いわゆる高等教育の無償化~実務経験のある教員と実務家教員 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授) 更新日: 2020年7月29日
「いわゆる高等教育の無償化~実務経験のある教員と実務家教員」
(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)
新制度の、いわゆる「実務経験のある教員」は
しばしば「実務家教員」と混同されるが、
この二つはまったく異なる概念だ。
実務家教員は専門職大学院などの教員で「実務経験おおむね5年以上」と
具体的に定義されている。
これに対して、「実務経験のある教員」は、
「新しい経済政策パッケージ」ではじめて登場したカテゴリーだが、
それ以上の説明はなく、定義されていない。
このため、「パッケージ」以降の文部科学省の専門家会議の審議では、
この「実務経験のある教員による授業科目」を、
どのように具体的に設定するか等細かな検討に
時間を費やすことになった。
検討の結果、実務経験のある教員については、
大学や専攻により異なり一義的に定義できないとされ、
次のように規定された。
「実務の経験を有する教員が担当する授業科目」以外に
「その他の実践的な教育が行われる授業科目
(実践的な教育が行われる旨が
第三号イに規定する授業計画書に記載されているものに限る)」
この点について、文部科学省の説明でも、
「必ずしも実務経験のある教員が直接の担当でなくとも、
例えば、オムニバス形式で
多様な企業等から講師を招いて指導を行う場合や、
学外でのインターンシップや実習等を授業の中心に位置付けているなど、
主として実践的教育から構成される授業科目でも可」とされた。
なお、奨学生は、この科目を履修することは求められていない。
こうした点にも十分注意していただきたい。
▼前号はこちら
https://shinronavi.com/news/detail/865
(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)
【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)、『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。