「仕事が合わない」の陰に 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与) 更新日: 2019年10月2日
高卒就職者早期離職の原因として、
希望や適性と仕事の「ミスマッチ」が指摘されている。
最近はその原因として、
高校生就活のいくつかの「特徴」も挙げられている。
内容はどうであれ、
近い将来にその仕組みが変わることは予想に難くないが、
世間には仕組みを変えれば
ミスマッチもなくなり早期離職が減少し、
おまけに採用難も解決に向かうと考える向きもある。
しかし早期離職の原因が、
「ミスマッチ」以外にもあるとしたら
仕組みを変えても早期離職は期待したほど減少しないことになる。
確かにさまざまな機関が調査発表している
早期離職の原因上位には、
いわゆる「ミスマッチ」が上がっている。
だが、私が現場で早期離職した本人や、
早期離職された企業から聞いた理由には、
人間関係の問題が目立った。
卒業生から聞くと、
1年未満で離職するケースでは
ミスマッチより人間関係の方が多い気がするし、
各種統計では「人間関係」もかなり上位に「ランクイン」している。
1~2年目の卒業生からは、
「仕事は予想や期待と違うけれど、
仲間や先輩は親切だし、
先生にも3年はがんばれと言われたからがんばってみる」
という何とも健気な台詞をしばしば耳にした。
一方で、
「人間関係は良くないけどやりたい仕事だから頑張る」
という話は聞いたことがない。
そして離職までには至らなくても
「仕事はいいけれど先輩が……」とか
「上司が……」という話も珍しくない。
「公式調査」には「仕事が……」と答えていても、
その前段階で人間関係に悩んでいるのではないだろうか。
もしもその部分の問題が防止できれば、
または早期に解決できれば、
早期離職防止につながるのではないだろうか。
そしてもう一つ私が気になっていることがある。
それは私が生徒に言っていた
「3年くらいはがんばれ」が、
「3年経てば辞めてもよい」と
受け取られていなかったかということである。
(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)
【筆者プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。