警ら隊(後編) 筆者:橋本光央 更新日: 2020年11月11日
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世論調査によると、
発足直後は70%を超えていた
菅内閣の支持率が下がっているようです。
でも数字に一喜一憂するのではなく、
この国を良くすることに集中して
施策に取り組んでほしいものです。
ところで「世論」はどのように読みますか。
「よろん」「せろん」、どちらが正しいでしょう。
実は、どちらも正解です。
ただし、本来は、
「よろん(輿論):議論を経て練り上げられた理性的で公的な意見」
「せろん(世論):民衆の感情から出た情緒的な意見」と、
まるで正反対の意味だったのですが……。
ところが、当用漢字(常用漢字)に、
「輿」の字が含まれていなかったために、
「よろん」も「せろん」も「世論」に統一して
使われるようになってしまったのです。
でも、意味の異なる漢字を統一して使うとは、
どうなんでしょうか。
そうかと思うと、文藝春秋社は立派です。
というのも「藝」と「芸」は全く違う文字だからです。
「藝」という字は真ん中の部分で
「人が草の苗を地面に植えようとしている」ことを
表した象形文字で、
「大きな教養が芽生えること」を
意味しているのに対して、
「芸」は防虫効果のある草のことです。
しかも訓読みにすると、「藝る」は「うえる」、
そして「芸る」は「くさぎる」となります。
草を植えるのと、草を切るのですから、
まるで正反対の言葉だったのです。
だから、一貫して「藝」の字を
使い続けている文藝春秋社は、
正しい見識を示していると言えるでしょう。
やはり私は
字義的に正しい漢字を使いたいです。
多少覚えなければならない漢字が増えたとしても、
意味が通った言葉のほうが、
生徒たちだって納得して覚えることができるでしょうし、
正しく使うことができるようになるに違いないのですから。
【橋本光央プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫にて作品を無料公開中。