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コロナ禍の中の大学~教員側の問題 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

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前回は、コロナ禍の中で、学生が従来と同じように、
多くの授業を履修しているため、
課題などの負担が重くなっているのではないかと指摘した。
しかし、問題は学生の側だけにあるのではない。
教員のほうでも課題ばかり大量に出して、
コメントや添削などのフィードバックが一切ないなど、
これまでの授業形態のままオンラインで続けている者が少なくないようだ。

全国大学生協連の調査によれば、
「すべての授業あるいは多くの授業で課題が出されている」
と回答した学生は9割以上になる。
ところが、同じく「すべての授業あるいは多くの授業でフォードバックがある」
という回答は36%にすぎない。
教員も、オンライン授業は、
これまでとは異なる授業形態であることを十分に認識せず、
従来授業の延長で考えているようだ。
フィードバックをしなければ、
オンライン教育は質が低いということを立証することになってしまう。

今後、そうした大学と、きちんとフィードバックする大学の差が、
明確にあらわれるのではないかと思われる。
フィードバックをするためには、
教員個人の努力では限界があり、
TA(ティーチング・アシスタント)など教員への補助が必要だ。
当然TAを多く雇用できる大学ばかりではない。
ただ現状を放置すれば、
どうも通俗的なグレシャム法則(悪貨が良貨を駆逐する)に
なるのではないかと懸念している。

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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