高校生向けに就職について講演をすることがある。
2・3年生の場合は就職希望者対象だが、
1年生の場合はごくまれだが全員を対象に就職講話を依頼されることもある。
進路多様校といわれる高校では大学進学を考えている生徒も
就職に関する知識や情報を得ておくことはとても大切だ。
私は講演の中ではできるだけ、
高卒就職と大卒就職の職種の違いを話すことにしている。
大卒就職では人気企業や人気業界が話題になることはあっても
人気職種が話題に上ることはまずない。人気職種が話題になるのは、
幼稚園児や小学生対象の「なりたい職業調査」くらいである。
ちなみに最近の小学生のなりたい職業の調査で「教員」は、
女子でかろうじて10位以内には入っているそうだ。
閑話休題、話を戻そう。
高校生のキャリア教育では職業意識、職業観、職業理解等々、
「職業」を含む言葉がよく使われるが「業界」はあまり出てこない。
高校生就活はまず「どんな仕事をしたいか」から始まるが
大学生就活は「どの業界で働くか」を考えるようだ。
高校生は就活に「職種」から入り、大学生は「業種」から入るということになる。
このような就活の違いはそれぞれの就職後の職種の違いによるのではないか。
文科省の学校基本調査結果(2025年公開)によると
高卒就職の職種は上位3位までで全体の約62%
(生産工程38.6、サービス12.4、事務11.2)だが、
大卒の場合は同じ上位3位までで約89%
(専門的・技術的41.2、事務23.9、販売・営業23.7)である。
高卒職種は上位7位まで合計してようやく90%に届く。
つまり高校生に比べて大学生は現状の職業区分で見た場合、
職種の幅が狭いと言える。また、大学生の専門的・技術的職業は
理工系や情報系の学部卒が多いと言われており、
いわゆる文系学部では事務や販売・営業に就く比率が
さらに高くなることが予想できる。そのため大学生は、
「何をするか=職種」よりも「何を扱うか=業種」を考えるのだろう。
一方で高校生は職種の幅が広く、さらにいわゆる「現場仕事」が多い。
私は高校生に「高卒の仕事は事務を除けば
その会社の中で最もその会社らしい仕事」と説明している。
製造業ではものを作る、販売業では売り場で顧客と接する、
運輸業では車両等で人や物を運ぶ、といった具合だ。
具体的に職種を考えれば業種は見えてくる。
漠然と就職を考えている高校生は何をして働きたいか、
すなわち職種から入るほうが考えをまとめやすい。従って高校生は、
職種を先に考えるか業種と職種を同時に考えたほうが良いことになる。
進路多様校と呼ばれる高校の場合、大学進学と就職で迷ったり、
自己の将来像が見えずに消去法で大学進学を選んだりする生徒も多い。
このような生徒には前記の内容のような大卒と高卒の「仕事選び」の違いを
十分に説明しておくことが必要ではないだろうか。
【プロフィール】
元都立高校進路指導主任・
多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与/
キャリア教育支援協議会 顧問
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。
