いわゆる高等教育の無償化(続9) 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授) 更新日: 2020年7月29日
これまで明らかにしてきたように、
新制度は様々な問題点を持ちながら
いよいよ2020年度からスタートする。
このことは、具体的な制度設計にあたった
文部科学省の
「高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議」の三島良直座長も、
衆議院文部科学委員会の法案審議の参考人として、
「十分な議論を詰めた上での結論になっているとは思わない(2019年3月20日)」
としている。
それに対して、大学等修学支援法は、附則第3条で、
「政府は、この法律の施行後4年を経過した場合において、
この法律の施行の状況を勘案し、この法律の規定について検討を加え、
必要があると認めるときは、
その結果に応じて所要の見直しを行うものとする」と規定している。
初めから、4年という年限を明記して見直し規定が入っているのは珍しい。
それだけ、この法律やそのもとになった
「新しい経済政策パッケージ」が急ごしらえで、
不備があったり、既存の制度との整合性や、
新制度によって想定されない事態が起きたりすることが
法律自体に盛り込まれているのである。
今後は、この見直しのために、
どのような作業が必要か問われることになる。
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(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)
【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)、『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。