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新型コロナウィルスと学生支援(2) 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

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2月末にコロナウィルスによる感染症が拡大してから3か月以上経ち、
アルバイトの急減などによって、
多くの学生が経済的に苦境に立たされている。
これに対して、一律の授業料減免や給付型奨学金など、
複数の学生団体から支援の要請が出されている。
このような学生の状況に対して、
政府は第1次補正予算では家計が急変した家庭の学生への
7億円の授業料減免に対する支援策を打ち出した。
しかし、総額で約26.7兆円といわれる補正予算に対して、
あまりにも少額である。

そもそも今年度から始まる新しい学生支援制度は、
総額7,600億円とされてきた。
しかし、令和2年度予算では、
約5,300億円が計上された。
従来の授業料減免制度が新制度移行に伴い、
在学中の学生への授業料減免が
年収380万円以上の学生が除外される問題については、
国立大学のみ53億円が計上されたが、
私立大学などには予算措置はない。
7,600億円と比べて約2,300億円の差があることに比べても
7億円はあまりに少ない。

5月18日に政府は、
約530億円の追加の学生支援策を閣議決定した。
これはアルバイトが減少した、
住民税非課税世帯の学生に20万円、
その他の世帯に10万円を給付するものだが、
学生団体などは対象者が限定される上に少額過ぎると批判している。
なお、これまで公的支援の対象になかった
日本語学校の学生が初めて支給対象となった。
しかし、留学生のみ成績要件を課すことには疑問がある。

財源に限りがある以上、
給付型支援だけでなく、
授業料後払い制度などの新しい制度の検討をすることも必要だ。
授業料後払い制度は、
延納を卒業後まで長期にわたるものにする制度だといえるからだ。
コロナ禍といわれる災厄だが、
これを契機に新しい制度の導入が検討されることを期待する。

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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