【進路コラム】「叱る」筆者・橋本光央 更新日: 2021年5月7日
高校生のための進路ナビニュース
以前、予備校で150人クラスの担任をしていました。
そして、朝のガイダンスに力を入れていました。
なぜなら、生徒をヤル気にさせないといけないからです。
とは言うものの、雑談が多かったのですが……。
例えば、
(1)「旧中山道」 何て読みますか?
(2)梅田にあるコンピュータ専門学校が、
なぜ「HAL」という名前をつけたか?
その他にも、「コロンブスの卵」
(https://shinronavi.com/news/detail/839/)
を実演したり、
「バレずに他人の家の表札を取れたら合格する」という、
ドラマ『赤い疑惑(1975年)』で演じられたおまじないを紹介した上で、
おもむろにある芸人の表札
(本当はキチンと入手したもの)を見せたり、
いろんなことをしていました。
でも、阪神大理系クラス(理系の優秀クラス)のときには
定積分の計算問題等を作って、
朝から計算練習をさせたりもしました。
その甲斐あって、
どんなクラスを担当しても高い合格実績を残しました。
阪神大理系・文系クラスからは一人ずつですが
東大合格も出しました。
また、私大文系クラスの時には、
偏差値30台の生徒たちを龍谷大学に合格させていました。
というのも、当時龍谷大では推薦入試に
「エッセイ」を取り入れていたのですが、
それは発想力を評価する試験だったため、
私が発想法を指導したところ、
多くの生徒が合格したというわけです。
その一人が書いた内容をいまでも覚えているのですが、
「賄賂をなくすために」という課題に対して
「紙幣をなくして貨幣のみにする。
すると貨幣がかさばるので、
賄賂をしようとしてもすぐに見つかる。
だから賄賂はなくなる」というものでした。
確かに面白い発想でした。
そんな私ですが、年に一度、激怒することにしていました。
以前紹介した「スピッツと土佐犬」の実践です。
(https://shinronavi.com/news/detail/781/)
クラスの雰囲気が
緩んできたタイミングを見計らって叱るのですが、
その日は朝から大変。
なぜなら、それは演技だったからです。
だから、まず職員室で「怒りモード」を高め、
そして教室に入るや否やマイクも使わずに
「お前ら、何のためにここに来てるねん。
模試の結果を見てみろ。それで合格すると思てんのか。
勉強する気のないヤツに話をするつもりはない」
と怒鳴って出ていく。
そんなことをしていたのです。
ところで、予備校なのに
なぜか私のクラスではよく同窓会が開かれます。
そしてその時に卒業生たちから
「『お前ら何のためにここに来てるねん』って怒鳴られたガイダンス、
すごく怖かった」と言われます。
「でも、それで気が引き締まって勉強するようになった」と感謝されます。
感情の昂ぶりに任せて叱るのはダメなことです。
ですが、計算ずくで叱るのはOKだと思っています。
でも、もしかすると最近は、
自身の感情の昂りを抑えることができない先生が増えてきたから、
叱ることや体罰が問題視されるようになったのではないでしょうか。
ところで、生徒に慕われる先生って、どんな先生?
いま一度、考えてみたいことです。
雑談の答え:(1)「いちにちじゅうやまみち」
(2)「I・B・Mそれぞれのアルファベットの一つ前の文字」
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際学園に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆、
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫https://yomeba-web.jp/archive/archive-works/
にて作品を無料公開中。