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求人票が改訂されたが 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与)

1月、年度途中にもかかわらず高卒用求人票の改訂があった。
前回の「改訂」で青少年雇用情報が加わり3ページになったものを、
2ページにして扱いやすくしたようだ。
高校現場でも3ページ立ては扱いにくく、
改善を求める声も多かったので、
2ページになったこと自体は歓迎すべきことである。
一方、残念なのは、今回の改訂に、
高校現場の声が届いていないのではないかと疑われる変更が
多々見られることだ。
ページ数が減ったのだから、
項目そのものや記載文字数の減少が避けられないことは
十分承知している。
しかし従来、生徒や教員がよく利用していた重要な項目が、
改訂版から消えたり、見にくくなったりしている。

例えば職種欄はあるが、
「職種」と明示されていない。
求人公開の可否は欄外で文字も小さく見にくい。
雇用情報内に、近年の採用者数と離職数はあるが、
応募状況はなくなった。
控除額欄がなくなったため、
住み込みの寮費・食費控除等も明示されなくなり、
トラブルにつながりかねない。

中でも現役高校教員が最も問題視していることは、
所得税と社会保険料の欄も消え、
同時に手取り金額欄がなくなったことだ。
百歩譲って手取り金額欄がなくても、
所得税と社会保険料が残っていれば、
生徒自身に計算させることもできるがそれもできない。

社会人直前の高校生に対し、
教員は求人票を通して納税の義務や
社会保険料の納付について指導し、
生徒も自分自身にかかわる問題として
授業とは違った観点で社会人としての責任を学んでいた。
役所の立場では実際に賃金が支払われ、
税率や負担率が確定しなければ
正確な控除額は確定できないから、
不正確な数字の掲載は好ましくないとでも言うのだろう。

しかし、所得税と社会保険料の納付義務を感じ、
手取額概算を知ることが社会人生活の設計を考える
きっかけになっていたにもかかわらず、
それを奪われるほうがもっと好ましくない。
学校での租税教育に協力してくださる国税庁や税理士会、
同様に社会保険教育に協力してくださる
社会保険庁や社労士会の皆様は、
このような求人票の変更をご存じなのだろうか。

(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)

【プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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