この夏、サッカー日本女子代表によるワールドカップドイツ大会優勝という歴史的快挙に日本中が歓喜しました。チームの中心選手として全試合に出場した宮間あや選手は、大会通算2ゴール4アシストで日本の初優勝に大きく貢献。ピッチ上では、鋭い眼差しで冷静にプレーをする姿が印象的な宮間選手は、一体どんな進路を歩んできたのでしょうか。そのストーリーからは誰の真似でもない、自分らしさを大事にする真っ直ぐな姿勢が見えてきます。
夢中で取り組んだサッカーと勉強
父親がサッカーをやっていたこともあって家にはいつもサッカーボールが転がっていました。私が小学1年生の時にその父が少年サッカーチームを作り、そこに入ったのがきっかけとなって本格的にサッカーを始めました。当時は遊ぶのもサッカーで、いつも男の子の輪に交じってボールを蹴っていました。10歳の頃だったかな、「世界に羽ばたくサッカー選手になる」なんて夢を口にしていたようですが、実際の女子選手のことも知りませんでしたので、正直、選手としての将来像を具体的にイメージできていたわけではありませんでした。
自分で言うのも何ですが、実は、小さい頃は勉強もよくしていたんですよ。当時はサッカーをしている女の子が少なくて、周りから特別な目で見られることも珍しくありませんでした。私以上にそのことを感じていた両親からは「勉強ができないからサッカーばかりやっているんだって言われないように、勉強もしっかりしなさい」と言われていて。私自身もその通りだなと思っていましたので、自然と机に向かうことができました。
サッカーを第一に決めた進学先
中学2年生から東京・稲城市のチーム「読売メニーナ(現・日テレメニーナ)」に所属したこともあって、3年次の3者面談では、高校進学後も千葉県の大網白里町にある自宅からそのチームに通うことを前提に、先生が勧めてくれた幕張総合高校に進学することに決めました。その頃はすでにサッカーを生活の中心にしたいという思いがあった私にとって、単位制だった幕張総合はうってつけの高校だったと思います。
やりたいことを尊重してくれた環境
高校時代にとてもお世話になった先生がいるんです。その先生は、頭の中が常にワールドスタンダード!とにかくとても広い視野を持った方で、「やりたいことは何でもやったらいい」と、いつも私の背中を押してくださいました。私は小さい頃から、「これをしなさい」などと強制されるのがとても嫌いだったので、自分の周囲にいる大人が、私の考えや気持ちを尊重してくれる方ばかりだったのはとてもラッキーだったのだと思います。
恩師の呼びかけで単身岡山へ
高校2年生の時、元サッカー日本女子代表の本田美登里さんに誘っていただき、その年にできたばかりの「岡山湯郷Belle」に入団。卒業後は、単身岡山に移り住みました。自宅から遠く離れた土地でしたが、小さい頃から指導していただいていた本田さんがチームの監督をされているというのはとても心強く、何の不安も迷いもなくこの地に来ることができたんです。
その後はアメリカのプロリーグから声がかかって、プロ選手としてプレーすることになるわけですが、実はこの時までは自分がプロサッカー選手になるなんて考えてもいなかったんですよ。当時の私はアメリカのプロリーグがどんなところなのかよく分かっていなくて「行けばなんとかなるんじゃないか」という直感で決断しました。深く考えると迷いがちな私は、最初のイメージのまま動くことが多いんです。それでも自分で決めたことなので、「絶対成功させたい!」という意地みたいなものは強く持っていましたね。
サッカーが大好きな女子高校生へ
「サッカーを楽しむ」という気持ちを毎日忘れずに、サッカーを好きであり続けて欲しい。私自身、「今日はサッカーしたくないな」と思う日が来たらその時は辞めるものだと常に意識しながら過ごしています。いまはどんなにうまくいかずに気持ちが下がってしまっても、ボールを見れば蹴らずにはいられないですから、当分は辞められそうにありませんけど。
今後は「岡山湯郷Belle」のみんなで日本一に向かって頑張りながら、来年、ロンドンオリンピックのピッチに立って、何が何でも金メダルを獲りたいと燃えています。
笑顔で過ごすための選択を
私には私の夢があるように、夢や目標は一人ひとり違うもの。ですから、いまやりたいことが見つからなくても焦らなくていいんじゃないかな。深く考え込まずに、まずは自分が笑顔で過ごすにはどうすればいいのか、何をしていると笑顔になれるかを考えてみて欲しい。その中からふと答えが見つかるかもしれません。そんな考え方があってもいいと私は思います。
- 宮間 あや(みやま あや)
- 1985年1月28日生まれ。千葉県山武郡大網白里町出身。千葉県立幕張総合高等学校卒業。
高校2年の時、「岡山湯郷Belle」の発足に参加。2008年、北京オリンピックにサッカー日本女子代表の中心選手として出場し、ベスト4に貢献した。2009年、アメリカ女子プロサッカーリーグ「ロサンゼルス・ソル」に移籍。翌年、「岡山湯郷Belle」に再移籍した。その両足から繰り出される正確なキックは世界最高クラスの精度を持つと言われている。MF。背番号10。
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