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続・服装指導の行方 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与)

先月の本欄で、高校生の就活服装に触れた。
就活時の服装については、
応募側の生徒、教員と採用側の企業ではその見方に
多少の「ずれ」があるように思う。
それが、私服での面接をめぐる教員の戸惑いを、
招いているのではないだろうか。

さらに前の本欄(2019年5月)では、
「(服装に関して)高校生としての常識、
在学している学校の規則を守ることは、
社会人、企業人としてのコンプライアンス精神にもつながります」
と書いた。
これは、服装で応募者の特性を伝えるということである。
しかし、アイテムから着こなしまで決まっている制服では、
服装で表せる特性は「真面目さ」くらいしかない。
教員は、外見では「真面目さ」だけを伝え、
それ以外は外見が評価に影響しない「制服」で
生徒を送り出す指導を続けてきた。

一方、採用側は
限られた面接時間で多くの情報を得たいと考える。
私服であれば創造力、表現力から思考力、判断力、
さらは、心理特性や行動特性まで
ある程度見ることができるかもしれない。
服装や髪型、女性では化粧も
その人物の個性を表現する重要な要素であるから、
採用側は書いたこと、話したこと以外の情報を
それらから得ようとする。
そこで、「服装は自由」「私服で受験」「メイクも可」
ということになる。
ここから、
「書いたこと、話したこと中心で評価してもらおうとする生徒・教師」と、
「外見からもより多くの情報を得たい採用者」の
駆け引きが始まるのだろう。

ところで、私服面接には生徒なりの悩みもある。
多くの高校生は、
「制服」「部屋着」「遊び着」で生活しているため、
面接に対応できそうな、
いわゆるオフィスカジュアル的な「清潔感」と「きちんと感」を備えた
私服は持ち合わせてはいない。
そもそも、「きちんとした服装」が求められるときは制服で充分だろう。

余談だが、
行事等で「学校行事にふさわしい私服」と指示すると、
かなりの数の生徒は「ひかえめな遊び着」で現れる。
しかし近い将来、「私服面接」がもっと一般化する可能性は
決して低くはないと思う。
それは高校の服装自由化拡大よりも早いかもしれない。
そうなると、就職担当教員は
現在とは全く違った意味での「服装指導」もすることになる。
就職指導の教員にとって、
勉強する課題がまた一つ増えるのだろうか。

(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)

【筆者プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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