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学校と企業と禁煙と 筆者:小林 英明(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局次長)

来年4月の健康増進法の全面施行まで1年を切ったことで、
さまざまな企業が社員の禁煙に取り組んでいるという話題が
マスメディアに登場している。
いわば企業内での「禁煙教育」であろうか。

高校教員をしていた頃の苦労を思い出す。
学校の指導は、
生徒が喫煙しないようにという予防の面と、
すでに喫煙習慣を持っている生徒に対する喫煙を止めさせる、
まさに「禁煙」の面の二本立てであった。
未成年である高校生の喫煙は違法行為であり、
「非行」の一つであるから発覚すれば厳しい指導がある。
したがって健康維持と非行防止の観点から、
「禁煙指導行事」がかつてはどこの高校にもあった。

しかし、現在の高校では、
保健体育の授業で喫煙の弊害について指導はしているが、
生活指導面ではどうしても「薬物濫用防止」や
「いじめ防止」のほうに力が入ってしまう。
今の時代、喫煙習慣のある高校生が一時期に比べて
非常に少なくなっており、
一方では「いじめ」や「薬物」が
大きな社会問題となっているからである。
不良高校生といえば、
「学ラン」で煙草をくわえた姿で象徴された時代もあったが、
今時そんな高校生は皆無である。
喫煙で指導を受ける高校生も非常に減少している。

しかし20歳代男性の喫煙率は、
2018年で約23%とのことである(JT全国喫煙者率調査)。
つまり、昔とは異なり高校卒業後に喫煙習慣ができているようだ。
高校も在学中に喫煙しなければよしとするのではなく、
成人後も喫煙しないように指導しておく必要があるのではないだろうか。
喫煙習慣のない高校生が社員の禁煙に取り組む企業に就職すれば、
喫煙するようにはならないであろう。
いわば禁煙の「高企連携」である。
そしてこの分野でも「高大接続」が進展すれば、
受動喫煙のない社会は大きく近づいてくるのではないだろうか。

(元都立高校進路指導主任・多摩地区高等学校進路指導協議会事務局次長 小林英明)

【筆者プロフィール】
1976年より都立高校教員。
2004年より都立拝島高校勤務、
2010年より進路指導主任として主に就職指導に当たる。
2019年3月定年退職。

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