社会福祉学とは、全ての人が幸せに生きていくため、様々な角度から社会制度や援助のあり方を研究する学問。進路を考えている学生さんの中には、高校卒業後は社会福祉学について学びたいと考えている人もいるのではないでしょうか。社会福祉学を学ぶためにはどんな進路を選べば良いのか、将来どんな仕事に就けるのか、気になりますよね。この記事では社会福祉学に関心のある学生さんに向けて、社会福祉学とはどんな学問なのか、関連する資格や就職先、社会福祉学を学ぶための進路の選び方を紹介します。
社会福祉学はどんな学問?
そもそも社会福祉学とはどんな学問なのでしょうか。「社会福祉」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的な学問の内容は知らない学生さんも多いかもしれません。まずは社会福祉学ではどんなことを学べるのか、また社会福祉学に関連する学問にはどのようなものがあるのかについて解説します。
社会福祉学の概要
社会福祉学とは、すべての人間が人間らしく生きていくために必要な社会制度や支援のあり方について研究する学問です。特に社会的弱者(制度的弱者)である子どもや障がい者、女性、高齢者、経済的困窮者を対象としており、彼らへの支援や政策・制度について学びます。具体的には「子どもたちが抱える問題は何なのか」「高齢者が生き生きと暮らせる社会にするにはどうすれば良いのか」「障がいをもつ人にはどんな支援が必要なのか」などを様々な角度から社会福祉のあり方について考えます。また国内の問題だけでなく、世界の飢餓問題など人類全体の幸福に関する内容も社会福祉学が取り扱うテーマの一つです。
社会福祉学とは、一人ひとりの幸せから人類全体の幸せを追求し、物質的・精神的援助を行う総合サービスとしての社会福祉について研究する学問なのです。
社会福祉学と関連性のある学問
社会福祉学以外にも福祉制度や人々への支援について学べる学問があります。社会福祉学と関連性のある学問には、下記のものがあります。
- 社会学
- 心理学
- 法学
各学問について、簡単に紹介します。
社会学
社会学とは、社会生活の中での人間関係のあり方や社会の仕組みそのものなどについて研究する学問です。社会の文化や社会階層、社会集団や行動、格差・貧困問題などが社会福祉学で扱うテーマと関連します。
心理学
心理学とは、人間の心の動きやそれによって引き起こされる行動について分析する学問です。メンタルヘルスなどの精神保健分野やカウンセリング、ストレス管理などが、人間の幸福を追求する社会福祉学とつながります。
法学
法学とは、社会生活のルールである法律について学ぶ学問です。法学が取り扱う分野は幅広く、社会福祉に関連する法律や政策、制度についても勉強します。
社会福祉学で取得できる資格
社会福祉学を学ぶことで、国家資格や民間資格を取得することができます。福祉関連の職に就くために必須の資格もあるので、将来どんな仕事に就きたいかを考えながら取得する資格を選ぶと良いでしょう。社会福祉学を学んで取得できる資格には、下記のようなものがあります。
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 精神保健福祉士
- 福祉住環境コーディネーター
- サービス介助士
- 認知症介助士
それぞれどんな資格なのか詳しく解説します。
社会福祉士
社会福祉士は「社会福祉士及び介護福祉士法」法にもとづく国家資格。心身の障がいなど様々な理由で社会生活を送ることが難しい人の相談に応じ、支援機関や関係者との連絡・調整を行う職業です。高校卒業後に法律で定められた学校・指定養成施設で学び、国家試験に合格することで免許を取得できます。
介護福祉士
介護福祉士は、高齢者や障がい者など介護を必要とする人を対象に様々な支援を行う、介護の国家資格です。指定養成施設を卒業するなどして介護福祉士国家試験に合格することで、介護保険として働くことができます。
精神保健福祉士
精神保健福祉士も国家資格の一つ。医療スタッフと連携しながら精神に障がいを抱える人やその家族の相談に応じ、生活支援や社会復帰のサポートを行います。資格を取得するには、高校卒業後に法律で定められた学校・指定養成施設で学び、国家試験に合格する必要があります。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターとは、医療や福祉の専門家と連携をとりながら高齢者や障がい者が暮らしやすい住環境についてアドバイスを行う民間資格です。福祉住環境コーディネーターの検定試験に合格することで、資格を取得できます。
サービス介助士
サービス介助士とは、高齢者や障がい者に対して、適切な介助ができる人になるための民間資格です。「ケアフィッター」とも呼ばれ、福祉職だけではなく観光業や小売業など幅広い業界で活躍できます。資格を取得するには講習や実技教習、検定試験を受ける必要があります。
認知症介助士
認知症介助士とは、認知症の正しい知識を学び、適切な対処方法を知ることができる民間資格です。認知症介助士の資格取得には、セミナーを受講して検定試験を受ける方法と、独学で勉強して検定試験を受けるという2つの方法があります。
社会福祉学が活かせる就職先・業界
社会福祉学を専攻することで、どんな就職先があるのか気になりますよね。社会福祉学の知識や資格は、福祉施設や行政機関、民間企業など様々なフィールドで活かすことができます。社会福祉学を活かせる就職先・業界をまとめました。
勤め先 | 概要 |
---|---|
福祉施設 | 高齢者や子ども、障がいのある人に必要な生活支援、技術指導を行い、福祉サービスを提供している施設。児童福祉施設、高齢者福祉施設、障害者福祉施設、精神障害者福祉施設などがある。 |
社会福祉協議会 | 全国の自治体に設置された社会福祉法人格の民間団体。生活に困っている人の支援や地域住民の相談支援、福祉サービスの利用案内などを行っている。 |
行政機関 | 市区町村の福祉部局、児童相談所、障害者福祉センターなど。行政機関で働く場合は公務員として採用される。 |
特定非営利活動法人(NPO法人) | 金銭的利益ではなく社会貢献のために活動を行う組織。障害者支援、高齢者支援、児童支援など法人によって様々な活動を行っている。 |
民間企業 | 民間企業に所属するかフリーランスとして契約を結び、産業ソーシャルワーカー、産業カウンセラーなど、相談業務を行う。 |
社会福祉学の知識や資格は、名前の通り「福祉」に関わる業界や職場で活かすことができます。所属する施設や団体によって、支援の対象者は様々。業務内容や必要なスキルも異なります。就職先を選ぶ際は「子どもの育ちをサポートしたい」「障がい者の自立支援がしたい」など、自分はどんな人に対する福祉に携わりたいのかを考えると良いでしょう。
社会福祉学はどんな人に向いている?
「社会福祉学に向いているのってどんな人?」と疑問に思っている人もいるでしょう。自分に社会福祉学を学ぶ適性があるのか、進路を選ぶ前に知りたいですよね。社会福祉を学んだ後は、社会福祉士など福祉に携わる仕事に就く人が多いため、下記のような福祉業界で活躍できる特徴を備えた人が社会福祉学に向いているといえるでしょう。
- コミュニケーションスキルがある
- 地域社会や福祉制度に関心がある
- 心身ともにタフ
それぞれ詳しく解説します。
コミュニケーションスキルがある
社会福祉士は、介護や障がい、生活の困窮など様々な背景を持った人の相談に応じ、信頼関係を築きながら必要な支援につなげていく必要があります。人とのコミュニケーションを欠かすことができないため、コミュニケーションスキルがある人に向いているといえます。また行政や医療、地域関係者など他の職種の人と連携し合って働くことが多いため、チームワークや協調性も必要です。
地域社会や福祉制度に関心がある
社会福祉士学を学ぶには、地域社会や福祉制度に関心があることが大前提です。社会福祉学は、地域社会全体の利益や幸福を考えるものです。そのため広い視野を持ち、個人の幸せだけではなく、社会全体にとっての良い方向を考えられる人が向いています。また社会福祉には高齢者福祉、障害者福祉、保育・児童福祉、母子・寡婦福祉など様々な分野があり、それぞれ法律や制度が異なります。法改正が行われることも少なくないため、常にアンテナを張り、知識をアップデートさせていくことが大切です。
心身ともにタフ
社会的に弱い立場に置かれている人を支援する福祉の現場では、精神的なストレスを感じるシーンも少なくありません。辛い状況にいると、極度に感情的になってしまう人もいるからです。そのためストレス耐性が高い人や、高くなくとも自分自身でストレスへの対処ができる人は福祉職に向いています。また介護職など現場で働く場合は、高齢者や障がい者の身の回りのサポートをしないといけないので、ストレス耐性だけではなく体力も必要です。心身ともにタフな人は、社会福祉学に携わる適性があるといえるでしょう。
社会福祉学はどうやって学ぶ?
社会福祉学に興味があるけど、どうやって学べば良いのか分からないとお悩みの学生さんもいるかもしれませんね。社会福祉学を学ぶには、下記の3つの方法があります。
- 大学や専門学校で学ぶ
- 社会福祉士養成施設で学ぶ
- 独学で学ぶ
各方法について詳しく解説します。
大学や専門学校で学ぶ
社会福祉学を専攻できる大学や短大、専門学校へ進学することで、社会福祉について幅広く学ぶことができます。進学する際は、福祉学部、社会福祉学部、人間福祉学部、医療福祉学部などを選びましょう。福祉系の学部では、社会福祉の理論や法律、社会制度などの座学や福祉施設での実習を通して、全ての人間が人間らしく生きていける社会の実現について考えていきます。また社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士など国家資格の受験資格を得られるカリキュラムが組まれている学校もあります。
社会福祉士養成施設で学ぶ
社会福祉士養成施設とは、社会福祉士を目指すための訓練を行う養成所です。養成所に通うことで、社会福祉国家試験の受験資格を得ることができます。社会福祉養成所には大きく分けて下記の2種類があります。
- 一般養成施設…一般の大学・短大を卒業した人が対象
- 短期養成施設…福祉系の大学・短大を卒業した人が対象
福祉に関係ない一般の大学・短大を卒業した場合でも一般養成施設に入学することで社会福祉士になるための専門知識やスキルを身に付けることが可能です。なお短大卒の人が入学するためには、相談援助員としての実務経験も必要になります。
福祉系の大学・短大で基礎科目を履修して卒業した人は、短期養成施設で勉強することで、社会福祉士を目指すことが可能です。
独学で学ぶ
社会福祉士学に関するテキストは一般の書店でも販売されているため、独学で勉強することも可能です。しかし社会福祉士などの国家資格は、大学や養成施設の卒業が受験資格になっているため、独学だけでは取得できません。そのため、将来的に国家資格を取得したい人は、学校に通うことをおすすめします。
社会福祉学を学べる学校の選び方
社会福祉学を学べる学校はたくさんあるため、どこの学校が良いのか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。学校を選ぶ際は、下記の3点を意識してみると良いでしょう。
- カリキュラムが自分の学びたいこととマッチしているか
- 実習があるか
- 資格取得のサポート体制があるか
それぞれのポイントをチェックして、自分にとってベストな学校を選びましょう。
カリキュラムが自分の学びたいこととマッチしているか
まずは、カリキュラムが自分の学びたいこととマッチしているかを確認しましょう。社会福祉学自体を学べる学校は全国に数多くありますが、特色やカリキュラムの内容は学校ごとに異なります。そのため各学校ではどんなことを学べるのかを事前に把握しておくことが大切です。入学後に後悔しないためにも下調べをしっかり行い、自分が学びたい内容に合ったカリキュラムの学校を選ぶようにしましょう。
実習があるか
実習があるのか、どんな施設で実習ができるのかも学校選びの大切なポイントです。資格取得や就職の前に実際の現場を知ることで、自分に合うかどうかを判断できるでしょう。福祉系の学校では、相談援助の実習や福祉施設でのインターンシップなどがカリキュラムに組み込まれているところが多くあります。実習を経験しておくことで、就職後に即戦力として活躍できますよ。
資格取得のサポート体制があるか
学校を選ぶ際は、資格取得のサポート体制があるかどうかも必ずチェックしておきましょう。社会福祉士や介護福祉士など、社会福祉学を活かせる仕事は国家資格が必要な職種も多いです。学校によっては希望する国家資格ごとに試験対策を受講できるところもあります。サポート体制の有無は国家試験の合格率にも関わるため、資格取得を考えている人は資格対策について確認した上で、進学先を選びましょう。
学校選びなら進路ナビをチェック
全ての人が自分らしく幸せに生きるため、政策や制度、援助のあり方を研究する「社会福祉学」。社会福祉学を学ぶことで、社会福祉士や介護福祉士、精神保健福祉士など国家資格の取得も目指せるので、将来就く職業の選択肢も広がります。「進路ナビ」では社会福祉学を学べる学校を紹介しています。しかし各学校で実際にどんなことを学べるのかは、それぞれの専攻やカリキュラムを調べる必要があります。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うことで、各学校の詳しいパンフレットを取り寄せる事が可能です。また「進路ナビ」では、「興味のある分野」や「通学希望エリア」を選ぶだけで、進路アドバイザーから無料でおすすめの学校情報をお届けします。
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