数学って面白い 筆者:橋本 光央 更新日: 2020年7月29日
高校時代、ユニークな授業を行う先生がいました。
数学演習の先生だったのですが、
はじめに3人の生徒を指名し、
黒板で問題をやらせるだけ。
生徒が解答し終えると、それに対して解説をする。
そんな授業でした。
でも、時間が経っても、誰もできないことがありました。
そんなときには、模範解答をしようとするのですが、
「先生、今考えているから、もう少し待ってください」
と言って譲らない生徒が多かったように思います。
問題が解けないのは悔しいことだからでしょうか。
それに、何よりも、できたときに、
「あっ」と思う快感がたまらなかったのだと思います。
ところが、今では問題を見たとたん
「先生、解き方を教えてください」
と言う生徒が多くなったように思います。
考えもせずに解き方を覚えるとは、
面白くないと思うのですが。
数学は暗記科目ではないのです。
考えているだけでわくわくし、
できたときに快感を覚える。
それが、数学の面白さなのです。
そして、それは数学が苦手な生徒でも同じこと。
自分の実力より少し難しい問題にチャレンジし、
それができたときの快感と言ったら、もう最高です。
あっ、そうか……。
あの先生は、問題の難易度によって、
生徒を選んでいたのだと思います。
なるほど、その人選が授業の「キモ」だったのです。
今となって気づきました。
よく生徒を見ている、すごい先生だったのです。
数学というのは、答えが大切なのではないのです。
夢中で考えているときのわくわく感、
できたときの快感が大切なのです。
ところが、今では解法を覚えるだけ。
難易度の高いゲームを攻略するのと同じように、
本当は数学はとても面白いのに……。
生徒たちの数学離れがとても心配な今日この頃です。
(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)
【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木・天野大空のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品掲載あり。
web光文社文庫(https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/)にて作品を無料公開中。