アメリカの大学と政府について、トランプ政権の大学への攻撃の説明の前に、
大学入試に関するアファーマティブ・アクションの歴史的な背景説明が、
思わず長くなってしまった。
これまでの説明で、これらの問題は、トランプ大統領個人の問題ではなく、
アメリカでは大学と政府の対立と緊張関係が絶えず継続していること、
そして司法が重要な役割を果たすことも理解されたことと思う。
しかし、この点に関しても、第2次トランプ政権では重大な変化が生じている。
それは、最高裁判事は大統領が任命することと終身であるという問題である。
トランプ大統領が任命した3名の判事はいずれも共和党よりの保守派で、
最高裁判事9名のうち、6名が共和党よりとなっている。こうした背景のもと、
2023年のアファーマティブ・アクションの違憲判決が出されたのである。
判決は、ハーバード大学とノースカロライナ大学の入学者選抜において、
アジア系アメリカ人志願者が他の人種グループより高い成績でありながら
合格率が低いことには、憲法修正第14条の法のもとでの平等および
公民権法第6条に違反する意図的な差別が行われていると認めたのである。
この結果、1978年のバッキ判決以来
45年間にわたって続いたアファーマティブ・アクションは事実上終焉を迎え、
カリフォルニア州の提案209号の「人種中立的選抜」が
全米の大学の規範となったといえよう。
ともあれ、トランプ大統領の大学への攻撃と司法判断は継続中であり、
今後どのような展開をするか予断は許さない。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。
