「【若者の心の理解(3)】SNS時代の『承認欲求』の処方箋」筆者・日本大学生物資源科学部 教授 熊谷圭二郎

SNS時代の若者は、他者の反応を自分の価値と結びつけやすくなっています。
「反応が薄いと、自分には価値がない気がします」
学生と話していると、そんな声を聞くことがあります。

他者の反応が、そのまま自分の価値のように感じられてしまう。
そうした感覚を抱える若者は、いま少なくありません。
SNSでは、評価が数字で見えやすく、他者と比べやすい。
だからこそ、気持ちが揺さぶられやすいのです。
数字で見える評価は、想像以上に心に残ります。

心理学には、「自己価値の随伴性」という考え方があります。
これは、他者からどう評価されるかや、どのような成果を出せたかによって、
自尊感情が揺れ動く状態です。
評価されれば安心できる。けれども、反応が乏しかったり、
思うような結果が出なかったりすると、心まで不安定になる。
SNSは、その揺れを強くしやすい場でもあります。

若者と関わるうえで大切なのは、「できたかどうか」だけで相手を見ないことです。
「今日は来てくれてうれしい」
「その話をしてくれてありがとう」
そうした、存在そのものに向けた言葉が、安心の土台になります。

そしてもう一つ。
小さな「好き」や「得意」を丁寧に拾うことです。
大きな夢でなくてもよいのです。
言葉にされた小さな関心は、その人らしさの手がかりになります。
その積み重ねが、学びやキャリアの芽になることは少なくありません。

評価の数ではなく、自分の内側の感覚。
その感覚に気づく時間を、私たちは支えたいものです。

【プロフィール】
臨床心理士。日本大学生物資源科学部教授。
専門は教育相談、コーチング、教育心理学。元高校教師。
現場での実践経験に基づき、心理学の理論を
教育・組織の現場で活用できる具体的な手法として展開している。
著書に『教室「心理術」大全』(明治図書)など。