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卒業のときに(羽根田ひとみ 最終回コラム) 筆者:羽根田 ひとみ

新型コロナウイルスの影響で、
多くの大学で卒業式が中止になった。
着物と袴を自分で着るんだと張り切っていた長女は、
残念がっていたが仕方がない。
下の子の高校卒業式は、在校生不在で実施された。

9年前のあのときもそうだった。
東日本大震災、原発事故の影響で、
卒業式は異例ずくめだった。
当時私は小学校のPTA会長で、
卒業式の祝辞を贈ることができなかった。
そこで、卒業児童の一軒一軒を訪ね、
お祝いの花とメッセージカードを届けた。
中には既に県外に避難されていて
直接渡せないときは、
おじいちゃんやおばあちゃんに預けたり、
ポストに投函したりした。

内容は詳しく覚えていないが、
「ペンは剣よりも強し」の一文を全員に入れた。
放射能の不安と恐怖で、
子どもたちを家から一歩も出せず、
私自身、県外への避難も考えたほどだ。
東からの風と雨が怖かった。
福島ナンバーということで、他県で受けた悲しい出来事もあった。
だからこそ、
未来を担う子たちに、
このことから何かを学んで欲しいと
心から願ったのである。

時が過ぎ、あのときの子たちから、
「こんにちは」とあいさつをされることがある。
元気な姿にほっとし、笑顔が嬉しい。
いつもとは違ったけれど、
メッセージを伝えることができて良かったと思う。

さて、私の連載も今回で卒業になります。
6年間続けてきたことに、最近気づきました。
書く機会を与えていただいたことで、
日々の暮らしがとても新鮮で充実しました。

読んでいただいた方々から、
「うちでも交換日記やってみます」
「(執筆内容の)あいさつ、返事のことを学年通信に載せました」
「ぜひうちの学校に来てください
(実際に、熊本まで呼んでいただきました)」
など、たくさんの感想や励ましをいただきました。
本当にありがとうございました。
皆さまのおかげで、
小学校の宿題で作文を書くのが大の苦手だった私でしたが、
なんとか続けることができました。

最後に、学校の先生から生徒に
伝えていただきたいことがあります。
書き方は直してもらえたとしても、経験するのは自分です。
ぜひ生徒に伝えてください。
思い、願い、考えをどこかに書き綴っておいて欲しいものです。
未来の自分が見返して、参考にすることもあるかもしれません。
どこかで書き綴ってよかったと思えるときが来るはずです。

またどこかでお目にかかりましょう!

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