「小学校で習っている『算数』を『数学』に名称変更する案が出ているそうです」筆者・橋本光央

※編注:本コラムは6月上旬に執筆いただきました。
 6月29日に文部科学省から今回は名称変更を見送り、今後の検討課題とする方針が出されています。

次期学習指導要領を議論している中央教育審議会で、
小学校で習っている「算数」を「数学」に名称変更する案が浮上しているそうです。
小学生から中学生になると、算数から数学に名前が変わることによって
「難しくなる!」と苦手意識を持ってしまう生徒がいるようで、
それを減らすのが目的だそうです。が……。

ところが、「算数ができる生徒は、数学はできない」という話もあるんです。
なぜかというと、算数ではリンゴが何個、ケーキを何等分、速さや長さや面積など
「実生活の中で正しい答を出す」という思考の土台を形成することが目標なのに対して、
数学はリンゴやケーキといった具体性を廃し、
数字では表せないxやyを使ったり、マイナスやルートなど
「日常生活では目にしない抽象的なものを使って、なぜそうなるのか」
という論理的思考力を培うからです。
だから、計算が得意だった児童が中学生になり、
算数と同じような感覚で数学に臨むと、理解できなくなってしまうのです。
鶴亀算や旅人算など小学校で勉強する「算」は
小学生がもっている具体的な知識の中で解答するのに対して、
中学生の学ぶ数学では方程式で解答しますから。
もし、小学生と中学生で異なる内容を学ぶ教科を同じ「数学」という名称にすると、
「同じ内容だから、同じように勉強すればいい」
と思ってしまう生徒が増えるのではないでしょうか。
すると、逆につまずく生徒が激増するのでは……。

もし算数を名称変更するなら、
算数と数学は全く異なる教科であることを明確にするため、
「算術」とするほうがいいと考えます。だって、方程式が使える中学生になると、
鶴亀算で答を求める必要はなくなるのですから。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園大阪国際中学校高等学校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を提供。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam5/