バイト君は見ている 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与) 更新日: 2019年9月4日
国立青少年教育振興機構が、
平成28年度に行った調査*には、
アルバイト経験がある高校2年生は28.5%とあります。
ここで高校生の進路と家庭の経済状態に関して
述べるつもりはありませんが、
進路多様校に勤務していた私としては意外に少なく思えました。
私が就職指導をした生徒達は、
8割方がアルバイトをしていました。
さて、そのバイト君達の大部分は、
スーパー等の販売職かファミレス等のサービス職でした。
ところが、
彼らはアルバイトをしていた業種、職種への就職を
希望することはめったにありませんでした。
話を聞いてみると、
「自分の仕事は楽しいし、やりがいもあるが、
社員や店長の働きぶりを見ていると
とても自分にはできそうもない」
と言うのです。
「責任ある仕事にはあこがれもあるが、
急な早出、残業やシフトの変更、
上司の厳しすぎる指導、叱責などを見てしまうと、
アルバイトはよいが正社員にはためらいがある」
と続けます。
また、正社員よりアルバイトのほうが多い職場の経験者は、
「この仕事はアルバイトがするもので、正社員の仕事ではない」
とまで言うこともあります。
一方で「アルバイトしていた会社に就職したい」
と言う生徒もときどき現れます。
彼らの理由は簡単です。
「アルバイトで楽しく働けたことはもちろん、
社員が生き生きと仕事に誇りを持って取り組んでいるから
自分も正社員になりたい」
と嬉しそうに語るのです。
「社員もバイトも仲良く働いているから」
と話す生徒もいました。
バイト仲間や同級生同士の情報で、
評判の良い同業他社を希望したケースもありました。
アルバイト従業員を貴重な労働力として、
使い捨てにせず、大切にすることは重要なことです。
しかし、バイト君達は正社員の働き方も見ています。
*2019年2月国立青少年教育振興機構実施
「青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)」より
(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)
【筆者プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。