宇宙工学とは?得られる知識や活かせる将来の進路を解説!

人類の未知の領域である宇宙への憧れを抱く学生にとって、宇宙についてより深く知りたい・学びたいと考えている人は多いでしょう。ただ、宇宙工学といっても、「どのような学問なのか?」「卒業後の進路はどのようなものなのか?」具体的にイメージするのは難しいかもしれません。本記事では、宇宙工学を学びたい学生に向けて、具体的な学問に関することや卒業後の進路について詳しく解説します。

宇宙工学は「宇宙で利用できる理論や技術を研究する学問」

宇宙工学とは、地球の大気圏外、宇宙を飛行する宇宙機(ロケット・人工衛星・宇宙ステーションなど)のための理論と技術を研究する工学分野です。具体的には、以下の4つの分野から成り立っています。

宇宙工学を学ぶことで、宇宙空間での飛行や活動に必要な知識や技術を身につけられます。宇宙飛行士やロケット開発者など、宇宙に関わる仕事に就きたいと考えている学生にとって、宇宙工学は最適な学問と言えるでしょう。

宇宙工学を学ぶために必要な学問4つ

宇宙工学を学ぶためには、以下の4つの学問が必要です。

宇宙工学を学ぶために必要な学問学ぶ内容
流体力学空気抵抗や浮力などの空気力学、または液体や気体の流動に関する力学
構造力学航空機や宇宙機の設計・構造に関する力学
推進工学ロケットの飛行に必要な推進力を研究
航行・制御工学安全な航行・操縦性能に関する学問

具体的に何を学ぶのかイメージできるように、詳しく解説していきます。

流体力学

流体力学は、空気抵抗や浮力などの空気力学、液体や気体の流れに関する力学を学ぶ学問です。空気や水などの形を変えながら移動する流体は、航空機や宇宙機の飛行に大きく影響を及ぼします。そのため、流体力学では、流体が関係する様々な物理学的・工学的問題についての研究を行っているのも特徴です。研究方法は大きく分けて、以下の2つが挙げられます。

例えば実験的手法では、航空機の翼のまわりにある空気の流れと空気力の関係や、ジェットエンジンやロケットエンジンなどに関わる噴流現象に関する研究を行います。流体の流れをよく理解するために、新しい方法で流れを測り、流れを可視化する方法を開発します。流体力学だけでなく、他の宇宙工学の分野の知識も活用した新しい研究も活発に行われているのもポイントです。宇宙と地球を行き来できる飛行機の設計や、太陽系小天体を対象にした観測天文学なども研究対象となっています。

構造力学

宇宙工学における構造力学は、機体の構造や設計について学びます。航空宇宙分野の構造物は、外からの力に対する強さはもちろんのこと、軽量であることが求められます。そのため、主に以下の内容を学習します。

柔軟マルチボディ・ダイナミクス理論に基づいて、膜構造物などの柔軟構造物の研究を行っています。また、理論の正しさを確かめるために、地上の実験や小型な衛星を用いた軌道上実験も行っています。材料分野は、航空宇宙分野で使用される軽量で信頼性の高い部材の製造方法を開発する学問です。例えば、チタン合金やアルミニウム合金にセラミックスなどの強化材を添加した金属を作製し、強度や耐摩耗性を向上させています。構造学では、柔軟構造物の動き方を解析する理論や、軽量で高強度な材料の開発を研究しています。

推進工学

推進工学は、航空機やロケットなどの推進装置の研究を行っている学問です。高速度カメラで撮影したり、コンピュータで計算したり、理論を使ってエンジン内部の空気の流れや熱の動きなどを詳しく分析します。その結果を基に、エンジンの性能を予測し、より効率的なエンジンの設計を目指します。また、航空機や自動車のエンジンには、良質な金属粉が必要です。そのため、液体金属を細かい粒子に分けたり、物質の状態が気体・液体・固体と形を変えたりしながら、より強度が高く耐久性のある金属粉の開発にも取り組みます。

航空・制御工学

航空・制御工学とは、航空機や宇宙船などの飛行や制御について研究する学問です。航空工学は、航空機の速度や燃費などの基本性能の向上や、衝突回避や対空性などの安全性の向上を研究します。制御工学は、機械やシステムの制御に関する研究をし、設計・開発・性能評価・安全性の確保を追求します。例えば、飛行機やヘリコプターなどの航空機から人工衛星やロケットなどの宇宙機まで、私たちの生活に身近な技術に広く関わっています。航空・制御工学は、航空機や宇宙機の需要が増加することや、自動化への進展が見込まれることから、今後ますます発展することが期待される学問です。

宇宙工学と関連性のある学問

宇宙工学は、宇宙空間で活動する機器やシステムの設計・製造・運用に関する技術を研究するため、流体力学・構造力学・推進工学・航空・制御工学の知識が必要です。この4つの学問に加えて、宇宙工学と関連性のある学問として、以下のようなものが挙げられます。

数学・物理・化学は、宇宙工学の基礎となる学問です。宇宙空間での運動やエネルギー、材料の性質などを理解するために欠かせません。ライフサイエンスは、宇宙空間での生命活動に関する学問です。宇宙飛行士の健康管理や、宇宙空間での植物や動物の育成に関する研究が行われています。天文学は、宇宙空間の構造や天体の運動、物理法則などを理解し、宇宙探査の技術開発に役立つ学問です。CADは、コンピュータ上で設計を行うツールで、三次元モデルを簡単に作れるため、宇宙機の形状や構造を検討する際に欠かせません。このように、宇宙工学はさまざまな学問と関連しています。宇宙工学を学ぶと、宇宙に関する幅広い知識と技術を身につけられるでしょう。

宇宙工学で得られる資格3選

宇宙工学を学ぶことで取得できる資格を紹介します。宇宙開発技術者になるために、特に必要な資格はありませんが、宇宙工学を通して、以下の3つの資格を取得できます。

教員免許中学校教諭一種(数学)・高等学校教諭一種(数学、工業)

宇宙工学を学ぶ際には、数学や物理などの基礎的な学問が必須となります。数学や物理などの基礎的な学問は、中学校や高等学校の教員免許を取得するために必要な知識の一部です。そのため、宇宙工学を学ぶ中で、教員免許を取得するための単位を取得できるでしょう。また、高等学校教諭一種免許(工業)は、59科目の教科を担当できる幅広い免許です。機械・電気・化学・建築・工芸・土木・デザインなど、工業系のさまざまな分野の知識と技術を身につけられます。

学芸員

宇宙工学を学ぶと宇宙に関する知識や技術を身につけられ、博物館や科学館などの学芸員として活躍できます。学芸員になるためには、文部科学省令で定められた科目を履修しなければいけません。また、博物館によっては修士の資格を応募条件としている場合もあるので、学芸員を目指す人は大学院への進学もおすすめです。

航空特殊無線技士

航空特殊無線技士は、無線機器の操作や保守、整備を行うための国家資格です。宇宙工学を学ぶ際には、無線工学に関する知識や技術を身につける必要があるため、航空特殊無線技士資格を取得するための単位を取得できます。ただし、大学によって取得できる資格が異なるため、あらかじめどのような資格が取れるのか資料を取り寄せて確認するのがおすすめです。「進路ナビ」の学校検索機能を利用して資料請求を行うと、各校のパンフレットと取得できる資格の情報を入手できます。大学や専門学校を探す際には、以下のページから簡単に検索できます。

宇宙工学で学んだことを活かせる進路・業界は?

宇宙工学を学んだ後の実際の就職先や仕事内容がイメージできない人向けに、卒業後の就職先についてご紹介します。宇宙工学を学んだ人は、主に以下の職種・業界で活躍しています。

宇宙工学を活かせる職場として、まず宇宙業界や航空業界での活躍が期待できます。例えば、大学卒業後に大学院に進学し、JAXAで研究職に従事する人や、整備士やパイロットとして航空業界に就職する人もいます。また自動車業界など、自動車の開発・製造だけではなく、自動車の安全性を高めるエンジニアや二酸化炭素の排出量を削減する環境エンジニアなど、宇宙工学の知識を活かせる職種・業界が幅広いのも魅力です。

他にも、在学中に宇宙工学に関わる資格を取得し、教員や学芸員など教育や文化・芸術分野への就職も手です。もちろん、宇宙工学という学問をより追究していきたい人は、大学院への進学もおすすめです。宇宙工学は、私たちの暮らしに欠かせない機械や技術に関わっているため、その知識は宇宙や航空業界だけではなく、様々な業界でも活かせるでしょう。宇宙工学に興味がある人・これから学びたいと思っている人は、ぜひこれらの業界や職種を参考に進路を検討してみてください。

宇宙工学が向いている人の特徴4つ

宇宙工学が向いている人の特徴は、以下の4つが挙げられます。

宇宙工学を学び始めてから「向いていなかった」とならないように、この記事を参考にしてください。

理系分野の勉強が好きな人

宇宙工学は、数学・物理・化学などの理系分野の知識をベースとして学ぶ学問です。そのため、理系分野の勉強が好きな人、特に数学や物理が好きな人に向いています。

好奇心が旺盛な人

宇宙は未知の領域であり、常に新しい発見や技術の開発が求められているため、特に数学や物理が好きな人におすすめです。また、航空宇宙分野の研究開発の最前線では、前例のないものを創造するため、発想力や探究心が欠かせません。そのため、好奇心が旺盛で、新しく挑戦することに積極的な人が向いています。また、純粋に「宇宙が好き」な人にもおすすめです。興味関心がある分野は勉強していてもワクワクでき、分からない部分があっても努力できるでしょう。

コミュニケーション能力が高い人

宇宙工学の開発や研究は、1人でできるものではありません。多くの人と関わり、チームを組んで研究を進めていくことが求められます。そのため、研究を円滑に進めるためのコミュニケーション能力が必要です。チームとして成果を出すことや、多くの人と協力して研究に取り組める人が向いています。

英語が好きな人

宇宙工学は国際的な分野であり、研究や開発の場面では世界中の専門家と議論したり情報共有したりすることもあるでしょう。英語で論文を書いたり、プレゼンテーションを行ったり、国際会議に参加したりする機会は少なくありません。そのため、英語が好きで、英語でコミュニケーションをとることに抵抗がない人が向いています。宇宙工学の研究や開発では、英語で書かれた文献や資料を参照する機会が少なくないため、話す聞く力だけでなく、読解力も必要です。宇宙工学の分野が自分に合っているかどうか不安な人は、オープンキャンパスで先輩に相談してみるとよいでしょう。また、進路についての不安は、「みんなの進路相談」からも気軽に相談できます。

宇宙工学を学ぶなら「理工学部」か「工学部」

宇宙工学を学ぶには、理工学部や工学部に進学するのが一般的です。それぞれの特徴は以下の通りです。

理工学部と工学部では、どちらも数学・物理・化学などの基礎知識を学べます。各校の学部・学科単位でも異なりますが、工学部は機械工学・電気工学・情報工学などの専門分野を重点的に学び、理工学部は自然科学・理学分野・工学分野を総合的に学ぶ学部です。宇宙工学を学ぶならどちらの学部でも学べますが、宇宙開発に携わりたいという希望がある場合は、理工学部の方がおすすめです。なぜなら、宇宙開発には、理学分野の研究と工学分野の技術の両方が欠かせないからです。また、宇宙機の設計や開発に興味があれば、機械工学や航空宇宙工学を学べる学部を選ぶとよいでしょう。 また、JAXAでは過去に「理科系の大学卒業」が採用の応募条件として挙げていました。現在の応募条件は一部変更となりましたが、国家公務員試験レベルの理系分野の試験が実施されるため、理系の知識は必要です。全国には、国公立大学から私立大学まで、航空・宇宙工学を学べる様々な大学がありますので、自分の興味関心を元に各学校について調べてみましょう。

大学名
国公立大学・東京大学_工学部_航空宇宙工学科
・京都大学_工学部_物理工学科_宇宙基礎工学コース
・東北大学_工学部_機械知能・航空工学科
私立大学・早稲田大学_基幹理工学部_機械科学・航空宇宙工学科
・工学院大学_先進工学部_機械理工学部_航空理工学専攻
・法政大学_理工学部_機械工学科_機械工学専修

進路ナビで、夢を叶える一歩を踏み出そう

宇宙工学は、宇宙空間の探査や開発に必要な技術や知識を学ぶ学問です。宇宙開発に携わりたいという夢や、宇宙に関する知識を深めたい意欲を持つ人にとって、魅力的な学問でしょう。しかし、どの学部を選べばいいのか迷っている人も多いと思います。進路ナビでは、全国の大学や専門学校の情報を掲載しています。宇宙工学を学べる学校を探すためには、まず進路ナビの学校検索機能を利用しましょう。学科やカリキュラムなどの条件で検索できるため、自分に合った学校を見つけられます。進路ナビでは、進路アドバイザーが無料で学校情報も提供しているため、宇宙工学を学びたい人は、ぜひ進路ナビをご活用ください。

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