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「あれか、これか」 筆者:橋本 光央

国民栄誉賞にも輝いた将棋の羽生善治永世七冠は、
こんなことを言っておられます。
「ちょっと前までは、社会というのは、
本音と建て前、ダブルスタンダードでやってきた。
法律やルールがあっても、まあこれぐらいはね、
という個人が介在できる余地があった」、と。
確かに、「正論は正しい」に間違いはありません。
ただ、「正論は正しい」のですが、
正論を押し通すことによって失敗してしまうこともあります。
だから、ちょっと前までは、
「まぁこれぐらいはね」という中庸な状態が快適さを生んでいたのでしょう。

ところが、劇場型政治が持てはやされ、
話をワンフレーズで言い切ってしまうことが時代の趨勢となった頃から、
世の中は中庸を許さなくなってきました。
本当は「なぜ、そうなるのか」という部分が大切なのに、
「あれか、これか」の結論だけを求めるようになってしまったのです。

日本語は、「最初に理由を述べた後で、
最後に結論を述べる」言語体系となっています。
だから、最後まで話を聴かなければならないし、
日本人なら誰もがきちんと話を聴く習慣を身につけていました。
相手の話を聴いた上で、
「本音と建て前の間に、まぁこれぐらいはね」という
判断をしていたのです。
その判断力を身につけた人が大人であり、
大人の判断力は互いに心地よい人間関係を作り出していました。

なのに、今は、
「あれか、これか」の二極化現象。
でも、「あれか、これか」を言い換えると、
「これ以外は全部ダメ」となり、自分の考え以外を一切認めず、
相手を全否定することになってしまいます。
やはり、日本人なら相手を熟慮する心を持ち続けたいものです。
そのためにも、学校では単に答えを教えるだけではない、
「なぜ」を大切にした教育をしていきたいものです。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

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