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「(受験生の皆さんへ)受験校を決めるときに」 筆者:橋本 光央

受験生の皆さん、あなたは自分の進学先を選ぶとき、
どのようにして決定しますか?
学校の先生からは「君の実力なら、この学校が安全だ」、
塾の先生からは「もう少し頑張れば、あの学校に手が届くよ」、
お母さんからは「私の母校はいい学校だったわ」、
お父さんからは「このレベル以上の学校でないと、社会で通用しないぞ」なんて、
いろいろなことを言われるかもしれません。

でも、誰かに言われたから「その学校を選んだ」という人は
注意してください。
なぜなら、少しでも嫌なことがあれば、
その学校が嫌いになってしまうから。
というのも、一つでも気にいらないことがあれば、
「あの人に勧められて入学したのに、悪い学校だった」と、
全てを他人のせいにして、
学校を好きになろうとしないものです。

逆に、「学食が美味しかった」「先輩が優しく接してくれた」等
どんな些細なことでもかまいません。
「こんなことをやりたいから、この学校に決めた」なんて
崇高な志じゃなくてもいいんです。
何かをきっかけとして、自分の意志で
「その学校に行くんだ」と決めた人は幸せです。
なぜなら、その学校が好きになるのだから。
自分で選んだ学校です。
少しくらい嫌なことがあったって、
それ以上に良いところがあるに決まっているじゃないですか。

最近の子供たちは、考える訓練をしていません。
学校では、
教えられたことをテストで再現できる生徒がほめられます。
そして入試では、習ったことを正確に再現できた人が合格します。
勉強には必ず「正解」があるので、
学校では「それを再現する能力」が重要視されるんです。
だから、
「自分の頭で考え、自分なりの答を導き出す訓練」ができていない、
つまり「判断する力」が培われていないんです。

教えられたことを、教えられたとおりに再現する子供たち。
こんな子供たちが社会人になると、どうなるでしょう。
決められたことしかできない「マニュアル人間」や、
上司から言われたことしかできない
「指示待ち族」になってしまうのではないでしょうか。
ところで、指示待ち族って楽ですよね。
だって、ミスをしたって、それは「指示をした人が悪い」のであって、
自分は悪くないから。
でも、自分の判断で行動した結果ミスを犯してしまったら、
悪いのは自分自身になります。
つまり、判断には責任が伴うということです。
だけど本当は、「自分で考え、判断し、行動する」ことから、
「個性」が生まれるんだけどね。

学校には「正解」があるけれど、
社会には「正解」なんてありません。
だから、いろいろな考えや意見がある中から
「最善を見つけ出す判断力」が必要になってきます。
言い換えると「判断力を身につけることが大人になる」ってことなんです。
なのに、これからの日本を支える社会人が、
子供の頃から判断力を培われていない「指示待ち族」ばかりになってしまったら……
歴史を振り返ってみてください。
判断力を失った国民が大きな力に導かれたとき、どうなってしまったかを。

受験生の皆さん、今がチャンスです。
あなた自身の判断で、あなたに最善の受験校を決めてください。
だって、それが「あなたが大人になるための第一歩」となるのですから。

(大阪国際滝井高等学校 総務部 橋本光央)

【筆者プロフィール】
1989年より、大阪北予備校に勤務。
2007年より、大阪国際滝井高校に勤務。
橋本喬木のペンネームにてショートショートを執筆。
光文社文庫『ショートショートの宝箱』等に作品掲載あり。

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