Masaaki Tonomura profile 兵庫県明石市生まれ。19歳でオール阪神・巨人に弟子入りし、吉本総合芸能学院「NSC11期生」に入学。吉本興業の所属タレントとして活躍するも、相方の都合でコンビが解散。ハウスメーカーの営業になり、笑いを交えたトークを武器に全社営業トップに上り詰める。その後数社起業。会社経営をする傍ら10年かけて「笑い」と「コミュニケーション」のメカニズムを研究し、一般人が習得できる教育プログラムの体系化に成功、コミュニケーションスキルアップを目的とする研修会社(株)ヒューマンコメディックス設立。 自身が塾長を務める『笑伝塾』の参加者は毎年1万人を超える。NHK『めざせ!会社の星』講師としても出演し、現在は日本全国に「笑いのコミュニケーション」を広めるべく活動中。 笑伝塾 19歳でオール阪神・巨人に弟子入りし、その後はNSC11期生、吉本興業所属タレント、ハウスメーカーの営業マンという経歴を経て、現在は(株)ヒューマンコメディックス代表取締役として活躍している殿村政明さん。 2009年に開校した、ご自身が塾長を務める個人参加型コミュニケーショントレーニング塾『笑伝塾』には毎年1万人を超える参加者が来校しています。「笑いのコミュニケーション」を全国に広めていく活動をしている殿村さんを訪ね、ご自身のお話をうかがうと共に、高校生のみなさんへ応援メッセージをいただきました。 これまでの経緯を教えてください オール阪神・巨人の弟子に10代で入って、その後NSC11期生に入りました。11期生だとケンドーコバヤシや中川家、陣内智則が同期でしたね。オーディションに受かり、吉本興業株式会社に入って、吉本のタレントになりました。レギュラーも決まっていたので、僕はもうやる気満々の状態だったのですが、相方が解散したいって言い出して。 相方は元々友人で、僕が無理やり引っ張ってきたので、モチベーションが全然違っていて。僕はもう毎日4 時間練習をするくらい燃えていたのに、相方はそれについていけないっていう状態になってしまい、そのまま解散してしまいました。 その後他の人とコンビを組んでみたのですが、夫婦とかと一緒でコンビにも相性があって、「やっぱり前の相方が一番良いな、他の人では違うな」と感じてしまい、あまりうまくいきませんでした。 しばらくたって、「一回リセットしてちゃんと働いて、それからもう一回考えてみればいいか」と思い、ハウスメーカーに営業マンとして入社しました。入社した最初の頃は、芸能界とは違うと考え、キャラを隠して丁寧に仕事をしていたんですが、営業成績があまり伸びなかったこともあり、支店長に頼んで当時の営業成績がトップだった人に同行させてもらい、どういう営業の仕方をしてるのかを見せてもらうことにしたんです。 そうしたら、その営業の人がめちゃくちゃおもしろいおじさんで、お客さんをずっと笑わせてるんですよ。営業マンってパンフレットを見せて説明をしてっていうのが基本の流れだと思うんですけど、その人は説明をあまりしていませんでしたね(笑)。それよりも会話の中では雑談が多くて、お客さんの方から「休みの日どうしてるんですか」「今度飲みに行きましょうか、家族同士で」とか話を振ってくるくらい、自然にお客さんの懐に入り込んでるなぁっていうのを感じました。 通常だと1回目から「検討してください」って話になることが多いのですが、その人の営業ではその会話が1回目にはなく、次のステップで検討してもらう流れでした。その時、自分は売ることに必死だったな、売るよりお客さんの心の扉を開けるのが先だったな、と反省しましたね。 お客さんがリラックスしたところで仕事の話をすると、確かに感触が違うなと感じたので、それからは笑いのスキルをふんだんに出すようにしました。 以前は、ウケたいと思ってやっていたのを、ウケるよりも“お客さんをリラックスさせるため”、“お客さんとの距離を縮めるために”という気持ちでやっていくようにしたら、半年後にそのトップの人も抜いて、ぶっちぎりで全社トップになることができました。その成績は退職まで維持し続け、その後独立しました。 独立して、自分の会社を立ち上げた当初は、うちの社員にもお客さんとのコミュニケーションが苦手な人が結構いましたね。お客さんがクレームで怒ってるのに、「すみません」って言うばっかりでお客さんの真意を結構聞いていなかったり、電話で済ませたりしていたので、「まずはお客さんと会って雑談を入れろ」と教えました。 用件だけ済ませて帰ってくる人にも、もうちょっと何かあるだろうって具体的に話したり。あと感情の面でも、「お客さんの前でカッコをつけるな、もっとアホになれ」とかそういったことを毎日2時間くらいかけて教えていました。 すると、「あの人雰囲気いいね」ってお客さんから言われるようになっていったんです。急に業績は上がらなかったけど、お客さんがそう言ってくれるようになってから業績が上がっていきましたね。 その時くらいから、笑いでコミュニケーションスキルが身につくなと思い始めました。おもしろい人間に丸々生まれ変われることはないけど、おもしろいと感じる言葉のチョイスや言い方、動きとかをスキル化・具現化することはできるな、と思い10年ほど仕事をしながら研究しました。 その頃は飲食業や他の会社も同時に経営していたんですが、笑いのスキルを伝えることをメインでやっていきたいなと思い、一発目から講演にはせず、研修という形でスタートしました。簡単に言うと、ギスギスしたムードに笑いを入れたら、そういう壁はつぶせるだろうということです。そういうのを苦手な人でもできるようにならないかなと思ってやっています。 現在の活動内容について教えてください。 研修の依頼が企業から来ることが多いですが、うちは営業を一切していないので、講師のサイトに載せてもらったり、あとはネットで調べて依頼をしてきてくれたりしますね。僕が始めた頃、こういった笑いのスキルを伝えていたのは、吉本とうちくらいだったんです。 研修や講演をしたり、あとは個人塾も始めました。サラリーマンの方などが個人で月1回、1年間通塾する形でやっています。一度にたくさんは難しいですが、もう2000名くらいは来たんじゃないかな。 個人塾を始めたきっかけはなんですか? 企業研修の時に、参加者の方にアンケートを書いてもらっているんですけど、企業で研修をするのって1日くらいじゃないですか。そのあと継続して覚えたいからそういう通塾する形の研修はありませんか、っていうアンケートが何通か来たので「じゃあ個人塾もやろう」ということでスタートしました。 セミナーや講演でどのようなことをお話しされているのでしょうか? 高校生向けの講演では「オープンハート」ってよく言っています。萎縮と丁寧は違う、萎縮するのではなく丁寧に伝えるんだということと、ちゃんと言葉をはっきり相手に置く喋り方をするんだっていうことを話しますね。あと、好きなことを追い続けた経験は今後の人生にも活きるっていうことも伝えています。 コミュニケーションで大切なことはどのようなことでしょうか? 「感情」ですね。塾で教えているのは、礼儀は大事だけど、大人になれば崩す技術も必要ということです。「こんにちは」って言うのを「あ、どうも!こんにちは!」って言ったり、声のトーンも フレンドリーに「久しぶり」って言うのを「久しぶりですねー!○○さーん! 」って言ったり、そういうのを徹底して普段からやっていく感じです。 ふざけるとは違うので、ふざけたと思ったら注意します。それを体感して分かっていってもらいたいです。若い子とかだとふざけになっちゃう子もいるけど、それはすぐに気付きます。 コミュニケーションは愛情と勇気、そして思いやりです。向こうが緊張しているなら、こっちがアホになってやろうとか、自分から声をかけたり、ちゃんとリアクションを大きくとろうと思ったりすることも愛情です。 ノーリアクションだったら壁にボールを投げているようなものだし、すごく喋りにくい。だから、リアクションを大きくとれば相手も喋りやすいということを、僕の個人塾では体感で身につけていきます。 コンビを組んで、大きいリアクションを取った場合とノーリアクションの場合と両方やるんです。そしたらリアクションは大きく出さなきゃいけないなとはっきり理解できます。そうすると、相手の言った言葉を想像して、ちゃんと映像化した良いリアクションになってくるんです。 芸人さんと一般の人とで共通する部分はありますか? 芸人さんって人見知りの人が多いんです、意外と。僕も結構人見知りするんです。でもそういう気配は見せない。それは、見てるお客さんにもスタッフにもそういう気配を見せたらアウトだからです。実社会の一般の方で、自分は人見知りだ、って言ったりする方がいますけど、そういうのってコミュニケーションマナーとして「自分は人見知りなんです、だからわかってくださいね、許してくださいね」っていう甘えなんですよ。 そこを芸人は舞台、実社会の皆さんは仕事で、プロとしてしゃきっと切り替えてスイッチを入れることが必要です。こういうことは場慣れなので、毎日必要に応じて切り替えていくことで鍛えられていくと思います。あとは、自分だけが楽しいんじゃなくて、「聞いている人もちゃんと分かっているかな?」っていうフィルターを通して、相手に興味を与えることも大事です。 学生にはどんなことを教えているんですか? 最初は笑いのスキル専門でやっていたんですけど、年数を重ねていくうちに、それだけではなくてコミュニケーション寄りのちゃんとした考え方を構築して伝えていかなきゃなって思うようになりました。 優しくされるだけが愛情だと思っている学生が多いので、僕は社会に出たときに注意されたりするのも愛情、無視されるのは一番辛いっていう考え方を植え付けていってるんです。 注意されたりすると逃げてしまう人が結構いますが、そこをポジティブにとらえる力に変えるよう教えるのも僕たちの仕事かなって思っています。「無茶ぶりされるんです」っていう人も良くいるんですけど、それは無茶ぶりじゃなくて可愛がってもらってるんですよ。 やっぱり先輩に可愛がってもらうのが上手な人って芸能界でも一般社会でも一緒で、うまくやっていけるんです。芸能界だとこれが死活問題で、可愛がってもらえないと仕事もぎくしゃくしてなかなか上手くいかないんです。 芸人さんで、めちゃくちゃおもしろいネタを書いていても先輩やプロデューサーに可愛がられていないとあんまり表に出てこない、逆にそんなにおもしろくないけれど可愛がられるのが上手な人は結構表に出たりしているから、そういう部分を抽出して皆さんには伝えていきたいですね。 自分から先輩のところに行って、指導してほしいって頼みに行くんです。かっこつけたりせずに積極的に。そういうことって言われて悪い気はしないので。 ご自身の進路を決めたきっかけはなんでしょうか? 自分が働くっていう進路を決めたのは、時間を有効に使いたかったからです。勉強できる子にはちょっとわからないところかもしれないけれど、僕は勉強がかなり嫌いで、10分も続けて座っていられないようなやつだったので、この先大学とか行ってもずっとだらだら人生を送ってしまうことが自分で想像できてしまったんですよね。だったら、働く方が自分が一生懸命できるなって思ったので進路を決めました。 高校生の皆さんへメッセージをお願いします。 焦る気持ちはみんなあると思うんですけど、時間がかかってもいいからちゃんと「自分が何年後にこうなって… 」っていう将来を想像する、そういったことをもっとしていくと良いと思います。 ただ、人生は思い通りにばっかりはいかないんですけどね。でもあまり先々ばかり考えていても身動きが取れないから、びびらないで、まずは目の前のことをやりましょう。 何か行動を起こしてちゃんと考えてやったことは、意外とどうにかなるものです。ただし、この「意外とどうにかなる」っていうのはやった人だけのセリフってことを忘れないでほしいですね。 よく「明確なビジョン」っていうけど、それはしなくていいと僕は思っています。明確って言われたって、若い人にはなかなか難しいと思うので。 どちらかというと、草履が揃ってなくても、片方でも草履を持っていたらやってしまえっていう方が、僕はいいと思います。条件がきっちり揃うまで!ってやっていると、時間が経ってしまうし年齢も重ねてしまうので、一つだけ揃えて、後は「あとで両足揃えるわ」って考えで行くくらいの勇気をもってほしいと思います。片一方でも揃ったらまず動く、ということが大事です。動いていれば、意外とどうにかなるのでね。 あとは、「恥=勲章」ということを皆さんに伝えたいです。自分ができるとわかっていることをやっても恥はかかないから、恥をかいていないのは新しい行動を起こしていない証拠なんです。「うわぁ恥ずかしい」って感じたことを後々振り返ってみて「あの時があったから今こうやって思えるなぁ」みたいなことってたくさんあると思うので、恥をかいていないのは逆に本当の恥だと僕は思います。 自分が「これできるかな… 」とか「こんなことを言うのは変かな? 」とか思わずに、恥をかくってすごく成長してるってことなので、勲章が一年でどれだけ並ぶかどんどんチャレンジしてみてください。 コミュニケーションも一緒で、自分が喋りやすい人とずっと喋っているとそこから輪は広がらずに、コミュニケーション筋力が低下してしまいます。ついつい、いつも喋りやすい人に話しかけてしまいがちですが、自分から他の人に声をかけたりして、恥を恐れずにチャレンジしていきましょう。
Masaaki Tonomura profile
兵庫県明石市生まれ。19歳でオール阪神・巨人に弟子入りし、吉本総合芸能学院「NSC11期生」に入学。吉本興業の所属タレントとして活躍するも、相方の都合でコンビが解散。ハウスメーカーの営業になり、笑いを交えたトークを武器に全社営業トップに上り詰める。その後数社起業。会社経営をする傍ら10年かけて「笑い」と「コミュニケーション」のメカニズムを研究し、一般人が習得できる教育プログラムの体系化に成功、コミュニケーションスキルアップを目的とする研修会社(株)ヒューマンコメディックス設立。
自身が塾長を務める『笑伝塾』の参加者は毎年1万人を超える。NHK『めざせ!会社の星』講師としても出演し、現在は日本全国に「笑いのコミュニケーション」を広めるべく活動中。
19歳でオール阪神・巨人に弟子入りし、その後はNSC11期生、吉本興業所属タレント、ハウスメーカーの営業マンという経歴を経て、現在は(株)ヒューマンコメディックス代表取締役として活躍している殿村政明さん。
2009年に開校した、ご自身が塾長を務める個人参加型コミュニケーショントレーニング塾『笑伝塾』には毎年1万人を超える参加者が来校しています。「笑いのコミュニケーション」を全国に広めていく活動をしている殿村さんを訪ね、ご自身のお話をうかがうと共に、高校生のみなさんへ応援メッセージをいただきました。
これまでの経緯を教えてください
オール阪神・巨人の弟子に10代で入って、その後NSC11期生に入りました。11期生だとケンドーコバヤシや中川家、陣内智則が同期でしたね。オーディションに受かり、吉本興業株式会社に入って、吉本のタレントになりました。レギュラーも決まっていたので、僕はもうやる気満々の状態だったのですが、相方が解散したいって言い出して。
相方は元々友人で、僕が無理やり引っ張ってきたので、モチベーションが全然違っていて。僕はもう毎日4 時間練習をするくらい燃えていたのに、相方はそれについていけないっていう状態になってしまい、そのまま解散してしまいました。
その後他の人とコンビを組んでみたのですが、夫婦とかと一緒でコンビにも相性があって、「やっぱり前の相方が一番良いな、他の人では違うな」と感じてしまい、あまりうまくいきませんでした。
しばらくたって、「一回リセットしてちゃんと働いて、それからもう一回考えてみればいいか」と思い、ハウスメーカーに営業マンとして入社しました。入社した最初の頃は、芸能界とは違うと考え、キャラを隠して丁寧に仕事をしていたんですが、営業成績があまり伸びなかったこともあり、支店長に頼んで当時の営業成績がトップだった人に同行させてもらい、どういう営業の仕方をしてるのかを見せてもらうことにしたんです。
そうしたら、その営業の人がめちゃくちゃおもしろいおじさんで、お客さんをずっと笑わせてるんですよ。営業マンってパンフレットを見せて説明をしてっていうのが基本の流れだと思うんですけど、その人は説明をあまりしていませんでしたね(笑)。それよりも会話の中では雑談が多くて、お客さんの方から「休みの日どうしてるんですか」「今度飲みに行きましょうか、家族同士で」とか話を振ってくるくらい、自然にお客さんの懐に入り込んでるなぁっていうのを感じました。
通常だと1回目から「検討してください」って話になることが多いのですが、その人の営業ではその会話が1回目にはなく、次のステップで検討してもらう流れでした。その時、自分は売ることに必死だったな、売るよりお客さんの心の扉を開けるのが先だったな、と反省しましたね。
お客さんがリラックスしたところで仕事の話をすると、確かに感触が違うなと感じたので、それからは笑いのスキルをふんだんに出すようにしました。
以前は、ウケたいと思ってやっていたのを、ウケるよりも“お客さんをリラックスさせるため”、“お客さんとの距離を縮めるために”という気持ちでやっていくようにしたら、半年後にそのトップの人も抜いて、ぶっちぎりで全社トップになることができました。その成績は退職まで維持し続け、その後独立しました。
独立して、自分の会社を立ち上げた当初は、うちの社員にもお客さんとのコミュニケーションが苦手な人が結構いましたね。お客さんがクレームで怒ってるのに、「すみません」って言うばっかりでお客さんの真意を結構聞いていなかったり、電話で済ませたりしていたので、「まずはお客さんと会って雑談を入れろ」と教えました。
用件だけ済ませて帰ってくる人にも、もうちょっと何かあるだろうって具体的に話したり。あと感情の面でも、「お客さんの前でカッコをつけるな、もっとアホになれ」とかそういったことを毎日2時間くらいかけて教えていました。
すると、「あの人雰囲気いいね」ってお客さんから言われるようになっていったんです。急に業績は上がらなかったけど、お客さんがそう言ってくれるようになってから業績が上がっていきましたね。
その時くらいから、笑いでコミュニケーションスキルが身につくなと思い始めました。おもしろい人間に丸々生まれ変われることはないけど、おもしろいと感じる言葉のチョイスや言い方、動きとかをスキル化・具現化することはできるな、と思い10年ほど仕事をしながら研究しました。
その頃は飲食業や他の会社も同時に経営していたんですが、笑いのスキルを伝えることをメインでやっていきたいなと思い、一発目から講演にはせず、研修という形でスタートしました。簡単に言うと、ギスギスしたムードに笑いを入れたら、そういう壁はつぶせるだろうということです。そういうのを苦手な人でもできるようにならないかなと思ってやっています。
現在の活動内容について教えてください。
研修の依頼が企業から来ることが多いですが、うちは営業を一切していないので、講師のサイトに載せてもらったり、あとはネットで調べて依頼をしてきてくれたりしますね。僕が始めた頃、こういった笑いのスキルを伝えていたのは、吉本とうちくらいだったんです。
研修や講演をしたり、あとは個人塾も始めました。サラリーマンの方などが個人で月1回、1年間通塾する形でやっています。一度にたくさんは難しいですが、もう2000名くらいは来たんじゃないかな。
個人塾を始めたきっかけはなんですか?
企業研修の時に、参加者の方にアンケートを書いてもらっているんですけど、企業で研修をするのって1日くらいじゃないですか。そのあと継続して覚えたいからそういう通塾する形の研修はありませんか、っていうアンケートが何通か来たので「じゃあ個人塾もやろう」ということでスタートしました。
セミナーや講演でどのようなことをお話しされているのでしょうか?
高校生向けの講演では「オープンハート」ってよく言っています。萎縮と丁寧は違う、萎縮するのではなく丁寧に伝えるんだということと、ちゃんと言葉をはっきり相手に置く喋り方をするんだっていうことを話しますね。あと、好きなことを追い続けた経験は今後の人生にも活きるっていうことも伝えています。
コミュニケーションで大切なことはどのようなことでしょうか?
「感情」ですね。塾で教えているのは、礼儀は大事だけど、大人になれば崩す技術も必要ということです。「こんにちは」って言うのを「あ、どうも!こんにちは!」って言ったり、声のトーンも フレンドリーに「久しぶり」って言うのを「久しぶりですねー!○○さーん! 」って言ったり、そういうのを徹底して普段からやっていく感じです。
ふざけるとは違うので、ふざけたと思ったら注意します。それを体感して分かっていってもらいたいです。若い子とかだとふざけになっちゃう子もいるけど、それはすぐに気付きます。
コミュニケーションは愛情と勇気、そして思いやりです。向こうが緊張しているなら、こっちがアホになってやろうとか、自分から声をかけたり、ちゃんとリアクションを大きくとろうと思ったりすることも愛情です。
ノーリアクションだったら壁にボールを投げているようなものだし、すごく喋りにくい。だから、リアクションを大きくとれば相手も喋りやすいということを、僕の個人塾では体感で身につけていきます。
コンビを組んで、大きいリアクションを取った場合とノーリアクションの場合と両方やるんです。そしたらリアクションは大きく出さなきゃいけないなとはっきり理解できます。そうすると、相手の言った言葉を想像して、ちゃんと映像化した良いリアクションになってくるんです。
芸人さんと一般の人とで共通する部分はありますか?
芸人さんって人見知りの人が多いんです、意外と。僕も結構人見知りするんです。でもそういう気配は見せない。それは、見てるお客さんにもスタッフにもそういう気配を見せたらアウトだからです。実社会の一般の方で、自分は人見知りだ、って言ったりする方がいますけど、そういうのってコミュニケーションマナーとして「自分は人見知りなんです、だからわかってくださいね、許してくださいね」っていう甘えなんですよ。
そこを芸人は舞台、実社会の皆さんは仕事で、プロとしてしゃきっと切り替えてスイッチを入れることが必要です。こういうことは場慣れなので、毎日必要に応じて切り替えていくことで鍛えられていくと思います。あとは、自分だけが楽しいんじゃなくて、「聞いている人もちゃんと分かっているかな?」っていうフィルターを通して、相手に興味を与えることも大事です。
学生にはどんなことを教えているんですか?
最初は笑いのスキル専門でやっていたんですけど、年数を重ねていくうちに、それだけではなくてコミュニケーション寄りのちゃんとした考え方を構築して伝えていかなきゃなって思うようになりました。 優しくされるだけが愛情だと思っている学生が多いので、僕は社会に出たときに注意されたりするのも愛情、無視されるのは一番辛いっていう考え方を植え付けていってるんです。
注意されたりすると逃げてしまう人が結構いますが、そこをポジティブにとらえる力に変えるよう教えるのも僕たちの仕事かなって思っています。「無茶ぶりされるんです」っていう人も良くいるんですけど、それは無茶ぶりじゃなくて可愛がってもらってるんですよ。
やっぱり先輩に可愛がってもらうのが上手な人って芸能界でも一般社会でも一緒で、うまくやっていけるんです。芸能界だとこれが死活問題で、可愛がってもらえないと仕事もぎくしゃくしてなかなか上手くいかないんです。
芸人さんで、めちゃくちゃおもしろいネタを書いていても先輩やプロデューサーに可愛がられていないとあんまり表に出てこない、逆にそんなにおもしろくないけれど可愛がられるのが上手な人は結構表に出たりしているから、そういう部分を抽出して皆さんには伝えていきたいですね。
自分から先輩のところに行って、指導してほしいって頼みに行くんです。かっこつけたりせずに積極的に。そういうことって言われて悪い気はしないので。
ご自身の進路を決めたきっかけはなんでしょうか?
自分が働くっていう進路を決めたのは、時間を有効に使いたかったからです。勉強できる子にはちょっとわからないところかもしれないけれど、僕は勉強がかなり嫌いで、10分も続けて座っていられないようなやつだったので、この先大学とか行ってもずっとだらだら人生を送ってしまうことが自分で想像できてしまったんですよね。だったら、働く方が自分が一生懸命できるなって思ったので進路を決めました。
高校生の皆さんへメッセージをお願いします。
焦る気持ちはみんなあると思うんですけど、時間がかかってもいいからちゃんと「自分が何年後にこうなって… 」っていう将来を想像する、そういったことをもっとしていくと良いと思います。
ただ、人生は思い通りにばっかりはいかないんですけどね。でもあまり先々ばかり考えていても身動きが取れないから、びびらないで、まずは目の前のことをやりましょう。
何か行動を起こしてちゃんと考えてやったことは、意外とどうにかなるものです。ただし、この「意外とどうにかなる」っていうのはやった人だけのセリフってことを忘れないでほしいですね。
よく「明確なビジョン」っていうけど、それはしなくていいと僕は思っています。明確って言われたって、若い人にはなかなか難しいと思うので。
どちらかというと、草履が揃ってなくても、片方でも草履を持っていたらやってしまえっていう方が、僕はいいと思います。条件がきっちり揃うまで!ってやっていると、時間が経ってしまうし年齢も重ねてしまうので、一つだけ揃えて、後は「あとで両足揃えるわ」って考えで行くくらいの勇気をもってほしいと思います。片一方でも揃ったらまず動く、ということが大事です。動いていれば、意外とどうにかなるのでね。
あとは、「恥=勲章」ということを皆さんに伝えたいです。自分ができるとわかっていることをやっても恥はかかないから、恥をかいていないのは新しい行動を起こしていない証拠なんです。「うわぁ恥ずかしい」って感じたことを後々振り返ってみて「あの時があったから今こうやって思えるなぁ」みたいなことってたくさんあると思うので、恥をかいていないのは逆に本当の恥だと僕は思います。
自分が「これできるかな… 」とか「こんなことを言うのは変かな? 」とか思わずに、恥をかくってすごく成長してるってことなので、勲章が一年でどれだけ並ぶかどんどんチャレンジしてみてください。
コミュニケーションも一緒で、自分が喋りやすい人とずっと喋っているとそこから輪は広がらずに、コミュニケーション筋力が低下してしまいます。ついつい、いつも喋りやすい人に話しかけてしまいがちですが、自分から他の人に声をかけたりして、恥を恐れずにチャレンジしていきましょう。