「コンパクト・シティにおける学校配置と学校の『地域拠点性』(5)──富山市の学校配置計画を通して」筆者・葉養正明

前回(2026年8月5日掲載)は、学校規模の標準を維持しようとする方策として
一律に学校統廃合を推進することの問題点に触れている。
その際特に焦点があてられているのは、町村内の学校数が
1小学校、1中学校などになった場合の義務教育拠点の持続の問題であった。
コンパクト・シティ構想は、少子化・人口減少下のまちづくり方策として
国土交通省や総務省などによって打ち出されるが、
ではその際公共施設等の合理化、再編成の一環として位置づけられる学校配置政策は
どのようなフレームワークで処理されることになるか。
今回は、コンパクト・シティ構想の成功例として取り上げられる富山市を事例に、
コンパクト・シティ構想のもとでの学校配置政策の描かれ方について
考察を加えることにする。

富山市教育委員会は、少子化・人口減少時代の学校再編の指針として、
「富山市立小・中学校の適正規模・適正配置に関する基本方針」を作成している
(令和2年11月25日)。
コンパクト・シティ構想に包含される学校施設等の再編については、
この「基本方針」に準拠することが「富山市公共施設等総合管理計画」
(平成28年12月策定、令和3年12月一部改訂)には示される。
では富山市教育委員会の「学校再編の基本方針」で
学校再編のあり方はどう考えられているか。3つの視点が打ち出されている。

第一の視点は「学校規模」の適正化であり、
市民アンケートなどを拠り所に「望ましい学校規模」を次のように設定している。
 ・小学校:12~18学級(各学年2~3学級)
 ・中学校:9~18学級(各学年3~6学級)
教育委員会がもっとも重視するのは、市内の学校を
「望ましい学校規模」内に収めようとする方策である。早期に検討すべき学校は、
(1)複式学級が存在する学校、(2)全学年が単学級である学校、としている。
第二の視点は、望ましい通学距離・通学時間、の設定である。
富山市のような大規模自治体についてもその内部の人口密度は一様ではない。
とりわけ、市町村合併を経て成立している自治体についてはそうである。
学校再編に際しては、通学距離・時間の適正範囲にどう収めるかが問われる。
子どもの通学条件を適正通学範囲内に収めるためである。
文科省は通学距離・時間の適正範囲を次のように示しているが、
 ・小学校:原則4km以内、おおむね1時間以内
 ・中学校:原則6km以内、おおむね1時間以内
富山市の場合、「おおむね1時間以内」という要件には触れず、
通学距離に視点を当て通学条件の適正範囲を設定している。
第三の視点は、学校統合、通学区域の変更・弾力化、学校の分離新設など、
学校再編を進める際の方策が提示される。この視点は第一と第二を緩和する意図で置かれ、
富山市内の人口動態、地域による人口密度差などを踏まえた
実現可能性のある学校再編を進めるための工夫と見ることができる。
学校再編を以上の視点で進めようとするのは、日本各地に行き渡る考え方と言ってよい。

ところで、現在の富山市は、平成8年に旧富山市が中核市に移行し、かつ、
平成17年4月に、富山市、大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村の
7市町村が合併されるという経緯で成り立っている。
新富山市も少子高齢化の中長期的な進行が続き、
人口減に起因する財政状況の悪化が予測されている。
学校を含め老朽化した公共施設の更新や維持管理をどう進めるかという視点から、
コンパクト・シティ構想が提起される背景となっている。 
富山市の事例を各地の学校再編の参考に供するには、
コンパクト・シティ構想と学校配置計画との関係性のあり方に
汎用性があることが示される必要がある。
そこで、次回は富山市における都市計画と学校配置計画との関連について
探究を進めることにしよう。 

【プロフィール】
教育政策論、教育社会学専攻。
東京学芸大、国立教育政策研究所、文教大学等を経由し、
現在は東京学芸大名誉教授、 国立教育政策研究所名誉所員。
この間、各地の教育委員会の学校づくり等に携わるほか、
教職員対象の各種研修会講師も務める。
詳細は、次のプロフィール参照。
https://bunkyo.repo.nii.ac.jp/records/7687