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いわゆる高等教育の無償化(続10) 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

これまで、いわゆる「高等教育の無償化」の新制度について、
様々な問題点を検討してきた。
それらの多くが未解決のまま、
4月からはいよいよ新制度がスタートする。

高校や高等教育機関は、
新制度に対応するために様々な作業に忙殺されている。
それでなくても、高大接続改革(入試制度のあり方)や
新型コロナウィルス問題による休校など、
案件が山積している。

これらは、まったく違う問題だが、共通する点も見えてきた。
それは、想定すべき問題や
これまでの制度との整合性などの制度設計をよく検討しないままに、
先に制度の実施を決定する、
という現内閣の政策決定過程のあり方だ。
これまでは、結果オーライだったこともあるが、
最近では、この決定過程の問題点が目立ってきた。

いわゆる「無償化」問題は、その先駆けだったと思えてならない。
特に、閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で、
実務経験による教員による授業科目1割以上など、
具体的な数値が書き込まれ、
その後の具体的な制度設計では変更できなくなり、
制度設計の柔軟性を大きく損ねた。
それだけに、前回指摘したように、
4年後の見直しという問題への対処で、
政府の政策遂行能力が問われていると言える。
今後の推移を注意深く見ていく必要がある。

▼前号はこちら
https://shinronavi.com/news/detail/891/

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

【プロフィール】
東京大学名誉教授、桜美林大学教授。
主な研究テーマは「高等教育論」「教育費負担」「学生支援」「学費」。
奨学金問題の第一人者として知られ、『大学進学の機会』(東京大学出版会)『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など著書多数。

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