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コロンブスの卵 筆者:橋本 光央

「卵は立つ」なんてことを言うと、
少し物知りな人なら「ははぁ~ん」と思うことでしょう。
そうです、
「誰かこの卵を机に立ててみてください、
と言ったコロンブスは、
誰もができなかった後で、
軽く卵の先を割って机に立てた」
という「コロンブスの卵」の逸話を思い出すからです。

でも、生卵って、殻を割らなくても立ちます。
嘘だと思ったら、一度試してみてください。
5分くらい手で支えていると、
ほぼ100%卵は立ちます。
というのも生卵を立てていると、
黄身が沈んで重心が低くなり、バランスが良くなって、
独り立ちするようになるからです。
ところが、
変に「コロンブスは卵を割って立てた」という知識があると、
「ははぁ~ん」と思って、やってみないものなのです。
知識(「先入観」あるいは「間違った思い込み」)は、
実はすごく怖いのです。

ところで、例えばコロンブスのような偉人の言うことなら、
疑いなく信じてしまいがちです。
でも、それがコロンブスではなく、ネット情報だったら? 
多くの人が同じようなコメントをしていたり、
偉そうな人がまことしやかなコメントをしていると、
きっと信じ込んでしまうのではないでしょうか。
ですが、もしその情報が(故意であるかどうかは別として)
正しいものでなかったら……。
間違った情報を基に、多くの人が間違った行動をしてしまうかも。

現代社会には多くの情報があふれています。
でも、情報過多の時代だからこそ、
情報を見極める正しい知識がなければなりません。
そのためにも、
物事を判断する力を身につける教育が必要になってくるわけです。
特に、コロンブスの言葉を信じて
「卵は立たない」と思っていた人ほど、注意してください。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』
『ショートショートの宝箱2(2019.4.11発行)』に作品掲載あり。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/

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