大学を受験する際、「志望理由書」の提出が必要なケースがあります。ひと口に志望理由書といっても、その用途や役割をしっかり理解しているという人も少ないでしょう。近年は、大学の入試において、いわゆる学業成績以外の要素が選考の基準に含まれる傾向にあります。そのため、志望理由書は自分の強みをアピールできる、入試の選考において重要な要素の1つといえるでしょう。
今回は、志望理由書の役割や例文、書き方やテクニックについて詳しくご紹介します。
「志望理由書は学校の推薦型選抜や総合型選抜を受ける際に、志望先の学校に提出する書類の1つです。
一般試験では、学力の成績をメインとして合否判定が行われます。一方、推薦試験などでは学力の成績以外に、推薦者の潜在的な資質や学校側が求める学生像に適している人材かなどの内面的な部分まで総合的に見て、合否判定が行われます。大学への志望理由・動機はもちろん、学生の内面的な部分を判断するものとして、志望理由書の提出が求められるのです。そのため、志望理由書は自分をアピールするチャンスになりますので、効果的に使うことができれば入試において有利になるといえるでしょう。
志望理由書の書き方は試験の形式によって適切とされる書き方が異なります。以下では学校推薦型選抜と総合型選抜の形式に分けた上で、志望理由書の書き方のポイントと例文を紹介します。
学校推薦型選抜には出身高校の推薦書が必要とされ、高校時代の学業成績やスポーツ・文化活動などの推薦基準を満たしている生徒を高校の学校長が推薦する入試です。学校推薦型選抜は下記の4種類の仕組みに分けられます。
学校推薦選抜の種類 | |
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種類 | 概要 |
公募制推薦 | 大学から定める出願条件を満たし、校長の推薦があれば出願可能。 希望者が多い場合は校内選考で選抜される。おもに私立大で実施される |
指定校推薦 | 大学が指定した高校の生徒にのみ出願資格があり、1つの高校から推薦できる人数は限られる。希望者が多い場合は校内選考で選抜される。おもに私立大で実施される。 |
特別推薦 | スポーツの実績や文化活動、取得資格などが出願条件となっている入試。さまざまな種類があり、実施校により選抜方法も異なる。 |
自己推薦 | 受験生自らが自分の持つ能力などをアピールする入試。主に受験生の実力や実績が審査対象となり、学校の推薦は不要だが自己推薦書の提出が必要。 |
指定校制推薦の場合は、推薦書類と面接だけの学校が多く、特別に志望理由書を課すところは少ない傾向にあります。公募制推薦の場合は、書類審査と面接、または書類審査、小論文、面接、の学校が多く、書類審査には、志望理由書や先生が書く推薦書も含まれます。学校推薦型選抜では公募制推薦がもっとも一般的ですので、今回は公募制推薦の志望理由書の書き方について詳しくご紹介します。
公募制推薦の志望理由書を書く際に意識すること
例文としては以下のような文章が挙げられます。
例文 1
私はツアーコンダクターになるために、貴学の観光学科で学びたいと考えています。ツアーコンダクターを目指している理由は、人一倍好奇心が強く、身体を動かすことが大好きな私にぴったりの仕事だと思うからです。また、両親が旅行好きで、幼い頃から夏休みや冬休みに日本各地に出かけていたこともあり、いつしか日本だけではなく、海外のさまざまな国に行ってみたい、感動したいと思うようになりました。そして、その感動を大勢の人とわかち合いたいのです。そのために私は、自分で旅を企画して、素晴らしい観光ポイントや宿泊施設を見つけ、参加してくれる多くの人々に旅の喜びを提供できるようなツアーコンダクターになりたいのです。
例文 2
貴学の観光学科を志望したのは、幅広く観光や文化について学べる講義を設けているところに魅力を感じたからです。海外で観光について学べる留学プログラムも充実しています。貴学でなら、きっと私が望むことが学べると確信しています。
例文 3
もし貴学に入学することができたなら、私はできるだけたくさんの講義を受けることはもちろんですが、アルバイトやクラブ活動にも積極的に挑戦して、人とふれあうことを学び、将来ツアーコンダクターとなった時に、それらの経験を生かしたいと思います。
この文章は、①で自分の将来の目標を提示して、そのきっかけや自分の将来の目標を具体的に記載し、②で自分の将来の目標を再現できる学校・学科の魅力を述べて、③で入学後したいことや卒業後のライフスタイルについて記載しています。
将来の目標があって大学に進む場合は、この書き方が一番書きやすいでしょう。今回の例文を見てみると、将来の目標と進学先で学べることにきちんとつながりがあって、進学後の将来像も明確になっている点が評価できます。よくあるNG例として、将来の目標の内容とその後の内容とのつながりが見えないというパターンがあげられます。
「サッカー部での活動中に足を怪我したのですが、その時に看護師に興味を持ちました。人助けをする仕事に魅力を感じ、看護師を目指すことにしました。」
この文章ですと、足を怪我してから看護師にどんな形で支えてもらって、その時に何を感じたのかが記載されていないので、なぜ看護師に興味を持ったのかがわかりません。文章につながりが感じられないと、相手に「この人は結局なんで受験したのだろうか。」という印象を与えてしまうことになります。
そのため、将来の目標をベースに文章を書くなら、以下の3点の要素につながりを持たせて書くことが大切です。
具体的な将来の目標がないまま推薦を受けるとしても、その学校や学部の専門分野にまったく興味がないというケースは少ないはずです。
具体的な将来の目標がない場合は、その専門分野についての社会的な問題と自分の考えを①に書いて、②と③は同じ要領で書くと良いでしょう。
総合型選抜は受験生の将来性や可能性を重視する試験です。
学科試験による選抜ではなく、志望する大学や学部、学科は受験生の意欲に注目するため、志望理由書は受験生の意欲を判断する方法の1つになります。そのため、総合型選抜における志望理由書は、特に合否に関わる重要な役割を担っているといえるでしょう。
総合型選抜の例文としては以下の文章があげられます。
例文 1
貴学を志望した最大の理由は、先輩方の実績が素晴らしく、私が将来働きたいと考えている業界へもキャリアパスがしっかり見通せる環境にあると考えたからです。
例文 2
私は、大学でマーケティングについて深く学んでいきたいと考えており、そのためには貴学以上の大学はないと考えています。特に○○教授のマーケティングの授業は素晴らしいと聞いておりますし、その豊富な経験と知見から学ぶべき点は無限にあると考えています。
例文 3
貴学に入学した際にはより一層勉学に励み、将来的に一流のビジネスマンとなれるよう精一杯頑張ります。
この文章は、①で一番伝えたい志望理由を述べて、②で自分が大学に入るメリットを大学の特色と絡めて述べ、③で志望校側が自分のような人材が欲しいと思わせるようなインパクトのある文章で締めています。推薦型選抜の例文と同じ将来の目標がベースとなった文章ですが、書き方が違うことがわかりますよね。この例文をテンプレートに、受けたい学問の学習意欲の動機を具体的に書いて文章を膨らませることも可能です。
例えば、②の「特に○○教授のマーケティングの授業は素晴らしいと聞いておりますし、その豊富な経験と知見から学ぶべき点は無限にあると考えています。」という内容が欠けているとすると、別の志望校でも良いという印象を与える文章になってしまいます。②の後半の文があることでその大学を志望している、という意思を感じさせられますので、具体性を持たせた文章を書くことを心掛けましょう。
志望理由書の書き方のポイントを理解していれば、その分志望理由書を上手に書くことができます。ここでは、志望理由書の書き方とテクニックについてご紹介します。
志望理由書の内容で意識したい5つのポイント
1. 自分の能力や経験を把握して自己分析をする
自分をアピールする前に、自分にはどういった能力や経験があるのかを知って自己分析をする必要があります。その際には、1つの見方だけではなく、いろいろな角度から細かく分析することが大切です。主観的な見方だけだと気付けないことが多いため、周りの人に自分はどんな人間なのか、と聞いてみるのも良いでしょう。例えば、人と話すことが好きという場合は、単に人と話すことが好きというだけでなく、なぜ人と話すことが好きだと思うのか、どのように人と話すことが好きなのかというところまで明確にすることで、自己分析がしやすくなるでしょう。
2. 受験する学校のことを分析する
自己分析だけでなく、受験する学校のことを分析するのも大切です。推薦型選抜や総合型選抜は、一般入試よりも学校側が求める理想の学生像に適した人材なのかということが重要視されます。志望理由書において自分がなぜその学校を受験したのか書く中で、自分の将来の目標や興味関心を踏まえて、自分と学校の相性を知ることができるでしょう。学校案内はもちろん、オープンキャンパスや体験入学などで志望校の情報を集めることも重要なポイントの1つです。
3. 志望理由書に書く内容のポイントを絞る
自己分析と学校分析は、結果のすべてを志望理由書に書くのではなく、アピールできるポイントを見つけて書くことが大切です。自分と学校が、どういった点で結びつくのかということを整理し、もっとも効果的に自分をアピールできるポイントに焦点を当てて文章の流れを作りましょう。 ポイントを絞らずに複数の内容を書き並べてしまうと、その分それぞれの内容が薄くなってしまい読む人にインパクトがない、という印象を与えてしまいますので、注意が必要です。
4. 志望理由書には具体的な自分の体験を入れる
具体的な自分の体験を入れることによって、志望理由書に説得力が生まれます。学校のパンフレットに書いてある言葉や、どこかで見たり聞いたりしただけの言葉をただ書き写せば楽ですし、文章もまとまっているように感じますが、説得力はありません。自分の言葉でわかりやすくアピールすることが大切です。
5. 大げさな表現は使わない
志望理由書は真実味を持たせて書くということも大切です。極端に大げさな表現を使って知識があるところをアピールしようとすると、真実味がない印象を与えます。自分の言葉で素直な気持ちで意欲を伝えることができる文章を書くことを意識してみましょう。
志望理由書を書く際は、以下のテクニックを意識して書くと良いでしょう。
志望理由書を書く時に役立つ6つテクニック
1. 文末表現を統一する
文末表現は「だ・である」、「です・ます」の2つのパターンがあります。読んだ時に文章の調子がバラバラだという印象を与えないように、文末表現をどちらかに統一しましょう。
2. 同じ文章表現を使わないよう注意する
文章を終える表現を同じものを繰り返し使うと、単調な印象を与えます。例えば、よく使われる「~と思います」、「~と考えます」という表現を多用するのではなく、「~と思います。」を「~しようと心に決めています。」などに変えるだけで文章の調子が変わり、単調ではなくなります。同じ文章表現ではなく、さまざまな文章表現を使うことによって魅力的な文章になるといえるでしょう。
3. 1つの文に1つの内容を書くことを意識する
1つの文の中に複数の内容が盛り込まれていると、文章もその分長くなり要点がわかりにくくなります。例えば、1つの文の中に将来の希望、その理由、その大学を志望しているという3点が盛り込まれているとします。伝えたい内容は伝わりますが、文章が長くてスッキリしませんし、要点がわかりにくいですよね。1つの文に1つの内容を書く、と決め手文章を書くとスッキリしますし、要点もわかりやすくなります。
4. 話し言葉や“ら”抜き言葉、誤字脱字に気を付ける
普段の話し言葉や「食べれる」「受けれる」などの“ら”抜き言葉は稚拙な印象を与えてしまうため、使わないように注意しましょう。また、基本的なことではありますが、誤字脱字がないように必ずチェックするのも大切です。その場で提出するテストや小論文とは異なり、志望理由書はじっくりと考えて書くことが多いので、文章を見直す時間が十分にあります。そのような状況で誤字、脱字を使ったまま志望理由書を提出することは、大きなマイナスの評価につながってしまいます。
5. 原稿用紙を正しく使う
志望理由書は原稿用紙で文章を書くことになるため、原稿用紙の正しいルールを理解することも重要なポイントの1つです。文章の書き出しや段落を変える時には1マス空ける、句点やカッコなども1マスとする、といったルールがあります。他にもいくつかルールがあるため、事前にすべて理解しておきましょう。
6. 言葉の使い方は志望理由書に適した表現を意識する
志望理由書に適した言葉の使い方も意識しましょう。具体的にあげると、「自分」を「私」と書く、「志望する大学・短期大学」を「貴学」といったことです。志望理由書では適さない文章表現にどんなものがあるのか理解しておくことが大切です。
中には、「入試前にできるだけ志望理由書を書く練習を重ねておきたい」という学生の方も多いのではないでしょうか。志望理由書を書く練習方法として書籍を利用する方法が効果的です。ライセンスアカデミーが出版している『「志望理由書」練習ノート』は、基本的な書き方やパターンを紹介するとともに、書き方を練習するページや、書くために必要な自己分析・会社分析のためのワークシートもついているため、練習に最適です。
これを読めば「志望動機」の書き方がわかる!試験に合わせた基本的な書き方をカンタン・わかりやすく紹介してます。書き方を練習するページや、 書くために必要な自己分析・会社分析のためのワークシートもプラスしています。
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より実践的な練習方法を知りたい方は、志望理由書の書き方をわかりやすく解説している動画を参考に練習する方法がおすすめです。志望理由書の書き方だけでなく、面接の対策などの動画も掲載されていますのでぜひ参考にしてみてくださいね。
自分にあった対策をしよう!
志望理由書は、学校の推薦型選抜や総合型選抜を受ける際に合否の判定に影響する大切なものです。
書き方のポイントやテクニックを意識し、自分の言葉で意欲を伝えることができれば、合格への一歩につながります。
その場で提出するテストや小論文とは異なり、志望理由書はじっくりと考えて書くことができますので、練習を重ねて、自分をアピールすることができる志望理由書を書きましょう。
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小論文の書き方