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不合格体験記2020 筆者:橋本 光央

以前も同じタイトルで書いていますが、
今回は、「2020年版」として違う内容を紹介します。
私が予備校で働いていたとき、
生徒たちに「現役合格ができなかった理由」を
書いてもらったことがあります。
不合格になったことから学ぶことも多いと思ったからです。
今回は、その体験記を紹介させていただきます。
                    
『自分の部屋は、小型テーマパーク』
ぼくが大学受験に失敗したのには、
いくつか理由があります。
第1に、自分の志望校が
最後まではっきりとしていなかったことです。
だから、全国模試で志望校を記入するときは、
毎回その時の気分で適当に書いていました。
そのため、「目標達成のためにがんばる」という気迫が生まれず、
結果、成績は 
y = -x + 10 (x軸:時間,y軸:成績)
のグラフと同じ下がり方でした。
つまり、
自分の行きたい大学がないから、
本気で勉強に取り組むきっかけがつかめなかったということです。

第2に、いつも友達とつるんで行動していたことです。
ぼくは、いつも4~5人の友達と一緒にいました。
誰かが売店に行くと言えば、
みんなでついて行ってはだべって過ごすのです。
いつも、ぞろぞろ、ぞろぞろ。
でも、それは単なる時間潰しにしか過ぎませんでした。
ほかにも、
仲間うちで成績の悪さを慰めあっては、
「みんな、こんなもんや」と自分自身を甘やかしたり。
高3なのに「受験」という緊迫感なんてなく、
なんとなくふわふわとした毎日を送っていたように思います。

第3に、学校の授業を軽んじていたことです。
高校時代には、
授業中に隠れてこそこそ問題集をやっていました。
なぜなら、
「授業を聞くよりも、有名な問題集を解くほうが受験に役立つ」
という間違った思い込みをしていたからです。
しかし、
「授業すら分からない」=「基礎もできていない」のに、
難しい問題集をやったところで、
全く記憶には残りません。
つまり、
「オレハ ガンバッテ イルンダ」という
自己満足のためだけに、
無駄な時間を使っていたわけです。

そして、最も悪かったのが、
自分の部屋の環境でした。
テレビ、ビデオ、プレステ、CD、マンガ、
敷きっぱなしの布団etc。
どう考えても勉強する環境ではありません。
むしろ、「遊びのための小型テーマパーク」でした。
だから、いつもぼくの横にあるのはゲーム機のコントローラー。
よく、『箸より重い物を持ったことがない』と言われますが、
それまで苦労知らずだったぼくは、
家ではシャーペン1本持ったことがありません。
I can't give what I haven't got.
(ない袖は振れぬ)どころか、
鉛筆1本さえ持たぬぼくが、
大学受験に成功するはずもありません。

そんなこんなで、
当然のように受験に失敗しました。
ところが、不合格通知を手にしても悔しさが湧いてくることもなく、
逆に自分自身にあきれてしまいました。
なぜかって?
それは、中学時代はこうじゃなかったからです。
朝イチ登校で早朝勉強をしたり、
昼休みには友人と問題を出しあったり……。
中学時代の方が、
よほど真剣に勉強していました。
つまり「高校時代の自分は、中学生以下だ」と証明したようなものです。
そんなぼくですが、
今年こそは「高校生以上」つまり
「志望大学合格」を目指して頑張ります。

私が予備校で働いていたのは、
通信手段が「ポケベル」から「ケータイ」に代わるくらいの時期。
だから、この「不合格体験記」を書いてもらったとき、
「スマホ」なんて影も形もありませんでした。
ところが、今ではスマホを手放せない生徒が増えているようです。
それは、「自分の部屋」 どころか、
「24時間、小型テーマパークで過ごしている」ようなもの。
だから受験に臨む皆さん、
来年になって、「手の中には、いつも小型テーマパーク」という
「不合格体験記」を書くことがないよう、頑張ってください。
彼は、見事、国立大学に入学できました。

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫(https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/)にて作品を無料公開中。

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