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いわゆる高等教育の無償化(続8) 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

前号でお伝えしたように、
授業料減免に対する補助金制度が、
新制度において存続しない可能性が高いことは
大学等修学支援法案審議のなかで問題にされ続けてきた。
とくに、これまで減免を受けてきた在学生への補助が
来年度から打ち切られるのではないか、
という点が大きな問題となった。
文部科学省は検討中としか答弁してこなかった。

この点について新年度予算案では、
国立大学には54億円の予算が計上された。
だが、私立大学に対しては予算措置はなされていない。
これに対する私立大学の反応はまだ明らかではないが、
今後、これが問題化するのではないかとみられる。

さて、11月号でお伝えしたように、
この制度の元になった
「新しい経済政策パッケージ」で支援の要件となった、
「実務経験のある教員」については、
具体的な定義がない。
「実務家教員」と混同したりするなど、
マスメディアだけでなく高等教育機関の側も混乱した。

ところが、実践的な職業教育を行う、
新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第5回)
(2015年3月27日)資料には、
「実務経験のある教員(実務家教員)」という記載があり、
実務経験のある教員と実務家教員が
同じ概念と想定されているようにみられる。
同じような資料は他にもある。
つまり、文部科学省には両者が同等かどうか
矛盾している文書が存在している。
これでは、わかりやすく伝えていないと
報道側だけを責めることはできない。
些細なことかもしれないが、一事が万事である。
文部科学省には、きちんとした一貫した説明を望みたい。

▼前号はこちら
https://shinronavi.com/news/detail/889

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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