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もう立派な戦力です……か? 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与)

企業向けに、高卒採用セミナーの講師をさせていただく際、
学校訪問のポイントをお話しすることがある。
訪問先の学校から採用した社員の近況を報告することの大切さは、
必ず触れることにしている。
卒業生が社会人として立派に働いている様子を聞くことは、
教員にとって嬉しいだけでなく、
重要な情報となるからである。

資格取得や昇進、結婚の話から、
時として産休後に復職して子育てと仕事を両立している話まで聞くことがある。
「就職指導をしていて良かった」と思う瞬間でもある。
それと同時に、
就職先の企業の社員育成や子育て支援などの様子も
うかがい知ることができ、これが生徒への貴重な企業情報となる。

しかし、このような話題の中で一つだけ気にかかることがある。
6~7月頃に聞く、
「この4月に入社して頂いた〇〇君はもう現場で頑張っていて、
貴重な戦力になっています」という話である。
私がひねくれ者だからだろうか、
入社2~3年ならまだしも、
高卒後2~3か月で「戦力」という状態になれるのだろうか、
と思ってしまうのである。
出身校に対する「社交辞令」なら良いのだが、
本当にそうなら心配である。
経験もないのに仕事を任されて荷が重くはないだろうか、
高卒新人でも一人前にできてしまう程度の職種なのだろうか
等々心配の種は尽きない。

その中で忘れられないのは、
数年前に聞いたこんな話である。
「〇〇君も6月までの試用期間を無事に終えて、
7月から本採用になりました。
本採用は夜勤が入るので、
慣れるまでは夜間勤務の安全管理と体調管理について、
周囲で充分に配慮しています。
本人も頑張っていますが、
新人は苦労も多いので我々採用担当も含めてサポートします」
この会社はもともと信頼できる会社ではあったが、
私の中でその信頼度はさらに増したことは言うまでもない。
高校の教員が聞きたい新人情報は
「活躍しています。戦力になっています」より
「成長しています。育てています」である。

(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局参与 小林英明)

【筆者プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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