以前紹介したヘッドスタートなどはアファーマティブ・アクションの施策である。
これらは、いずれも巨額の予算を必要とする施策であった。
これに引き換えとして提唱されたのが、
黒人などのマイノリティに対する入学優先政策としてのクォータ制(割当制)である。
クォータ制はヘッドスタートなどと異なり、
入学者の割り当てをするだけだから、きわめて安上がりの方法だった。
また、いわゆる「下駄を履かせる」方法も取り入れられた。
もっとも教育におけるクォータ制は1920年代からあった。
それは、ユダヤ人に対するユダヤ人クォータである。
当時アイビーリーグの大学にユダヤ人が急増したことから、
1926年に、入学者選抜に学力以外の要素を導入し、
ユダヤ人入学者の割合を約25%から約15%と減少したものである。
しかし、1960年までに各大学の「ユダヤ人クォータ」は廃止された。
今日の「反ユダヤ主義」に対する政権の対応とは
まったく逆のクォータ制が取られていたのである。
このアファーマティブ・アクションとしてのクォータ制は、
賛否両論を巻き起こしながら、今日まで続いている。
反DEIの姿勢をとるトランプ政権にとっては、大学への攻撃の一つとして、
クォータ制の批判は格好のターゲットだったのである。
日本では、大学入学者選抜の女子枠が典型的なクォータ制であり、
やはり賛否両論を起こしながら進められている。
次回以降、アメリカのクォータ制の展開を追っていく。
【プロフィール】
東京大学名誉教授、現・桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、
『大学進学の機会』(東京大学出版会)、
『進学格差』(筑摩書房)など著書多数。
