公にしている。
そこで次号では、氏の論稿を参照しながら、
人口減少社会におけるコンパクト・シティの利点や
可能性を生かした学校の配置、学校の「地域拠点性」を満足させる
学校システムの築き方について考えることにしよう。

【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
東京学芸大、国立教育政策研究所、文教大学等を経由し、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
この間、各地の教育委員会の学校づくり等に携わるほか、
教職員対象の各種研修会講師も務める。
詳細は、次のプロフィール参照。
https://bunkyo.repo.nii.ac.jp/records/7687