AIの知識が活かせる就職先・職種は?AIについて学べる学校も紹介

現在、AI(人工知能)はさまざまな分野へ応用されており、人々の生活に欠かせない技術となってきています。多くの企業がAI開発に力を入れ、新しい商品やサービスを次々と生み出しているのです。AIが身近なものになってきている今、将来の進路を考えている高校生の中にはAIについて学びたいと考えている方も多いでしょう。しかし、AIの技術を身につけたいと考えているものの、どのような進路を選べばいいのか悩んでいる方もいるかもしれません。
この記事では、「AIについて学びたい」、「AIの技術を活かした仕事に就きたい」と考えている学生に対して、具体的な仕事の内容や進学先などについて紹介します。AIを学べる学校についても紹介しますので、進路を考える際の参考にしてください。

AIについて

AIはコンピューターサイエンス分野の一つで、人間の知能に関連した作業をコンピューターシステムにより学習・実行させる技術のことをいいます。しかし、AIとは具体的に何を指しているのかわかりづらいと感じている方もいるでしょう。そこで、ここではAIとは何か、種類や活用方法などを紹介します。

人工知能との違い

AIとは、Artificial Intelligence(人工知能)の略です。AIの概念は1950年代に数学者のアラン・チューリングの著書『計算する機械と人間』の中ではじめて提唱されました。その後、1956年に開催されたダートマス会議において「AI」という言葉がはじめて使われ、現在人工知能を示す言葉として定着しています。現在は第3次AIブームといわれ、AIの技術がさまざまな分野に応用されています。しかし、AIには明確な定義が存在していないのが実状です。例えば、総務省が公表している「情報通信白書」では、以下のように定義されています。
『あえていえば、「AI」とは、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念で理解されている。』
引用:AIに関する基本的な仕組み | 総務省

一方、厚生労働省が公表している「AIの定義と開発経緯」においては、「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」(一般社団法人 人工知能学会設立趣意書からの抜粋)としています。
引用:AIの定義と開発経緯 | 厚生労働省

また、文部科学省では、AIの中心技術は機械であるコンピューターが学ぶことができる技術のことと説明しています。このように、AIの定義は国の機関によってもさまざまで、明確に定まっていない状況です。AIの定義は明確になっていないものの、AIはすでに人間の知的活動において重要な役割を担っています。例えば、翻訳ツールや自動運転、医療画像診断などにも応用されてきました。更に、最近では生成AIの一種であるChatGPTが公開され、メディアやSNSを通じて話題になっています。実際に、AIの自動音声によるニュースを視聴したり、AIによるお問い合わせ対応を利用したりしたことがあるという方も多いでしょう。このように、AIはすでに人間の生活に欠かせないものとなっているのです。

AIの3つ種類

AIには主に、特化型人工知能(ANI)、汎用人工知能(AGI)、人工超知能(ASI)の3つの種類があります。ここで紹介するのは、処理できるレベルによって分けられた概念です。

種類概要
特化型人工知能(ANI)音声認識や自動運転など、特定の決められた課題を自動的に学習するシステム
汎用人工知能(AGI)人間の知能と同じように高いレベルの動作が可能で、複雑な課題を解決できるシステム
人工超知能(ASI)人間を超える知性を獲得したAIで、現在ではまだ開発に至っていない

3種類の中で、現在すでに活用されているAIは特化型人工知能(ANI)のみとなっています。汎用人工知能(AGI)は現在、企業や研究機関において研究が進められており、将来的に実現する可能性があるともいわれていますが、現時点では実現していません。人工超知能(ASI)は今のところSF映画だけに登場するAIです。AIは開発が進められているものの、人間のような知能を持つには長い年月がかかる可能性があります。しかし、それだけに将来性のある分野ともいえるでしょう。

AIの活用方法

特化型人工知能(ANI)は、すでにさまざまな分野で活用されています。AIの活用が期待されている分野の一つが医療です。医療分野では、がんの早期発見のために画像認識AIが活用されています。AIの活用により、精度の高い診断が可能になりました。また、農業分野での活用も行われています。例えば、AIが搭載された自動収穫ロボットは、農作物の収穫時期を画像認識技術によって判別することが可能です。カメラと距離センサーにより農作物の位置を特定し、ロボットによる収穫も可能になりました。人手不足が深刻な農業分野では、AIのさらなる活用が期待されています。その他に最も身近な例として、スマートフォンやタブレットなどに搭載されている音声アシスタントがあります。音声アシスタントは音声認識や自動言語理解、命令、返答の動作が可能です。これらの動作により、より円滑な人とのコミュニケーションが実現しました。音声アシスタントにはまだ課題もあるものの、アップデートされるたびに性能が向上しています。

AIについて学習する方法

一口にAIと言っても、AIを活用できる分野は幅広いため、何を学べばいいのかわからないという方も多いでしょう。目的によって学ぶべき内容も変わってくるため、まずはAIで何がしたいのか、AIを学ぶ目的を明確にしておくことが重要です。基本的な学習項目としては、数学、プログラミング、機械学習(深層学習)、統計学、AIプロジェクトの推進、AIを導入する業界の知識などがあげられます。数学は機械学習やディープラーニング(深層学習)に必要な計算をするための基礎となるものです。プログラミングを学ぶことも重要です。AI分野でよく使用されているプログラム言語の一つにPythonがあります。また、コンピューター言語の一種であるSQLも学んでおくといいでしょう。統計学はデータの読み取りや解析に必要な知識です。統計学を学ぶことで、AIが動作するパターンやルールを理解しやすくなります。
学習すべき項目が決まったら、次に学習計画を立てて実行していきましょう。AIを学ぶための基礎となる数学や機械学習プログラミングの学習は、書籍や動画などの教材も豊富にあるため、自分のペースで学習を進めることが可能です。
基礎的なスキルが身についたら、実際にプロダクト制作をしてみることがおすすめです。テキストや動画などを参考にしながらプログラムを書きプログラムが実際にどのように動作するのか試してみましょう。

AIを学ぶことで取得できる資格

資格を取得することで、AIに関連するスキルを証明できます。特に、日本AI業界を牽引する団体が運営する資格、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する資格を取得するのがおすすめです。

G検定

G検定はディープラーニングに関する基礎的な知識を事業に活かすためのスキルを証明できる資格です。取得するためには、機械学習やディープラーニングに関する知識のほか、AIに関連する法律や倫理などを学ぶ必要があります。

E資格

E資格はディープラーニングを理解し、AIエンジニアとして必要な知識やスキルをもっていることを認定する資格です。E資格を受験するためには、JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していることが条件となります。試験範囲は、応用数学、機械学習、深層学習、開発・運用環境の4項目です。JDLAが主催している資格以外にも、AIの知識に関連する資格として、データサイエンティスト検定(DS検定)、統計検定、Python検定、Professional Data Engineerなど、さまざまな資格があります。

AIの知識が活かせる就職先・業界 

AIの知識を身につけることで、IT業界だけではなくさまざまな業界に就職できるチャンスが広がります。一般企業で人間工学の知識を活かし、ものづくりや製造・開発などの仕事に就くことも可能です。また、研究機関で研究者になり、「人間工学専門家」として幅広く活躍する道もあります。
以下では、AIの知識が活かせる主な職種を紹介します。

プログラマー

プログラマーはAIを動作させるためにプログラムを構築する仕事です。プログラマーになるために特別な資格は必要ありませんが、プログラミングの知識やスキルは必須です。就職先としてはソフトウェア会社やシステム開発会社、メーカー、建築業、小売業、金融業などさまざまです。

アプリケーションエンジニア

アプリケーションエンジニアはITシステムにおけるアプリケーションのシステム設計からプログラミング、動作テストなどを主に担う職種です。要件定義・設計からプログラミング、システムの動作テストなどのシステム開発における一連の作業を行いますが、仕事の内容によって業務系、Web系、スマホ系の3つに大きく分かれます。

ネットワーク技術者

ネットワーク技術者(エンジニアとは)、コンピュータネットワークの設計、構築、運用、保守に関わる職種です。顧客からの要望を分析するところから始まり、運用後は保守点検、トラブル処理まで受け持つ場合も多く、広い範囲で業務に関わります。ネットワークエンジニア未経験の場合、運用や保守からキャリアをスタートし、徐々に設計や構築へと領域を広げていくのが一般的です。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、膨大なデータを分析し、データから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すためのサポートを行う職種です。データサイエンティストとして活躍するには、統計学や数学、ITのほか、マーケティングの知識も求められます。

ロボット工学者

ロボット工学者とは、電気工学やコンピューターサイエンス、自動制御機械や知能機械などさまざまな分野の知識を組み合わせて、ロボットの設計や開発を行う職種です。ロボット工学者は、ロボットメーカーだけでなく、ロボットを日常的に使う企業にも活躍の場があります。例えば、自動車メーカーの自動車製造ラインで使うロボットを開発しているエンジニアや、食品製造、航空宇宙、介護医療などの分野で働くエンジニアもいます。

AIと人間工学の関連性

AIと関連性のある学問として人間工学があげられます。人間工学とは、人の動作や特性を研究し、道具や機械が人間にとって安全で使いやすいものになるようにする科学技術のことです。人が働きやすいと感じる職場環境や生活しやすい環境を作るために、さまざまなものに応用されています。
例えば、人間工学に基づいて設計されたオフィスチェアは、長時間座っても疲れにくく、快適に作業ができることが特徴です。そのほか、高齢者や障害者なども使いやすいユニバーサルデザインを考える際にも活用されています。
人間工学の専門家として認められるには、資格の取得もおすすめです。認定人間工学専門資格制度は、人間工学を普及させるために2008年に始まった、人間工学に関する知識や技術、問題解決能力を保有していることを証明できる資格です。
参考:認定人間工学専門資格制度 | 一般社団法人日本人間工学会人間工学専門家認定機構

AI、人間工学が学べる学校を知りたい方は「進路ナビ」で検索してみてください。

AIが学べる専門学校一覧

人間工学が学べる大学・短期大学(短大)一覧

AIを学べる学校

AIに関連した職種に就くためには、AIに関わる幅広い知識を身につける必要があるため、専門知識が学べる学部や専門学校へ進学するのが一般的です。大学に進学する場合は、理学部や工学部の情報系学科が選択肢になるでしょう。近年では、データサイエンス学部で最新のテクノロジーを学べる大学も増えています。大学では専門科目だけでなく幅広い知識を身につけられるため就職にも有利です。そのため、就職先の選択肢を広げたい場合は、大学への進学を選ぶことをおすすめします。
以下では、AIについて学べる主な大学を紹介します。

  • 東京工業大学 情報理工学院 情報工学系
    東京工業大学の情報工学系分野では、ソフトウェアやハードウエア、マルチメディア、人工知能など幅広い専門知識を体系化した理論から学べることが特徴です。コンピューターに関する技術を深く理解し、モデリングやソフトウェア開発、インターフェイス技術、生命情報の解析など最先端の技術を身につけた人材の育成に力を入れています。人間社会をより豊かにすることを目指し、現代社会に欠かせない存在となっている情報工学を網羅的に学べる大学です。
  • 立命館大学 情報理工学部 情報理工学科
    立命館大学情報理工学部は、情報通信技術(ICT)に関する分野を網羅的に学べる学部として、国内外から注目を集めています。2017年にはより専門性の高い知識を習得するため、情報理工学科にシステムアーキテクトコースやセキュリティ・ネットワークコース、知能情報コースなど7つのコースが設置されました。その中の一つ、知能情報コースでは自然現象や社会現象を計測することで得られたデータをもとに、データ解析や数理モデル、シミュレーションなどを行う知識・技術を身につけられます。人工知能、生体情報処理、ロボティクスなどの知識を活かし、データサイエンティストやエンジニアなどの職種を目指せます。

まとめ

AIに関する知識や技術は、年々需要が高まっており、将来性のある分野といえます。音声認識や画像認識、言語処理などは、すでに身近なところでも活用されている技術です。また、農業や医療、介護などの分野でもAIの活用が進められています。AIや人間工学を学ぶことで将来、アプリケーションエンジニアやネットワーク技術者、ロボット工学者など、AIや人間工学の技術を活用した職種に就ける可能性があります。IT業界だけでなく、メーカーや小売、金融など幅広い企業でも活躍できるでしょう。大学や専門学校への進学を希望する場合は、AIや人間工学に関する知識やスキルを身につけられる学校を選ぶのもおすすめです。特に、工学部やデータサイエンス学部などの情報系の学科では最先端のAI技術が学べ、就職にも有利になるでしょう。
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