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警ら隊(前編) 筆者:橋本光央

最近のクイズ番組では、
よく漢字に関する問題が出されます。
とても読めない漢字がいっぱいで、
それなりに面白く見てしまいます。
中には、「雲」を3つと「龍」を3つで
「たいと」と読む漢字が最多画数!
という問題がありました。
しかし、調べてみると、
これは「幽霊文字(実在しない文字)」だったようです。

ところで、現在は2136字が
日常的に使ってよい常用漢字とされており、
これに人名用漢字863字を加えた2999字が
日本で使える漢字として設定されています。
ところが、漢和辞典を見ると、
多いもので約50000字が記載されています。
50000もある中から2999字、
つまり約6%しか使えないって、どういうことなのでしょう。

ちなみに今回のタイトルは、
私が小学生の頃に「警ら隊」という看板を見た時に、
時代劇に出てくる火消しの「め組」と同じで、
警察の「ら隊」だと思っていたことに由来します。
「警邏隊」の方が分かりやすいのに、
「邏」の字が常用漢字ではないため、
こういう書き方になっているようです。

では、どうしてこんなことになったかというと、
それは昭和21年に「これしか使ってはいけない」ということで、
政府が「当用漢字表」を定めたことに起因します。
ちなみに、「漢字を全廃する」ことを
前提(敗戦が影響している)として、
「当面の間は用いていい」と設定したものなので
「当用漢字」と命名されたのです。
ところが、「漢字を全廃するのは無理だ」と悟った政府が
昭和56年に当用漢字から常用漢字へと名称を改め、
「普段はできるだけこの漢字を使ってください。
でも、もっと難しい漢字を使ってもいいですよ」
と規制を緩やかにしました。
それが現在の漢字クイズ隆盛へとつながったとも言えましょう。

後編はこちら

【橋本光央プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫にて作品を無料公開中。

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