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士農工商 筆者:橋本 光央

少し前までは学校で教えられていた士農工商。
ところが、歴史の研究が進んだ結果、
「江戸時代に、そういう身分制度は存在しなかった」とされ、
教科書から抹消されてしまいました。
でも、「士農工商が本当に意味していること」はご存知でしょうか。

旧五千円札にも描かれた新渡戸稲造は、
その著書『武士道』の中で、
士農工商について次のように書いています。
「武士は……。しかしながら帳場と算盤は嫌悪せられた。
吾人(ごじん:わたしたちの意)は
この社会的取極めの智慧を知っている。
モンテスキューは、
貴族を商業より遠ざくることは、
権力者の手への富の集中を予防するものとして、
賞賛すべき社会政策たることを明らかにした。
……ローマ帝国滅亡の一原因は、
貴族の商業に従事するを許し、
その結果として少数元老の家族による
富と権力の独占が生じたことにあると論じ……
我が国の商人も彼らの間に道徳の掟を有したのであり……」

つまり、士農工商は身分の上下を表しているのではなく、
「国を守るべき武士の志を貶めることがない」ように、
「お金より人間としての生き方」を大切にしてきたことの証だったのです。
どうです、日本はとても素晴らしい国だと思いませんか。

最近、学校では士農工商について教えなくなったのですが……。
もし、国民の意識が総じて守銭奴になり下がってしまったら、
日本という国はなくなってしまうかもしれません。
少なくとも、日本国としてのアイデンティティは。
今だからこそ、改めて「士農工商」が意味している
「人間としての生き方の大切さ」を教えていきたいと思います。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』
『ショートショートの宝箱2(2019.4.11発行)』に作品掲載あり。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/

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