警察犬訓練士になるには?仕事内容や必要な資格、進路の選び方を解説

容疑者の匂いを嗅ぎわけたり行方不明者を捜索したりと、警察活動を行う警察犬。犯罪捜査や警備などの場面で活躍します。そんな警察犬候補の犬に必要とされる能力を訓練するのが「警察犬訓練士」の仕事です。
将来の進路を考えている学生さんの中には、ニュースやテレビドラマで活躍する警察犬を見て、警察犬訓練士に憧れを抱いた人もいるでしょう。子どもの頃から犬が好きで、犬と触れ合いながら仕事ができる警察犬訓練士になりたいと考えている人もいるかもしれません。警察犬訓練士になるためにはこれからどんな進路を選べば良いのか、特別な資格は必要なのか、気になりますよね。
この記事では、警察犬訓練士の仕事に興味を持っている学生さんに向けて、警察犬訓練士になる方法や仕事内容、給料、やりがいなどを詳しく解説します。ぜひ、高校卒業後の進学先を考える際の参考にしてみてくださいね。

「進路ナビ」では職業から進路や進学先を考えられる「職業マップ」を掲載しています。警察犬訓練士を目指す人にぴったりの進学先や資格、関連する職業を紹介している記事もあるので、ぜひチェックしてみてください。

警察犬訓練士|職業ガイド

警察犬訓練士の仕事内容

警察犬訓練士の主な仕事は、警察犬として現場で活躍できる犬を育てること。と言っても、「具体的にどんなことをするの?」と疑問に思っている学生さんもいるかもしれません。
警察犬訓練士の仕事内容について解説する前に、まずは警察犬訓練士が飼育する「警察犬」について紹介します。
警察犬とは、犯罪捜査や災害救助などの警察活動で活躍する犬のことです。匂いを手がかりに犯人や被害者を探したり、爆発物を発見したり、警備をしたりします。現在、日本警察犬協会が公認しているのは、シェパード、ドーベルマン、コリー、エアデールテリア、ボクサー、ラブラドールリトリバー、ゴールデンリトリバーの7犬種です。警察犬には、警察が直接訓練している「直轄警察犬」と民間が訓練している「嘱託警察犬」がいます。警察犬訓練士も扱う警察犬の種類によって「直轄警察犬訓練士(公務員)」と「嘱託警察犬訓練士(民間人)」に分けられます。
警察犬は、社会の安全を守るために重要な役割を担っており、警察犬訓練士は、そんな警察犬の活躍を支える重要な仕事なのです。
そんな警察犬訓練士の仕事は、大きく2つに分けられます。

  • 警察犬の訓練
  • 警察犬の世話

それぞれ、具体的な仕事内容を解説します。

警察犬の訓練

警察犬候補の犬を警察活動に役立つように訓練することは、警察犬訓練士のメインの仕事です。
警察犬の訓練では、まず「服従訓練」と呼ばれる、マンツーマンで主従関係を結ぶトレーニングから始めます。「座れ」「伏せ」「待て」など様々な合図によって行動できるよう、約半年かけてトレーニングを行います。「服従訓練」の次は、犯人や行方不明者の足跡の匂いを追いかける「足跡追及」や遺留品を犯人のものかどうかを判断する「臭気選別訓練」など高度なトレーニングを行います。他にも警察犬訓練士は「捜査」や「警戒」などの専門的な訓練を行い、一人前の警察犬に育てます。
警察犬訓練士になるには、犬の訓練やトレーニングに関する知識・技術を身につけることが必要です。

警察犬の世話

実務に必要な訓練やしつけだけではなく、犬の世話も警察犬訓練士の大切な仕事です。毎日、栄養バランスを考えた食事を考えたり、排便の様子から健康状態を把握したりして体調管理を行います。衛生的な環境で元気に過ごせるよう、犬舎や訓練所内の掃除もします。
警察犬訓練士には犬を訓練する技術だけではなく、犬の健康管理や飼育に関する知識も欠かせません。

警察犬訓練士になるには?

警察犬訓練士は、社会の安全を守る警察犬を育てる大切な職業です。そんな警察犬訓練士になるには、下記の2つの方法があります。

  • 警察官(公務員)として働く(直轄警察犬訓練士)
  • 民間の警察犬訓練所で働く(嘱託警察犬訓練士)

警察官として働く警察犬訓練士を「直轄警察犬訓練士」と言います。
直轄警察犬訓練士は警察が所有している警察犬を飼育します。直轄警察犬訓練士になるには、まず警察官採用試験に合格し、厳しい訓練を受けなければいけません。警察官採用試験の倍率は地域によっても異なりますが、約5〜8倍ほどと狭き門です。また、せっかく厳しい試験と訓練を乗り越えて警察官になれたとしても、鑑識課など警察犬を扱う部署に配属されない可能性もあります。そのため、絶対に警察犬訓練士になりたいという人は民間の警察訓練所で働く方が確実でしょう。
民間の警察犬訓練所で働く警察犬訓練士を「嘱託警察犬訓練士」と言います。
嘱託警察犬訓練士の仕事は一般家庭の犬を警察犬として育てることです。嘱託警察犬訓練士になるには、見習訓練士として訓練所に入り、住み込みで修業し、公認訓練士の資格を取得する必要があります。
直轄警察犬訓練士と嘱託警察犬訓練士、どちらの道に進むにしても厳しい試験や修行があるため、「犬が好き」「犬と一緒に仕事をしたい」という強い気持ちが大切です。

警察犬訓練士になるまでの流れ

高校卒業後から警察犬訓練士になるまでの流れを下記の図にまとめました。

警察犬訓練士になるには、高校卒業後にそのまま就職する方法と、大学や専門学校に進学した後に就職する方法があります。就職する場合、直轄警察犬訓練士を目指す人は警察官採用試験を受験し、嘱託警察犬訓練士を目指す人は民間の警察犬訓練所に就職します。大学や専門学校に進学する場合は、動物学や動物行動学などを学べる学科・コースを選んで幅広い知識を身につけると良いでしょう。
「進路ナビ」のデジタルパンフレットでは警察犬訓練士以外の関連職種についても紹介しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。
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警察犬訓練士に役立つ試験・資格

警察犬訓練士として就職するために必須の資格はありません。しかし下記のような資格を取得しておくことで、警察犬訓練士としてキャリアを積んでいく上で役立つでしょう。

  • 公認訓練士
  • 警察犬指導手
  • ドッグトレーナーライセンス

それぞれの資格について紹介します。

公認訓練士

公認訓練士とは、将来警察犬や盲導犬として働く犬を訓練するための知識・技術を認定する資格です。三等訓練士から始まり、二等訓練士、一等訓練士、一等訓練士正、最高位の一等訓練士長の5つの階級に分けられ、三等訓練士から順次昇格していきます。訓練士試験を受験するには、訓練所に入所し一定の経験を積む必要があります。

警察犬指導手

各都道府県が1年に1回実施する警察犬の審査会に合格すると、犬は「嘱託警察犬」、ハンドラー(指導手)は「警察犬指導手」として受験した自治体で働くことができます。審査科目は足跡追及や臭気選別など、警察犬として働く上で必要な実技です。なお1年更新のため、働き続けるためには毎年試験に合格しなければなりません。

ドッグトレーナーライセンス

ドッグトレーナーライセンスとは、日本ドッグトレーナー協会(略称:JDTA)が認定しているドッグトレーニングの資格のことです。ドッグトレーニングの基礎を習得するC級、ドッグトレーニングの応用を習得するB級、犬と飼い主に合わせたしつけ方をアドバイスできるA級の3種類あります。ドッグトレーニングの知識・スキルは警察犬訓練士として働く上で役立つでしょう。

警察犬訓練士の給料・年収相場

警察犬訓練士に興味のある学生さんの中には、給料はどのくらいもらえるのか気になっている人もいるでしょう。厚生労働省が公表している令和4年賃金構造基本統計調査によると、犬訓練士の平均年収は579.8万円でした。なお、この数字は警察犬訓練士のみのデータではなく、盲導犬や災害救助犬、麻薬捜査犬など様々な犬の訓練士を含めた金額となっています。
また警察犬訓練士の平均年収は直轄警察犬訓練士と嘱託警察犬訓練士でも大きく異なります。直轄警察犬訓練士は警察官のため平均年収は300〜500万円ほど、嘱託警察犬訓練士は200〜300万円ほどが相場のようです。なお、嘱託警察犬訓練士になるための見習訓練士期間は訓練所に住み込みの場合も多く、月に3〜8万円程度の給料です。訓練所によっては0円の場合もあります。一人前の訓練士になるまでには金銭面での覚悟が必要になります。
直轄警察犬訓練士は基本的に他の警察官と同じ給与体系なので、勤続年数が増えるにつれ安定的に収入を伸ばしていけるでしょう。嘱託警察犬訓練士の場合はスキルを磨いて昇進するか、独立することで年収アップを目指すことができます。
参考:犬訓練士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
参考:【犬訓練士になるには】仕事内容と年収 | Indeed (インディード)

警察犬訓練士のやりがい・魅力

犯罪捜査や警備などで大活躍する警察犬を育てる警察犬訓練士ですが、その仕事にはどんなやりがいがあるのでしょうか。ここでは警察犬訓練士のやりがい・魅力について解説します。

犬と一緒に働くことができる

犬と一緒に働けることは、警察犬訓練士の仕事の大きな魅力です。「子どもの頃から犬が好き」「犬に関わる仕事がしたい」といった理由から警察犬訓練士を目指す人はたくさんいます。仕事で辛いことがあっても、大好きな犬がそばにいることで癒されることもあるでしょう。犬と一緒に働けること自体が仕事のモチベーションにもなります。動物を相手にする仕事なので、すぐには上手くいかなくても根気強くトレーニングを続けられる忍耐力が求められます。

社会に貢献できる

警察犬は人の命を救ったり犯人逮捕に貢献したりと、人々の暮らしや社会の安全を守るために日々活躍しています。警察犬訓練士はそんな警察犬をしつけ、訓練する仕事。そのため自分が育てた警察犬が誰かの助けになり、世の中に貢献しているという喜びや誇りを感じられるでしょう。警察犬訓練士は正義感・責任感が強く、人の役に立ちたいと考えている人に向いています。

ドッグトレーナー(犬訓練士)の仕事紹介

犬をはじめとした動物が好きで警察犬訓練士を目指している学生さんも多いでしょう。ドッグトレーナー(犬訓練士)には警察犬訓練士以外にも下記のような訓練士がいます。

  • 家庭犬訓練士
  • 盲導犬訓練士

いずれも犬の飼育、訓練に関わる仕事なので、犬が好きな学生さんは将来の選択肢として考えてみても良いかもしれませんね。
それぞれの仕事について紹介します。

家庭犬訓練士

家庭犬訓練士とは、各家庭を訪ねたり犬を預かったりして、犬のしつけをする職業です。「お座り」「待て」やトイレトレーニングを教えたり、噛み癖・吠え癖を矯正したりします。飼い主には、犬の扱い方や行動心理、健康についてのアドバイスを行い、愛犬と良好な関係を築けるようサポートします。犬を飼う上での基本的な知識・マナーを伝えることも家庭犬訓練士の役目です。家庭犬訓練士として働くには、犬の訓練技術だけでなく接客スキルも求められます。
家庭犬訓練士なるために特別な資格は必要ありませんが、訓練所や養成学校などで専門的な知識・スキルを学ぶことが一般的です。
昔は屋外で犬を飼うことが一般的でしたが、近年は室内で飼うことが主流となっています。そのため、人と一緒に暮らすためのしつけが重要視され、家庭犬訓練士の需要は今後も伸びていくと考えられます。

盲導犬訓練士

盲導犬訓練士は、視覚障がい者の安全な歩行をサポートする盲導犬として働く犬を育てる仕事です。盲導犬が視覚障がい者に代わって障害物や段差に気付けるよう、犬の理解度に合わせて根気強く訓練を行います。地道なトレーニングが必要なので、盲導犬訓練士には犬の訓練技術とともに、忍耐力と体力が求められます。盲導犬訓練士は最終的には盲導犬歩行指導員になることが一般的です。盲導犬歩行指導員は視覚障がい者に盲導犬との歩き方を指導します。犬の訓練だけでなく視覚障がい者の歩行指導も行うなど責任は大きいですが、その分やりがいの多い仕事でもあります。
盲導犬訓練士になるためには、盲導犬育成団体・施設に研修生として採用され、専門的な知識・技術を学ぶ必要があります。職員の募集は不定期で行われており、団体・施設によって採用条件も異なるので盲導犬訓練士を目指したい人は事前に確認しておきましょう。

警察犬訓練士になるための情報収集なら進路ナビ

警察犬訓練士について、仕事内容や目指す方法、給料、やりがいなどを紹介してきました。
警察犬訓練士は警察犬を通して社会に貢献できる、やりがいの大きい仕事です。警察犬訓練士には、直轄警察犬訓練士と嘱託警察犬訓練士の2種類あり、それぞれ就職方法や働き方が異なります。自分がどんな警察犬訓練士になりたいかを良く考えて、卒業後の進路を選びましょう。
「進路ナビ」では警察犬訓練士を目指せる大学や専門学校を紹介しています。しかし、実際にどんなことを学べるかは各校の専攻やカリキュラムを調べてみないと分かりません。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うと、各校の詳しいパンフレットを取り寄せることが可能です。
他にも「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。進路について悩んでいる、興味のあることを勉強するための選択肢がわからないという人も是非ご活用ください。
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警察犬訓練士を目指せる専門学校一覧