「オープンキャンパスの昔と今」筆者・法政大学キャリアデザイン学部 教授 児美川孝一郎

オープンキャンパスの学生スタッフとして活動しているゼミ生がいる。
何げなく、その話題になって、少し驚いたことがある。
勤務先の大学では、オープンキャンパスは、
夏季休暇中に2日間しか開催されないという。
(正確に言うと、本学には3キャンパスあるので、
それぞれ2日、2日、1日の開催である。)
なぜ、「2日間しか」と思ったのかというと、筆者の記憶の限りでは、
かつては、オープンキャンパスの開催日数はこの3倍はあったように思うからである。
そして、夏季休暇中だけではなく、6月中の土日や9月の連休などにも実施されていた。

では、開催日を絞っている現在は、来場者も減少しているのかと言うと、
必ずしもそういうわけではないようだ。ただし、来場者の構成は、変化した。
1つは、高校2年生や1年生の参加が、かなり増加している。
2つめに、保護者の同伴も目立つ。
こうした層は、高校の指導もあるのだろうが、早い段階から志望校を決めて、
その後の高校生活や入試に向けてのモチベーションを高めるといった目的で参加してくる。
とはいえ、高校3年生が参加しないわけではない。こちらはこちらで、
学校推薦型や総合型選抜といったいわゆる「年内入試」が主流になりつつある現在、
志望理由書の作成や面接対策に役立つ情報を集めようとしている。
それゆえ、こちらの層は、各学部の教員が行う模擬授業にも、
現役の学生による個別相談にもきわめて熱心である。
要するに、今どきのオープンキャンパスは、志望校を選ぶための「お試し」で来る層と、
志望校を定めたがゆえに入試に役立つ「情報」を得ようとする層とが混在して、
主要な客層になっているのである。

オープンキャンパスというイベント名称が初めて登場したのは、
1988年の立命館大学における進学説明会であるという。
では、その時の名付け親たちは、
現在のようなオープンキャンパスの姿・かたちを想像できただろうか。
その時点からすでに40年弱が経つ。日本の大学も大学教育も大きく変わった。
大学進学率も急上昇し、入試も変貌した。
そもそも高校生(受験生)の気質もずいぶんと変化している。
そうだとすると、オープンキャンパスという革袋は古くからあるのだが、
それは、新しい酒を盛るのにも適しているのだろうか。ふと考えてしまった。

【プロフィール】
教育学研究者。
1996年から法政大学に勤務。
2007年キャリアデザイン学部教授(現職)。
日本キャリアデザイン学会理事。
著書に、『高校教育の新しいかたち』(泉文堂)、
『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、
『夢があふれる社会に希望はあるか』(ベスト新書)等がある。