将来の進路を考えている学生さんの中には、会計学に興味を持っている人もいるのではないでしょうか。会計学は、企業の経営や監査、官庁、自治体など幅広い分野で必要とされる重要な学問です。しかし会計学に興味はあっても、具体的にどんなことを学ぶのか、どんなスキル・資格が身につくのかは知らないという人も多いかもしれません。会計学を学ぶためには、これからどんな進路を選択すれば良いのかも気になりますよね。
本記事では、会計学に関心を持っている学生さんに向けて、会計学とは何かをはじめ、会計学を学ぶ方法や取得できる資格、学んだスキルを活かせる就職先を紹介します。ぜひ、高校卒業後の進路選びの参考にしてみてくださいね。
会計学は「お金」について学ぶ学問
会計学とは、企業や組織を運営するために欠かせない「お金」について学ぶ学問です。具体的には、下記のような内容を勉強します。
- 経営に必要なお金の計算をどのように行うか
- お金の動きをどのように評価するのか
- 今後の予算をどのように組んでいくか
会計学を学ぶことで、企業や組織が保有する資産の動きを読み取れるようになり、「経営が上手くいっているのか」を判断できるようになります。また今後のお金の使い方について考えたり提案したりするスキルも身につくでしょう。会計学を学んだ人は、公認会計士や企業の経理担当など、企業や組織の財務状況をチェックする職業に就く人が多いです。
会計学では、企業や組織のお金の流れを計算・記録することを学ぶため、経営そのものに関わる学問だといえるでしょう。
会計学を学ぶ方法
「会計学を学ぶには、どんな進路を選べば良いの?」と疑問に感じている学生さんもいるでしょう。大学や短大、専門学校で会計学を専攻すると、会計学に関する知識を体系的に学ぶことができます。ここでは、会計学を学ぶ方法として、大学・短大に進学するケースと専門学校に進学するケースに分けて解説します。
大学・短大で学ぶ
大学・短大で会計学を学ぶ場合は、経営学部や商学部に進学すると良いでしょう。このような学部では、帳簿記入スキルの「簿記」をはじめ、財務会計、管理関係など会計学を体系的に学べるカリキュラムが編成されているので、専門的に勉強することが可能です。学科によっては、会計学について幅広く学んだ後に、一人ひとりの目標に応じてより学びを深める分野を選択することができます。また国家試験対策など、関連資格の取得支援も実施しています。
専門学校で学ぶ
専門学校に進学する場合は、公認会計士や税理士を目指せる学科・コースを選択すると良いでしょう。このような学科・コースでは、これまで会計について学んだことがない人でも公認会計士や税理士を目指せるカリキュラムが用意されています。簿記の基礎からスタートし、国家試験合格に直結する授業だけを受けられるので、資格取得を目指して会計や経営について学びたい人にはぴったりです。
「進路ナビ」では、興味のある学問から学校を探すことが可能です。会計学に興味がある方は、まずはこちらを参考に進路について考えてみてください。
会計学を学んで取得できる資格
会計学は幅広い分野で必要となる学問です。会計学を学んで取得できる資格は国家資格から民間資格まであり、就職に役立つものも数多くあります。
ここでは、下記の5つの資格について詳しく紹介します。
- 公認会計士
- 税理士
- 日商簿記検定
- FP(ファイナンシャル・プランナー)
- US CPA(米国公認会計士)
将来どんな業務に携わりたいか、どんなキャリアを歩みたいかを考えて取得を検討してみましょう。
公認会計士
公認会計士とは、「会計」に携わる資格の中でも最高峰の国家資格です。会計の専門家として、企業の監査や税務業務のサポート、経営コンサルティングを行うことが主な仕事。公認会計士は医師、弁護士と並ぶ超難関の資格ともいわれていますが、その分活躍できるフィールドは広く、将来性もあり、高年収が期待できます。合格すれば、税理士・行政書士に無試験で登録を受けることも可能です。受験資格の制限は特にありませんが、合格するためには数年かけて学習する必要があります。
税理士
税理士とは、税務・会計のプロフェッショナルとして、税務や会計に関する業務やコンサルティングを行う国家資格です。税務に関わることが許されている唯一の資格なので、税理士だけができる独占業務も多く、社会貢献度も高いでしょう。試験は難関ですが、1科目ずつ受験が可能であり、一度合格した科目は生涯有効なため数年かけて取得する人も少なくありません。科目によって受験資格が定められており、指定された学歴・職歴・資格のいずれかをクリアする必要があります。
日商簿記検定
日商簿記検定は日本商工会議所が実施している民間資格。簿記に関する検定の中でも最も有名な資格です。日商簿記検定には簿記初級、簿記3級、簿記2級、簿記1級があり、レベルに応じて受験することができます。初級試験はWeb上で受験でき、3級、2級の試験は毎年3回実施されています。簿記資格は受験資格の制限がないため、在学中でも受験が可能です。3級・2級を取得しておくと経理担当や金融機関に就職する際に有利になることもあります。
FP(ファイナンシャル・プランナー)
FP(ファイナンシャル・プランナー)とは、個人の「お金」に関する悩みのサポート・アドバイスを行う資格です。税金、投資、住宅ローン、教育、老後、相続など身近なお金に関するエキスパートとして、家計のバランスを分析したり見直しを提案したりします。FPには、国家資格の「FP技能士(3〜1級)」と民間資格の「AFP/CFP」があり、それぞれ段階的に受験していくことができます。資格を取得しておくことで、就職に有利になるだけでなく、自身のライフプラン作成にも役立つでしょう。
US CPA(米国公認会計士)
US CPA(米国公認会計士)とは、米国の正式な公認会計士資格です。国際ビジネス資格の最高峰に位置づけられる会計資格で、業務内容は多岐にわたります。企業の海外進出がますます盛んになっている現在、外資系企業だけではなく日本企業でのニーズも上昇中。日本での試験は東京と大阪で実施されています。4年制大学を卒業しており、会計単位とビジネス単位を一定数以上取得していれば受験することが可能です。試験内容は全て英語なので、会計知識だけでなく英語力も必要になります。
会計学が活かせる就職先・業界
会計学を学んで取得できる資格は様々な種類があることが分かりましたね。そんな会計学が将来どんな仕事につながるのか、気になっている人も多いでしょう。会計学を活かせる就職先・業界は下記のように多岐にわたります。
- 企業の財務・会計部門
- 営業・販売
- 監査法人
- 公認会計士・税理士
- 会計コンサルタント
- ファイナンシャル・プランナー
- 国税専門官、財務専門官などの国家公務員
それぞれどんな仕事なのか、詳しく解説します。
企業の財務・会計部門
会計学の知識は、企業の財務・会計部門で活かすことができます。企業の経営にはお金の管理が必要不可欠。財務・会計部門では、伝票の作成、帳簿への記入などお金に関する日々の業務をはじめ、銀行からの融資や株式発行による資金調達、投資などの資金運用、予算管理などを行います。会計学で学んだ専門的な知識を使って働くことができるでしょう。
営業・販売
意外かもしれませんが、会計学を学んでおくと、営業や販売など会計と関わりがなさそうな場所でも活躍することができます。営業や販売は売上を伸ばす役割があり、お金の流れを正しく把握できる人はそのスキルを活かして働くことができるためです。会計学を知っていれば経済の流れや業界の動向を掴むこともできるので、成績を伸ばすことができるでしょう。
監査法人
監査法人とは、会計監査を目的として設立された法人のことです。会計学を学び、公認会計士の国家試験に合格した人の9割以上が、監査法人に就職しています。監査法人の公認会計士は、企業の財務諸表が適正かどうかをチェックし、内容に誤りがないことを保証します。企業の透明性と健全性を保つために重要な役割を担います。
参考:公認会計士試験合格者の意識や実態について
公認会計士・税理士
公認会計士や税理士も会計学を学ぶことで就ける職業です。公認会計士の資格を取得後は、監査法人に就職する人が多いですが、その後のキャリアパスはコンサルティング企業へ転職したり、法人や事務所を設立したりと様々です。税理士も、税理士事務所で経験を積んだ後は、独立開業したり企業内税理士を勤めたりと幅広いキャリア選択があります。両者とも専門知識を活かして活躍の場を広げていくことができます。
会計コンサルタント
会計学の知識があれば会計コンサルタントとして働くこともできます。会計コンサルタントは、企業の会計や財務を分析し、改善策を提案したり、投資のアドバイスをしたりと、お金に関するコンサルティング業務を行います。クライアントの課題を解決することが求められるため、会計学の知識だけではなく、論理的思考能力や問題解決能力、コミュニケーション能力なども必要です。会計コンサルタントになるには、公認会計士や税理士、US CPA(米国公認会計士)の資格が求められることが多いでしょう。
ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャル・プランナーも会計学の知識を活かすことができる仕事の一つ。年金、保健、税制、投資などのお金に関する知識をもとに、個人に対してアドバイスを行います。ライフプランやキャッシュフロー表を作成したり、保険商品を紹介したりと業務は多岐にわたります。金融業界や不動産業界など活躍できる業界は幅広く、フリーランスとして働くことも可能です。
国税専門官、財務専門官などの国家公務員
会計学を学ぶことで、国税専門官や財務専門官などの国家公務員として働くこともできます。国税専門官は国税事務を第一線で担い国税局や税務署で税務調査を行います。財務専門官は財政・金融のプロフェッショナルとして財務省や金融庁と地域の橋渡しを行います。いずれも就職するためには、国家公務員試験に合格する必要があります。
会計学を学ぶのに向いている人
これまで会計学の学び方や資格、就職先について紹介してきました。次に、会計学を学ぶのみ向いている人や適正について紹介していきます。
会計学を学ぶのに向いている人の特徴は下記の通りです。
- 几帳面な人
- 数字が好きな人
- 正義感の強い人
- 勉強が好きな人
- 自分で考える力のある人
それぞれの特徴について、解説します。
几帳面な人
几帳面な性格の人は会計学に向いているでしょう。会計学はお金を取り扱うため、物事を慎重に進めていく力や正確に作業をこなすスキルが求められます。経理などの仕事についた際も、大雑把すぎると仕事のミスが増えてしまうでしょう。会計学は、真面目にコツコツ取り組める人に向いている学問です。
数字が好きな人
会計学を学ぶには、数字が好きであることも大切です。会計学では、様々な計算や数字の確認など日々あらゆる数字と向き合わなければなりません。計算に関してはExcelや経理ソフトで処理することができるので、必ずしも計算が得意である必要はありませんが、数字に苦手意識があると、学ぶことが辛くなってしまうかもしれません。
正義感の強い人
会計学の知識を活かせる公認会計士や税理士は、会社の経理が正しく行われているかをチェックすることが仕事です。第三者の立場で監査し、万が一不正や誤りがあれば毅然とした態度で指導しないといけません。公正性を大切にする正義感の強い人は、会計学を学ぶことで社会に貢献できる人材になれるでしょう。
勉強が好きな人
将来、公認会計士や税理士を目指すのであれば膨大な勉強時間が必要になります。企業の経理担当として働く場合も、法令や会計基準など経理関連のルールは随時変更されるため、常に新しい情報を学び続けなければなりません。勉強することが苦にならない人は、学校で学んだ会計学の知識を将来の仕事に活かすことができるでしょう。
自分で考える力のある人
会計学を学ぶには、自分で考える力も必要です。会計学では、単に数字を確認したり計算したりするだけではなく、その数値からどのような課題があるのか、どのような改善策を提案できるのかを考えないといけません。経営やビジネス、社会情勢など幅広い視野をもち、自分で考えることができる人は会計学に向いているでしょう。
会計学と関連性のある学問
会計学に興味がある学生さんの中には、他にも会計学に関連する学問を知りたい人もいるでしょう。
ここでは会計学に関連する学問として、下記の5つを紹介します。
- 経営学
- 商学
- 経済学
- 統計学
- 数学
どんな学問なのかを知り、進路を考えるきっかけにしてみてくださいね。
経営学
経営学は、企業や組織の経営・管理について学ぶ学問です。人事や労務管理、商品開発、広報など企業活動について研究します。企業や組織の会計・財務に特化した会計学と違い、ビジネス活動の仕組み全般を学ぶのが経営学です。
商学
商学は、商品の売買や流通などの商取引の仕組みを学ぶ学問です。商品開発〜販売までの仕組みや生産者・販売業者の活動、マーケティングなどについて学びます。経済活動状況を計算・記録し情報化する会計学も、商学の一部といえるでしょう。
経済学
経済学は、モノやお金、サービスの流れの仕組みを学ぶ学問です。個人や家庭、企業、国など世界全体の経済システムの構造を学びます。複雑な経済理論を学び、分析することで、世の中の人々のより良い暮らしを実現するにはどうすれば良いかを考えていきます。
統計学
統計学は、データからその特徴や規則性・不規則性、データ同士の関連性を分析する学問です。統計的な分析から得られた情報は、経済現象の解明や企業の経営、マーケティングにも活用されるため、統計学の知識は会計学や経営学などにおいても重要です。
数学
数学とは、数・量・図形などの構造を分析し、理論・公式・関数などを導き出す学問です。科学・技術の発展には不可欠な学問といえるでしょう。会計学の分野とは少し異なるイメージがありますが、統計学と同じく、経済現象について研究するには数学的知識・思考体系も重要な要素です。
会計学を学べる学校の選び方
企業や組織の運営に必要不可欠な「お金」について勉強する会計学。会計学を学ぶことで、公認会計士や税理士、企業の経理担当、ファイナンシャル・プランナーなど将来就く職業の幅も広がります。
「進路ナビ」では会計学を学べる大学や専門学校を紹介しています。ただ、実際にどんなことを学べるのかは、各校の専攻やカリキュラムを調べてみないとわかりません。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うことで、各校の詳しいパンフレットを取り寄せる事ができます。
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