就職希望と言うけれど(後編) 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与) 更新日: 2020年11月11日
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担任の話では、
保護者は本人の勉強への意欲と覚悟次第で学費を出すつもりだと
言っているらしい。
とは言え、さすがに「模型の専門学校」は見当たらない。
なぜ「模型」なのか。
再度生徒と話をするうちに、
就職を前提としたから模型と言ったことが分かった。
元々は鉄道や飛行機が好きで、
模型を作ったり写真を撮ったりしていることがわかった。
好きなことを勉強すると言っても、
機械や設計、工業デザイン等の理数系は苦手なので、
何か簡単そうな学科の専門学校に通いながら、
趣味を楽しもうとして、保護者に厳しく意見されたようだ。
こんな状態の生徒でも入れてくれる専門学校はないわけではないが、
それでは時間と学費の無駄になってしまうだろう。
保護者もそのことを想像したようだ。
保護者の対応は進路指導担当から見て適切に思えた。
かなり出遅れることになるが、
ここはもう一度生徒自身の進路設計からやり直すことにした。
その後の彼の進路はどうなったか。
プライバシーもあるので詳しい話は控えるが、
結局彼には趣味にも生かせる技術を学ぶ、
信頼できる専門学校を紹介した。
そして趣味も楽しみながら仕事をする将来について、
保護者と話し合うように勧め、
理解を得ることもできて無事進学した。
後年、その専門学校の担当者から、
最初は助手としてだがその技術を生かせる会社から
内定を得たという話を聞いた。
一度保護者によって専門学校の道を閉ざされたことから、
就職者指導に参加し、遠回りになったが、
やりたいことと勉強と仕事を何とかつなげて、
本人も納得できる進路を見つけた。
もしも保護者が最初から生徒の言うままに学費を出していたら、
彼はこのような結果を得られただろうか。
結局、保護者の方とは、
最後までお目にかかることのない進路指導だったが、
うまく協力していただけたと思っている。
(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)
【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。