生物学とは?専門分野や面白さを徹底解説!

「生命の科学」と呼ばれる生物学は、私たちの身の回りにあるすべての生き物を対象とした学問です。もちろん人体も例外ではなく、生命の不思議である出産や薬物の危険性などにも焦点を当てるため、非常に興味深い学問だといえるでしょう。このページでは、「生物学を学びたい!」と思っている高校生へ向けて、生物学で学べることや面白さ、大学・専門学校卒業後の進路や就職先などを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

生物学とは

生物学は、植物、動物、微生物などさまざまな生命に起こる現象を研究する学問です。分子レベルの非常に小さなミクロな世界を研究する分野から、地球に存在する生き物の生態や生命現象の仕組みを大きなマクロな視点で研究する分野まで、命あるものすべてを研究対象としています。

生物学の面白さ

生物学の研究対象である生き物は、未だ解明されていない部分も多く、新しい研究分野を切り開ける可能性があるという面白さがあります。記憶のメカニズムや生物が子孫を残す理由など、「なぜ?」「どうして?」にとことん向き合えるのが魅力です。

生物学で学べる主な専門分野

ひとくちに「生物学」と言っても、学べる分野は非常にたくさんあります。ここからは、それぞれの分野で学べること、研究テーマなどを解説します。

生理学

生理学は、広範囲にわたって生命現象を解き明かす分野です。人体をはじめとした生物における体内のメカニズムや機能などを学びます。例えば、人体を構成している各要素(組織や器官、細胞など)が体内でどのような活動を行っているかを解き明かします。化学や物理だけでなく、応用微生物学や医学など、さまざまな観点から理解を深めていきます。

生化学

生物現象を分子レベルで科学的な方法によって解明していくのが生化学です。生物をより科学的な視点から研究していく学問で、医学、薬学、歯学、農学などの学問を究めていきます。具体的には、ホルモンの働きや薬の代謝、副作用のメカニズムがこの分野に当てはまるでしょう。

遺伝学

DNAなどの分子レベルはもちろん、生物の進化法則や染色体の構造の異常など遺伝現象の解明を目的としている分野です。また、遺伝子はあらゆる病気とも深い関わりがあり、がん研究や神経細胞などの研究を行います。

発生学

細胞分化の仕組みを研究することで、生き物の誕生から進化までの謎を解明する分野です。人間の発生についても学べる分野で、遺伝学や進化系統学も組み合わせて、人体や生物構造の成り立ちを理解します。

生態学

生物はさまざまな形で周辺環境と関わりを持ちつつ、他の生物とも相互作用しながら生活をしています。何千万とも言われる生物種が生活する上での法則を解き明かしていくのが、生態学です。具体的には、地球温暖化などの環境問題が進むと生態系はどのように変化するのか、外来種による影響などを研究します。

(動物)行動学

行動学は「行動生物学」、「動物行動学」とも呼ばれており、その名の通り生物の行動を神経行動学や動物心理学、脳生理学といったあらゆる角度から解明していく学問です。「行動とは?」といった基本的な部分から、本能的な行動、社会的な行動、愛着、母性のようなテーマなども行動学に含まれます。

進化系統学

進化系統学とは「進化学」と「系統学」を組み合わせた分野で、動植物の進化や系統を総合的に解明します。生物の進化によって、どのような系統に分かれてきたのかその歴史を研究する学問です。生物の始まりを読み解く古生物学や、生物の暮らしと環境の関係性を読み解く生物地理学とも関わりが深いでしょう。

生物工学

生物学の知見をベースに、実際の社会に役に立つ技術を開発したりする分野を意味します。例えば、農作物の品種改良や遺伝子組み換え技術、クローンの技術などがそれに当たります。生物工学で得られる学びや研究成果は、実社会で役に立つ技術を生み出すことにつながるでしょう。

生物学を学べる主な学部・学科

大学や専門学校で生物学を学びたいと思っても、どの学部・学科を選ぶか迷ってしまう人もいるでしょう。理学部を想像するかもしれませんが、その他にも理工学部、生命科学部、生命環境学部、薬学部でも生物学を学べます。ただ、学校によって学部の名前や学科の分け方が異なるため、必ず大学のHPや進路サイト等で、学べる分野やカリキュラムを前もって確認しておきましょう。

理学部

理学部は、自然科学全般を学ぶ学部です。生物学科や生命科学科などがあり、自然界に存在する変わることのない真理を追究し、自然界の基本原理や法則、生命現象の解明を研究します。研究対象となるのはモデル生物です。モデル生物には単細胞生物、多細胞生物、植物の3種類が存在します。単細胞生物では酵母や大腸菌など、多細胞生物ではマウスやショウジョウバエなど、植物ではイネやミヤコグサなどが挙げられます。農学部も自然科学やモデル生物を使った研究が行われますが、理学部と異なるのは生命現象の解明を目的としているかという点です。また、理学部は農学部と比べて、より基礎的な研究を行います。

理工学部

理工学部は、その名の通り理学と工学の両方を学べる学部です。各学校にもよりますが、生物学科や生命生物科学科、生物科学科などがあり、どれも生物化学における基礎的な仕組みから専門性の高い研究まで幅広く学べるでしょう。また、科学的な視点から生物を読み解く学科のため、科学技術を駆使して医学や環境、食糧資源といった人類の将来を考える上で欠かせない課題とも深く関係しています。

生命科学部

生命科学全般を学ぶ学部で、学校ごとに学科名は異なりますが生物学科や生物科学科、生命生物科学科などがあります。生命の本質を分子レベルで研究することで、基礎科学から社会に貢献する技術を学ぶことができるでしょう。生物学研究者だけでなく、バイオ研究者・技術者や環境分析技術者を目指す人は、特に面白さを感じられる学部・学科です。

生命環境学部

生命と環境をテーマにした学部であり、主に生命科学科、農業生命科学科、生命分子科学科などに分けられます。生命科学科とは、科学の観点から人の健康を研究するのが特徴です。細胞や遺伝子情報はもちろん、化粧品や医療なども含めたバイオサイエンスを追究できます。農業生命科学科は「食糧・環境・生命」をテーマとしており、豊かな環境共生社会をつくるための知識と技術を学べるのがポイントです。生命分子科学科は、分子レベルの研究を通じて生命現象を科学で解き明かす学科となっています。

薬学部

薬学部は、主に薬品に関わる研究を行いますが、基礎薬学と臨床薬学という2つの分野に分けられます。基礎薬学では、薬を作ることを目的として、化学・生物学・物理学などの知識と組み合わせて薬の開発について、開発に必要な知識を学びます。臨床薬学では、薬の調合や投薬といった、医療現場で正しく薬を使うための知識を学ぶという違いがあります。

進路ナビでは、生物学を学べる大学や専門学校を紹介しています。以下のページから大学や専門学校を探してみましょう。

生物学が学べる大学・短大一覧

環境・バイオテクノロジーが学べる専門学校一覧

大学・学部選びのポイント

さまざまな大学・学部から知識を習得できる生物学。選択肢が多いのは魅力的ですが、反対に「どの大学・学部を選択すれば良いか迷ってしまう…」ということも。入学してから「同じ生物学でも学部や学科によって学べる内容が違うことを知らなかった…」と後悔しないよう、大学・学部選びのポイントをチェックしておきましょう。

研究テーマ

大学や学部によって研究対象が植物、動物、人間などに分けられます。また、生物学のなかでも遺伝学や生態学、発生学など研究テーマも異なるため、自分が学びたい分野なのかをしっかり確認することが重要です。さらに、生物学は観察や実験も多いので、独自の研究フィールドを確保している大学かどうかも大学選びのポイントとなります。

カリキュラム

大学・学部選びでは、カリキュラムも重要です。生物学の授業は、一般的に1.2年次では基礎理論を学び、3年次以降に研究テーマを決めるという流れとなっています。基礎理論はどの大学でも同じような内容を学ぶことになりますが、3年次に入ると研究できるテーマが変わってくるでしょう。生物学は観察が基本で、自身で選択した生物モデルを観察した上でレポートを提出しなければなりません。学びたいテーマと異なる学部を選んでしまった場合、学部や学科を変更するのは簡単ではないため、自分のやりたいことがカリキュラムに取り入れられているかをしっかりと確認してください。

生物学で学んだ知識を活かせる免許や資格

せっかく生物学を学ぶなら、その知識や技術を生かせるシーンで活躍したいと思うでしょう。そのためには、知識を活かせる免許や資格を取得するのが重要です。ここからは、生物学に関する免許や試験の概要などを解説していきます。

教員免許状

教員養成課程に登録した上で決められた単位を取得すると、卒業とともに中学ならびに高等学校理科教諭の一種免許状をもらえます。また、大学院でも所定の単位を取得すれば、中学校ならびに高等学校理科教諭の専修免許状をもらうことが可能です。

臨床検査技師

臨床検査技師として活躍するために必要な単位を取得したのち、病院での臨地実習を終えることで、国家試験を受験する資格を得られます。試験科目は医用工学概論や公衆衛生学、臨床検査医学総論を含む9科目です。令和4年度の臨床検査技師国家試験の合格率は77.6%と高めですが、試験は1年に1度しか実施されないため、在学中から計画的に勉強する必要があるでしょう。
参考:キャリアガーデン

健康食品管理士

健康食品などの効果や安全性、医薬品との相互作用や取り扱い方法に関する知識を持つのが健康食品管理士です。食品や健康食品を安全に、そして科学的根拠をもとに扱う能力が求められます。基礎医学や食品学、食品衛生学などの教育を受けた人が対象となります。筆記試験またはWeb試験の合格・登録によって資格取得ができますが、5年ごとに資格の更新手続きが必要です。

バイオ技術者認定試験

1994年からスタートしたバイオ技術者認定試験は、国内で最も長い歴史を持つバイオ技術関連の資格試験です。資格には初級・中級・上級の3種類があり、初級は高等学校在校生でも受験可能です。中級や上級は、大学や専門学校でバイオ技術に関する課程を修了するなどの条件をクリアすることで受験資格を得られます。

食品衛生責任者

食品衛生責任者は、講習を受けることで資格を取れます。また、例外として大学にて定められた課程を修了した人は、講習が免除されることがポイントです。飲食店で掲げられている「食品衛生責任者」のプレートは、この資格取得後に入手できます。

危険物取扱者

危険物取扱者とは、その名の通り危険物の取り扱いや保安の監督、定期点検をするために必要な資格です。この資格には甲種・乙種・丙種の3種類があり、乙種と丙種は誰でも受験できます。一方で、甲種は大学などで化学に関する科目を修了した人や、大学にて化学に関する科目を15単位以上修了した人が対象です。資格取得後は、化学工場やガソリンスタンドなどの施設で活躍できます。

環境計量士

将来的に環境保全に関する職業に就きたいという人は、環境計量士の資格を取っておくのがおすすめです。環境測量士は地球環境保護を目的に、大気の汚染物質や騒音などの大きさを測る専門性の高い国家資格です。環境測量士といっても、この資格には濃度関係の環境測量士と騒音・振動関係の測量士の2種類があり、どちらを取るかによって従事できる仕事内容が異なります。

生物学を専攻した人の卒業後の進路・就職先

大学や専門学校で生物学を専攻した人の卒業後の主な進路・就職先として、民間企業へ就職・教職・研究職などが挙げられます

民間企業へ就職

数ある民間企業の中でも生物学を専攻した人の卒業先の進路としてバイオテクノロジー関連企業の研究所は人気が高いです。理系研究職を志望する人の就職先の代表でもあり、地道な研究を通して新製品や新素材の開発を行います。新しい製品を生み出す苦労は大きいですが、その分市場に送り出した時の喜びも非常に大きいです。

教職

大学や短大で教員免許を取得し、高等学校や中学校などの理科の教員を目指す人も多いです。教職の仕事は授業だけでなく、授業準備や生徒の学習評価・成績処理、進路指導や学校行事の準備・運営なども含まれます。
なお、教員免許を取得するには大学にて必要な科目を修了する必要があるため、取り忘れがないよう履修計画を前もって立てておきましょう。また、採用枠が埋まっているなどの理由によって、卒業後すぐに中・高校教諭になれるとは限りません。

研究職

大学院を修了したのち、研究機関などで研究職を目指すこともできます。研究職は新しい発見を得られるという魅力がある反面、一進一退を繰り返すので地道な努力や根気が必要になるでしょう。そのため、研究職を目指す場合は、自分の研究したいテーマや分野をできるだけ早めに明確に定めましょう。ただし、企業における研究職の求人は大学院卒業者を対象としているケースが多いため、国公立の大学院進学も視野にいれても良いでしょう。

まとめ

動物や植物などの生命に関することを学べるのが生物学です。分子レベルの非常に小さな世界から地球規模にわたる大きな世界まで、身の回りのありとあらゆる生物や事象を対象としているのが特徴です。特に、人体や動植物に関する生態や行動などは、日々の生活に身近であり、人によっては興味を持ちやすい分野かもしれません。生物学専攻で、大学・大学院卒業後は「興味関心のある事象の研究を深めたい」「教員として生物に関わる教育をサポートしたい」といった様々なモチベーションで、教員や企業への就職、研究職に就く人など将来の選択肢も様々です。進路ナビでは、生物学を学べる大学や専門学校を紹介しています。生物学に関する知識を生かせる資格や免許を取得するための知識を身に着けられるので、以下のページから大学や専門学校を探してみましょう。

生物学が学べる大学・短大一覧

生物学が学べる専門学校一覧

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