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窮寇追うなかれ 筆者:橋本 光央

最近では、生徒を指導するときに
「上から目線はだめ」などと言われます。
でも、それはちょっと違うのではないでしょうか。
というのも、間違いなく先生の方が立場は上なのだから。
それなのに、なぜ「上から目線はだめ」と
言われるようになったのでしょうか。
それは、「叱り方が“しつこい”から」ではないでしょうか。

『窮寇追うなかれ』という諺があります。
これは『窮鼠猫を噛む』と同じ意味なのですが、
教える側の人間としては、
前者のほうが実感を伴っているのではないでしょうか。

ところで、悪いことをした生徒には
腹が立つものです。
あまりに腹が立つと感情的になり、
つい昔の失敗まで持ち出してきて
「あの時はこうだったから……」と、
しつこく叱り続けたりしてしまいがちです。
でも、叱られているほうはたまりません。

(それが正しいかどうかは置いておくとして)
相手にもそれなりの言い分があるだろうに、
完膚なきまでに叱られてしまうと、気分のいいはずがありません。
逆に、プライドを傷つけられた生徒から、
恨みを買ってしまうだけです。
「ご指導いただき、ありがとうございました。
心を入れ替えて頑張ります」なんてことにはなりません。

だから、とことんまで責めてはだめなのです。
最後の「逃げ道」を残しておいてあげることが大切です。
自分が悪いことをしたのは分かっているのだから、
必要以上には叱らず、
その後どうすべきかを本人に考えさせることが大切なのです。
それが教育だと私は考えます。

指導という名の正義の下で、
ついとことんまで責めてしまう。
それが「上から目線」ということになるのではないでしょうか。
でも……、もし、そんな指導を続けている先生がいれば、
間違いなく“窮鼠に噛まれて”しまいますよ。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

【プロフィール】
1989年より大阪北予備校に勤務、
2007年より大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』
『ショートショートの宝箱2(2019.4.11発行)』に作品掲載あり。
https://yomeba-web.jp/special/ss-cam/

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