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「いわゆる『高等教育の無償化』について」 著者:小林雅之(桜美林大学総合研究機構 教授)

いわゆる「高等教育の無償化」法が成立し、
2020年度から消費税の10%への値上げ分を財源として実施される。
2020年度から実施といっても、予約型制度なので、
現在の高校3年生(と卒業後2年以内の生徒)は対象になる。

この無償化は、授業料減免と給付型奨学金の組み合わせからなる。
給付型奨学金は2017年度にようやく創設されたが、
その規模は約220億円。
これに対して、今回の「無償化」法では約7,600億円で、
支給金額も対象者も大幅に拡大している点はおおいに評価できる。
授業料減免と給付型奨学金を合わせると、
最高で年額約160万円となる。
しかし、対象者は年収約380万円以下に限定されることで、
中間所得層には恩恵はない。

また、すべての高等教育機関の在学者が受給対象となるのではなく、
実務経験のある教員による授業や財務状況など、
支給対象になる高等教育機関には様々な条件がある。
これを満たさないと生徒に受給資格があっても
実際には受給できない点には十分注意する必要がある。
対象校は8月末までに公表される予定となっている。
つまり、無償化といってもきわめて限定的なものに過ぎない。
また、財源である消費税が10月に引き上げられるのかも、
雲行きが怪しくなってきた。
高校には、こうした点を生徒や保護者に十分説明することが求められる。

(桜美林大学総合研究機構 教授 小林雅之)

奨学金制度に精通する小林雅之教授のコラムが始まりました。
桜美林大学(元 東京大学 大学総合教育研究センター)教授で、『進学格差―深刻化する教育費負担』(筑摩書房)など多数の著書があります。

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