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小林秀雄はご存知でしょうか 筆者:橋本 光央

小林秀雄はご存知でしょうか。
入試問題にも頻出の、とにかくすごい評論家です。
でも、彼が引用する文章は、
原文そのままではないことが多いのはご存知でしょうか。
というのも彼、あまりに頭が良すぎて、
一度読んだ文章全てを覚えていたそうです。
そのため、引用するときにも
原文を確かめることなく、記憶を頼りに書いていたそうなんです。
だから引用文が完璧ではなかったのですが、
逆に「正確ではないからすごい」 と評価されているのです。

コンピュータの進歩が著しい現在、
新しい教育で培おうとしているのは、
「検索する能力」です。
覚えるのではなく、
「必要なことを調べる能力」が
求められているんだそうです。
なぜなら、「記憶」に関しては、
人間よりコンピュータのほうが優れているから。
だから、「記憶という無駄な努力はせず、
考えることに脳を使うべき」だそうです。

でも、小林秀雄がすごいのは、
知識が単にメモリーとして記録されているのではなく、
血となり肉となって自分の体に入り込んでいるからなのです。
だから、引用文献を単にコピーして提示しているだけではなく、
自分のものとした上で記しているところがすごいのです。

確かに記憶ということに関しては、
コンピュータが勝っています。
でも、だからといって
「データを検索する能力が高ければ、
記憶する必要はない」というものではありません。
結局のところ、
「血となり肉となる理解」が大切なのではないでしょうか。
そのために必要なのは、やはり記憶です。
そして、それを理解し、
自分のものにすることなのです。
しかも「新しい教育」では、それに加えて、
自分の考えを生み出すことまでを求めているのです。

そして、今日の結論。
「これからの時代、誰もがみな小林秀雄レベルにならなければ」
ということです。
学生・生徒の皆さん、とにかく頑張ってください。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』
『ショートショートの宝箱2(2019.4.11発行)』に作品掲載あり。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/

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