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外国人日本語指導の地域格差 学ぶ機会の確保が急務

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日本在住の外国籍の子どもらに日本語を教える体制に、地域間の偏りがあることが日本経済新聞の調査でわかった。調査によると、外国籍の子どもが多い自治体の間で、日本語の指導を行う教員1人が受け持つ子の数に最大3倍の差があるという。教員不足によって十分な指導を提供できなければ、彼らの将来の活躍や多文化共生社会の実現に影響が出てくる。

文部科学省によると、日本語の指導が必要な外国籍の子どもは、全国の公立小中学校に約3万8千人いる(2020年5月1日時点)。日本語の指導は在籍するクラスとは別で行われるため、担当の教員が必要になる。

日本語指導担当教員は、同省によって全都道府県と政令市の67自治体に2千人配置されている。各都道府県・政令市に日本語指導が必要な子どもが平均566人ずつ、教員1人につき18人を受け持つ計算だ。しかし、配置人数にばらつきが生じている。

同省が67自治体の状況を調査した結果、19自治体で教員1人が受け持つ子が平均18人より多い一方、22自治体で10人を下回った。

日本語指導が必要な子どもが平均の566人より多い13都道府県と5政令市で、教員1人の受け持ち数が最も少ないのは東京都と栃木県で11人だった。対して、最多の千葉県は32人と、約3倍の差がある。

受け持ちの数が多くなれば、細かな指導は必然的に難しくなる。

千葉県船橋市の場合、日本語指導が必要な子どもを200人以上抱えているが、指導する教員は5人しかいない。教員が配置されていない学校もある。そのため、教員免許を持たない外部の指導者に頼らざるを得ない状況だ。なかには、携帯翻訳機を使って授業を展開している学校もあるという。

こうした地域差が生まれる主な要因は財源不足だ。

同省は20年度、まず約900人の教員を日本語の指導が必要な児童生徒45人につき1人の割合で各都道府県・政令市に割り振った。そのうえで、残りの1,100人を自治体の要請に基づき配置している。公立小中学校の教員の給与は国と都道府県・政令市がともに負担するため、担当教員が増えれば自治体の支出が膨らむことになる。

そのため、割り振られた最低限の人数以上に要請しない自治体もある。県の独自予算で追加配置することも可能だが、千葉県の場合、財源が限られているとの理由で行っていない。

一方、海外の状況は異なる。

移民の積極的な受け入れによる人口増加を経済成長に反映してきたオーストラリアは、在籍する児童生徒の使用言語などの情報を州の教育省へ提出することが学校に義務づけられている。また、主な州では、移民の子どもが一定数いる学校に英語教育の専門資格をもつ教員が配置されている。

フランスや韓国では、移民の子どもに対する公用語教育は1クラス10人程度の少人数で行われ、授業のコマ数も週10~20コマと確保されている。

各国では教員に専門の免許を求めたり、教職課程で公用語教育を必修にしたりと整備が進んでいる。日本では日本語指導専門の教員免許は存在せず、なかには家庭科の教員が日本語を教えている事例もある。

同省は、日本語の指導が必要な外国籍の小中学生らは2026年度に4万人を超えると推計している。こうした環境を改善して十分な日本語指導を提供できなければ、彼らの学びはもちろん、将来的な海外人材の獲得や定着にまで影響が及ぶ。

日本在住の外国籍の子どもに対する教育制度の不備は、大学の学びでも叫ばれている(進学の壁が阻む国内外国人材の育成 大学入試枠は国立1校)。将来的な外国人人材に対する一貫した教育体制の整備が求められる。

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